6.12 魔術師マーリンの予言(2)ボワ・シュニュから来る乙女
さて、1429年の四旬節の期間中、シャルル七世を支持するアルマニャック派の間で、魔術師マーリンの予言書から引用された次の予言が広まった。
「ボワ・シュニュの町から、国を癒す乙女が現れる。
彼女がすべての城塞を襲撃したとき、
彼女の息吹ですべての泉が干上がる。
彼女は苦い涙を流し、
島を恐ろしい音で満たす。
そのとき、彼女は10本の角を持つ雄鹿に殺される、
そのうち6本の枝に黄金の冠をいただき、
残りの6本は雄牛の角に変わり、
そして、恐ろしい音がブリテン諸島を揺るがす。
デンマークの森が立ち上がり、人間の声が言うだろう。
『来たれ、カンブリアよ、コーンウォールを汝のものとせよ』」[693]
(⚠️カンブリア:ウェールズを指す古語)
このミステリアスな言葉の中で、マーリンは「処女が敵の手によって滅びる前に、偉大で素晴らしい行為を成し遂げる」ことをぼんやりと予言している。
ただひとつ、はっきり明言しているのは「この処女がボワ・シュニュの町から現れる」ことだけだ。
もし、この予言が、元の出典(原典)までさかのぼって調査され、『ブリタニア人の歴史(Historia Britonum)』第4巻にある「ギュントニア・ヴァティキニウム(Guyntonia Vaticinium)」というタイトルを見つけて、読んでみれば一目瞭然だ。
原典では(ボワ・シュニュの町ではなく)イングランドの都市ウィンチェスターを指している。
つまり、当時フランスで流布していたバージョンは、原典の一部を書き換えて、内容を歪曲していたのである。
しかし、テキストを検証しようと考えた者はいなかった。
本は希少品で、人々は批評する思考を持っていなかった。
意図的に改ざんされたこの予言は、マーリンの純粋な言葉として受け入れられ、多数の写しが世界中に広まった。
これらの写し(写本)の発信源はどこなのか?
その起源は永遠に謎のままだろう。
しかし、ひとつだけ確かなことがある。
それは、ジャック・ダルクとロメの娘であるジャンヌのために作られたということだ。父親の家から「ル・ボワ・シュニュ」と呼ばれる森の端を見ていた少女を指しているのは明白だ。
つまり、「予言を改ざんして広めた発信者・発信源」はジャンヌにごく近い場所から来たもので、(昔から知られていた予言ではなく)この時代に流布されたものだ。[694]
もし、この改竄されたマーリンの予言が、ジャンヌが村にいたころに聞いた「王国を救うためにロレーヌ辺境から乙女が来る」予言とは別物だとしても、密接に関連しているのは間違いない。ふたつの予言には、家族のような類似性がある。[695]
これらの予言は、同じ精神・同じ意図を持っている。
ムーズ渓谷の聖職者たちとロワール地方の聖職者たちが、ドンレミの霊感少女に注目を集めようと画策していたことを示唆している。
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⚠️今回の予言詩の原文です。
From the town of the Bois-Chenu there shall come forth a maid for the healing of the nation.
When she hath stormed every citadel, with her breath she shall dry up all the springs.
Bitter tears shall she shed and fill the Island with a terrible noise.
Then shall she be slain by the stag with ten antlers, of which six branches shall bear crowns of gold, and the other six shall be changed into the horns of oxen;
and with a horrible sound they shall shake the Isles of Britain.
The forest of Denmark shall rise up and with a human voice say:
"Come, Cambria, and take Cornwall unto thyself."




