「俺」と「奴」の話
最近、「三角定規」の執筆が早くなって来た気がします。
だからと言って、更新が早くなった訳ではありませんが(泣)
二人は、何も喋らないまま。
俺と奴は黙々と歩く。
さり気なく、傍に寄り添いたい。
……許されないと分かっていても。
「お前、ってさ」
沈黙を破ったのは、奴の方だった。
「ん、何?」
俺は問う。
……沈黙。
「いや……やっぱり、何でもねぇや」
「何それ? 気になるじゃん、言ってよ」
俺は無意味だと分かっていながら、問い詰めた。
「何だって良いだろ、別に」
奴は都合の悪いことは、いつだって"言わない"の一点張りだ。
それを貫き通す奴の執念は一体、何処からやって来るのだろう。
「それよりさ……」
奴は話を逸らし始めた。
「その手、離してくれない?」
……手?
そこで、やっと気がついた。
俺の手は、奴のYシャツの袖を未だ掴んだままだったことに。
「えっ、あ……ごめん」
俺はすぐさま、その手を離した。
ちょっとだけ、名残惜しい気もしたけれど。
「好き」
一言、そう言える勇気があるのなら。
俺は今頃、奴の袖に触れる権利を得ていたかもしれないのに。
そんな浮ついた、甘い言葉を発する程──、俺は女の子が出来ていなかった。
本日のノンフィクション...江角は他人の袖を掴んで、「離せ」と言われたことがあります(笑)
そんな感じかな?