8.3 処女賛美の歴史(3)受難と殉教
聖人伝集『黄金伝説』では、「処女に恵みと力が宿る」という思想を、豊かで魅力的なイメージで包み込んだ。
聖人伝の執筆者たちは、イエス・キリストの花嫁——処女をあらわす白い衣と殉教をあらわす赤いバラを身につけた聖女たちを、特別な愛情を込めて賛美した。
(⚠️黄金伝説(Golden Legend/Legenda aurea):1267年頃に完成した聖人伝集。イエス・キリスト、聖母マリア、大天使聖ミカエルをはじめ、100人以上の聖人たちの生涯が記されている。中世ヨーロッパでは聖書についで広く読まれ、新約聖書の続編と位置付けられていた)
その中でも、もっとも豊かな恵みの奇跡が起こったのは、処女たちの受難の場面だ。
天使たちは、カエサリアの聖ドロテアに天上のバラを降らせ、それを処刑人たちの頭上に撒き散らした。
処女の殉教者たちは、猛獣に対してその力を発揮する。
円形闘技場のライオンは、聖テクラの足をなめた。
サーカスの野獣たちは、互いに集まって尾を絡ませて、聖エウフェミアのために玉座を用意した。
穴の中では、コブラが聖クリスティーナのために美しい首飾りを作った。
処女の殉教者たちが、その慎み深さのために苦しめられ、苦痛に耐え忍ぶことは、神の配偶者の望みではない。
処刑人が聖アグネスの衣服を引き裂くと、髪が伸び、彼女の体は奇跡の衣で覆われた。
聖バルバラが裸で通りを連行されるときには、天使が白いチュニックを持ってきた。
聖アグネス、聖ドロテア、聖カタリナ、聖マルガリータなど、この無垢な征服者の軍団は、「武装した男たちよりも処女の奇跡は強い」と信じるように、人々の心を啓蒙した。
パリの守護聖人・聖ジュヌヴィエーヴは、禁欲と祈りによって、フン族の王アッティラと蛮族の戦士たちをパリから追い払ったのではなかったか?
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当時から広く知られていた『貴婦人と一角獣』の寓話は、処女の状態を保つと特別な美徳が宿るという信念を生き生きと表現している。
一角獣は、半身が山羊で、半身が馬の姿をしており、全身が真っ白で、額に素晴らしい剣を持っている。
狩人たちは、ユニコーンが茂みの中を通り過ぎるのを見つけても、その速さゆえに決して追いつけなかった。
しかし、森の中で処女がユニコーンを呼ぶと、その獣は大人しく従い、みずから処女に近づいて膝上に頭を置き、処女のか弱い手で捕まえられ、縛られることさえ許した。だが、堕落した乙女、処女ではなくなった乙女が近づくと、ユニコーンは接近しただけで彼女をすぐに殺してしまう。[778]
なお、処女が断食して裸になり、ある魔法の言葉を唱えると王の病を治癒する力を持っているとさえ言われたが、それは福音書(聖書)由来の話ではない。[779]




