表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
三角定規  作者: 江角 稚
9/26

「俺」達のクラスで席替えの話

半月振りの三角定規...




ですが、今回は長めです★

「暑い、溶けるぅ……」

そんなことを言いながら、俺は手の甲で汗を拭った。


俺達の追いかけっこもどきは結局、校門まで続いた。

奴は自転車置き場に向かい、俺は直接教室まで歩いて来たのである。




しかし、かなりの距離を走った気がする。

久々のハードな運動かもしれない。




全く、朝っぱらから何をやってるんだか。

俺達は二人揃うと、いつも童心に返るようだ。


どうせなら、「同心」であっても良いと思うんだけどな。

そう思うと、笑ってしまう。


ある意味一緒で、ある意味違う。

だから、俺達はいつも笑い合っていられるのに。




二人が全く同じ気持ちでいたら、飽きてしまうだろうに。




「うわ、汗が止まらないな」

俺はブラウスの襟を掴んで、パタパタと(あお)ぎ始めた。


こう言う時は下敷きが便利なのだが……俺は生憎、下敷きを使う習慣がない。

と言うか、下敷きの必要性が分からない。


仕方なく、俺はハンカチで汗を拭き始めた。




「これ、貸そうか?」

スポーツタオルを差し出しながら、彼が言った。


「あ、おはよう新谷。大丈夫、借りる訳にはいかないし」

俺は笑いながら、バックから扇子を取り出した。


基本的に暑い地域に住んでいるため、学校に団扇や扇子を持って来る人は多い。

特に、折り畳んで持ち運べる扇子は便利なのである。


「お前、でも顔色が良くない。この前みたいに、もし……」

「大丈夫だって。自分の体は自分で管理出来てるよ」


彼の言葉を遮るように、俺は小さく笑って言った。




それが逆効果だったらしい。

力なく笑う俺を見て、彼の心配を増長させてしまった。




「……でも」

彼は不安げである。


「ありがとう。心配してくれるだけで嬉しいから」

俺は、本当に心から彼に感謝していた。




「よっす。お前、走るの遅過ぎ」

教室へと入って来た奴は、自分の鞄を机に置くなり話し掛けて来た。


「失礼な。荷物もあるのに、全速力で走れる訳がないだろ」

俺は答える。


「大体、無理して追い付こうなんて百年早いんだよ」

奴は悪戯っぽい笑みを浮かべた。


「あのねぇ、いい加減にしないと……怒るよ」

俺は、答えた。




「そう言えば、今日は初めての席替えだな」

奴が、その話題に触れてしまった。




今は名前順で座っているため、俺と奴の席は近い。

奴は俺の斜め前の席である。


苗字が「な」行である彼は、今は俺達と席が離れている。


だから彼は、俺に言ったのだ。

「次はお前の隣を引き当ててやる」と。




彼はこの前、何を思ってそう言ったのだろうか。

彼の意図することが、分からない。




……いや、考え過ぎだ。

彼に限って、「裏」や「本心」があるとは思えない。


ただ彼は単純に、友人である俺達と近くの席になりたいと思った訳で。

その純粋なる言葉に、深い意味などなくて。




だから、気にしないことにした。

俺達の間にある三角定規を、歪ませないために。


今回のノンフィクションは2つ。




・下敷きは使わない派。

・学校には扇子派。


以上です^^

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ