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教皇庁に禁書指定されたジャンヌ・ダルク伝  作者: しんの(C.Clarté)
上巻・第三章 ヴォークルール初訪問/ヌフシャトーとトゥールへ/ヴォークルール再訪

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3.5 婚約者に訴えられトゥールへ出頭

 ヌフシャトーの町に滞在中、ジャンヌはドンレミ・グルー村の出身であるため、両村の管轄権を持つトゥールの役人の前に「出頭するように」と召喚状を受け取った。

 ドンレミ村のある若い独身男性が、「ジャック・ダルクの娘と結婚の約束をした」と主張していた。

 ジャンヌは否定したが、彼は主張を曲げず、ジャンヌを役人の前に召喚した。[369]

 このような民事訴訟は教会が管轄する宗教法廷に属し、結婚の無効や婚約の有効性にについて判決を下した。


 この訴訟の奇妙なところは、ジャンヌの両親が娘に反対し、若者の味方をしたことだ。

 両親の意向に反して、ジャンヌは自分の主張を弁護するために役人の前に出廷した。

 後にジャンヌは、この件で両親に背いたことを認め、両親に逆らった唯一の出来事だったと述べている。[370]


 ヌフシャトーからトゥールまで往復する旅は、武装した集団がうろつく道を20リーグ以上も歩いて旅することになり、ドンレミ村の農民たちが最近パニックに陥って逃げてきた、火と剣(焼き討ちと略奪)で荒廃した地域を通り抜けることを意味する。

 しかし、ジャンヌは両親の意に反して、そのような旅に出る決意をした。


 おそらくジャンヌは、トゥールの裁判官の前に一度ではなく2〜3回出頭した。

 そして、昼夜を問わず、いわゆる婚約者と一緒に旅をしなければならない可能性が高かった。なぜなら、彼もまた同じ時間に同じ道を通っていたからだ。


 ジャンヌの声は、「何も恐れることはない」と言った。

 裁判官の前でジャンヌは「真実を語る」と誓い、結婚の約束をしたことはないと否定した。


 ジャンヌは何もやましいことはなかった。

 彼女の行動は、特異で英雄的な無邪気さから生じたものだが、のちに悪意ある解釈が下された。


 ヌフシャトーで、ジャンヌは旅の途中で財産をすべて使い果たしたと言われていた。

 しかし、彼女の財産とは何か?

 ああ、彼女は何も持たずに旅に出たのだ!

 ジャンヌは家々を回ってパンを物乞いしたのかもしれない。

 聖人は、神への愛ゆえに、みずから施しを与え、他人からも施しを受ける。


 婚約者は、裁判中にジャンヌがいかがわしい女たちと一緒に暮らしているのを見て、正義(婚約の履行)を求めることを諦め、評判の悪い花嫁を捨てたという話があった。[371] こういう誹謗中傷は、簡単に信じられやすかった。


 ヌフシャトーに2週間滞在した後、ジャック・ダルクとその家族はドンレミ村に戻った。

 果樹園、家屋、修道院、村、畑——、彼らはどれほど荒廃した状態を見たのだろうか!

 兵士たちはすべてを略奪し、荒らし回り、焼き尽くした。逃亡した農民らから身代金を徴収できなかったため、兵士たちは村の財産をすべて破壊した。かつては城塞のように立派だった修道院は、見張り番の塔とともに、今や黒焦げの廃墟の山になっていた。

 今後、ドンレミ村の人々が聖なる日にミサを開くには、グルー村の教会へ行かなければならない。[372]


 非常に危険な時代だったため、村人たちは要塞化された家や城に留まり、出歩かないように命じられた。[373]


 一方その頃、イングランド軍はオルレアンの町を包囲していたが、町の領主はイングランドの捕虜となったオルレアン公シャルルであった。

 イングランドのやり方は悪どかった。なぜなら、彼らはシャルル公爵の身柄を拘束しているのだから、彼の財産を尊重すべきだったからだ。[374]

 だが、イングランドはフランスの中心地にあるオルレアンの町の周りに要塞化された塔を建て、そこに非常に強力な拠点を築いた。[375]


 さて、聖カタリナと聖マルガリータは、百合の国フランスを愛していた。

 聖女たちは王太子シャルルの誓約された友であり、優しいいとこだった。

 聖女たちは羊飼いの娘ジャンヌに王国の不幸について語り、繰り返し言い続けた。


「村を出てフランスへ行きなさい」[376]


 ジャンヌは、フランスに到着する時期をみずから宣言しており、その期限が迫っていたため、いよいよ旅に出るのだと焦りを感じていた。

 ヴォークルールの司令官に、「四旬節の半ばまでに王太子を助けにいく」と伝えていたからである。ジャンヌは、自分の声を嘘つきにしたくなかった。[377]


 1月の中旬ごろ、ジャンヌが待ち望んでいたビュレに戻るチャンスが訪れた。

 このころ、デュラン・ラッソワの妻ジャンヌ・ル・ヴズールが出産した。[378]

 この地方では、母親の若い親族や友人が付き添い、母子を見守り世話をするのが習慣だった。善良で親切な習慣は、楽しい井戸端会議や陽気なおしゃべりの機会を与えてくれるので、すすんで行われていた。[379]


 ジャンヌは叔父に、お産の手伝いをするために送ってもらえるよう父に頼んでほしいと頼み、ラッソワは了承した。

 彼は姪の頼みをいつも喜んで引き受けてくれた。おそらく彼の従順さは、ある程度、重要人物である敬虔な人々によって奨励されていたのだろう。[380]


 しかし、ジャンヌの父親は、少し前に「娘を武装した男たちと一緒に行かせるくらいならムーズ川に投げ込む」とまで言っていたのに、その弱点(=ジャンヌの頼みごとに弱い)をよく知っていた親族に守られながら、また町の門まで行かせることを許可したのはなぜだろうか。理解に苦しむが、彼はそうした。[381]


 こうしてジャンヌは、二度と見ることのない幼少期の家を離れ、叔父デュラン・ラッソワとともに、冬の荒涼とした故郷の谷を下っていった。


 昔なじみの友人だったグルー村の農夫ジェラール・ギユメットの家の前を通り過ぎたとき、ジャンヌは涙ながらに叫んだ。


「さようなら! 私はヴォークルールに行くわ」[382]


 さらに、数歩先に友人のメンジェットを見かけて、「さようならメンジェット、神のご加護を」と告げた。[383]


 道中、家の玄関先で知っている顔を見かけるたびに、ジャンヌは別れを告げた。[384]


 しかし、子供の頃から一緒に遊んだり寝泊まりして、心から愛していたオヴィエットを避けた。もし彼女に別れを告げたら、ジャンヌは心が折れてしまうのではないかと恐れた。

 オヴィエットがジャンヌの旅立ちを知ったのは、ずっと後のことだった。

 その時、彼女は激しく泣いた。[385]


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