「三人」の話
やっと、三人が揃いますね。
三角定規の頂点が。
...神崎じゃないですよ(笑)
彼はチョイ役ですから^^
帰り道、俺と奴は並んで歩く。
例えデートは出来なくても、奴が傍に、隣にいるだけで良かった。
「あれ、一ノ瀬じゃん」
その声に振り返ると、そこには彼が立っていた。
「新谷!! 久し振りだね、元気にしてた?」
俺は自然と笑みをこぼしながら言った。
「久し振りって……同じクラスじゃねぇか」
彼は苦笑いをする。
そう、彼は俺達と同じクラス。
だが……。
「文理が違うと、ほとんど授業も別々だからなー」
「まぁ確かに、そうだけどさ」
俺の言葉に、彼は相槌を打って答えた。
「今は座席も遠いし」
「大丈夫だ、心配するな。次はお前の隣を引き当ててやる」
「本当? もし出来たら、凄いな」
「あぁ、だから次の席替えまで待っててくれよ」
彼は笑顔で、断言した。
「例え座席は遠くても、文化祭とか体育祭が来れば、クラス対抗だから仲間同士だな。早くイベント、来ないかなー」
「そうだな。……で?」
彼は顔を近づけ、小声で聞いて来た。
「大原と、これからゲームでもするのか?」
「いや、奴一人だよ。俺はそう言うの、からっきし駄目だからな」
俺も何故か、小声で返した。
多分、一人称の「俺」を奴に聞かれたくなかったんだと思う。
……理由は、他にもあるのかもしれないけれど。
俺と彼が話している間、奴は半歩離れて視線をグラウンドへと向けていた。
多分、話に加わる気がないのだろう。
「何だ、俺もゲームに混ぜて欲しかったのに」
「残念でした」
俺は笑って、答えた。
「皆、頑張ってるね」
話の終わった俺と彼は、奴の隣に並んでいた。
「一ノ瀬……話、終わったのか」
「ん? うん」
生返事をしながら、グラウンドを見る。
砂埃の舞う中、選手達は果敢にも前へ前へと攻める。
「やっぱりさ、格好良いなぁ。サッカーとか」
俺は半分無意識に答えていた。
それがまずかった。
「へぇ、一ノ瀬って神崎みたいなのがタイプ?」
彼は問うた。
何故、神崎なのかと言うと──俺達のクラスのサッカー部員は、神崎だけだからだろう。
「いや、そうじゃなくて。一生懸命……努力してる人って、格好良いじゃん」
「俺だって、頑張ってるよ」
「確かに。だが断る」
「何故!?」
俺は残酷にも、微笑んで答えた。
「だって、野球部は嫌いだし」
「……ごめん、聞いた俺が馬鹿だった」
彼はうなだれて、やっとのことで答えた。
「ごめん!! だけど、野球は好きにはなれないけれど、新谷のことは好きだから──」
「分かってるよ」
彼は、俺の弁明を止めた。
「それ位のことは、分かってる。ただ、」
「ただ……?」
俺は、先を促した。
「ただ、もうちょっとだけ……本当の俺を見て欲しいかな、なんて」
彼は、無意識の内に。
少しだけ、淋しそうな表情を浮かべた。
「……新谷……?」
一体、どうしたの。
聞こうとしても、いまいち勇気が出ない。
「ねぇ、──」
「一ノ瀬」
その呼び掛けに、俺は言葉を飲み込んだ。
「帰るぞ」
そう言って、奴は校門まで歩いていった。
仕方なく、俺は奴について行った。
彼のことは腑に落ちなかったとは言え、奴とは一緒に帰りたかったから。
本日のノンフィクション...グラウンドって砂埃が激しい。
他にありませんでした(笑)