「俺」の話
俺の名前は、一ノ瀬。
しがない高校生だ。
俺は一人称が安定しない。
俺は「俺」と呼ぶ時もあれば、「あたし」と呼ぶ時もある。
時々「僕」や「私」もあるが、それは珍しいパターンだ。
まぁ、とどのつまり……。
俺は、一応──女の子である。
俺には一人、特別に大事な人間がいる。
「大原」と言う男である。
特に恋人同士と言う訳ではないが、友人と呼ぶのですらも躊躇ってしまう。
奴にとって、俺は……ただの「知り合い」に足る程度だろう。
それでも俺は、奴のことを大切に思いたいのである。
理由も分からずに……。
大原は、俺のことをどう思ってるのだろう。
奴にとって俺は、ちっぽけな存在であることは分かっている。
俺のことを「女の子扱い」しないでくれるのは、嬉しい。
喋っていて、気が楽になるからだ。
俺のことを「女の子扱い」しないでくれるのは、寂しい。
喋っていて、気が変になるからだ。
……矛盾してるって?
そんなの、最初から分かっているよ。
でも、これは仕方のないことだ。
これは代償なのだから。
俺は居心地の良さを引き替えにして、無意識の内に傷ついているのだから……。
本日のノンフィクション……主人公の一人称。
私生活において基本的には「あたし」ですが、時々「俺」になります。
ちなみに、江角の時は「私」ですね。