6.13 尊者ベーダの予言
魔術師マーリンの予言が「ジャンヌの使命」を予言していたなら、尊者ベーダも同類の予言をしていたに違いない。なぜなら、尊者ベーダと魔術師マーリンはいつも同じ予言をしているからだ。
ウェアマウスの修道士「尊者ベーダ」は、600年前に亡くなったが、生前はまさに知識の宝庫だった。
彼は、神学と年代記について多くの著書を残し、夜と昼、週と月、星座と黄道十二宮、戒律、月の周期(太陰暦)、教会の移動祝日について論じた。
著書『時間の計算論(De temporum ratione)』では、彼が生きていた時代のあとに続くであろう世界の第7時代と第8時代について取り上げている。
やはり、ベーダは予言していた。
オルレアン包囲戦のころ、教会関係者はベーダの名を冠した謎めいた詩を広め、乙女の到来を予言した。
「6の倍数の頭巾、7の倍数の仲間が集い
ガリアの若者は、雄牛との新たな戦いに備えるだろう
見よ、戦いは祝福され、乙女が旗を掲げる」
予言詩の1行目はクロノグラムで、時期が含まれているとのことだ。
解読するには、予言詩の中から「数字をあらわすローマ字」を拾い、それらを合計する。
(予言の原文・ラテン語詩)——————
Bis sex cuculli, bis septem se sociabunt,
Gallorum pulli Tauro nova bella parabunt
Ecce beant bella, tunc fert vexilla Puella.
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bIs seX CVCVLLI, bIs septeM se soCIabVnt.(数字をあらわすローマ字を大文字にしています)
「1 + 10 + 100 + 5 + 100 + 5 + 50 + 50 + 1 + 1 + 1000 + 100 + 1 + 5 = 1429」
したがって、この予言時は1429年を指していることになる。
もし、誰かがこの予言詩の出典元を見つけようと、尊者ベーダの著書を探しても徒労に終わっただろう。なぜなら、存在していないからだ。
マーリンの予言の原典から「ボワ・シュニュ」を探した者がいなかったのと同じく、尊者ベーダの原典を探した者はいなかった。[697]
そして、ベーダとマーリンの両者が「乙女の到来を予言した」と解釈され、それが広まった。
当時、乙女到来に関する「予言書」、「クロノグラム」、「チャーム(魔除け・まじないの装身具)」などがロワール川の近辺から伝書鳩鳩のように飛び立ち、王国中に広まった。
同年の5月か6月には、ベーダの偽予言がブルゴーニュに到着していただろう。
それよりさらに早く、パリでもその噂が話題になっていた。
フランスの修道院で隠遁生活を送っていた老齢のクリスティーヌ・ド・ピサンは、1429年7月31日以前に「ベーダとマーリンが乙女を幻視した」と書き残している。[698]




