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教皇庁に禁書指定されたジャンヌ・ダルク伝  作者: しんの(C.Clarté)
上巻・第二章 声

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2.8 使命を自覚

 これが聖職者たちの物語(聖レミの伝説)である。

 ドンレミ村の農民たちは、より控えめな調子で同じことを、あるいはそれ以上のことを話していたかもしれない。

 村人たちは、聖レミの祈りの歌をうたっていただろう。

 毎年、10月1日の守護聖人の祭日が近づくと、司祭はいつもこの聖人を称える演説をした。[312]


 この頃、ランスでは、ガリアの使徒の奇跡を再現した神秘劇が上演された。[313]


 その中には、田舎の素朴な魂に強く訴えかける演目があった。


 聖レミは、悪魔に取り憑かれた盲人を癒した。

 ある男は、死後の魂の救済のためにランスの教会に財産を捧げて亡くなったが、死後10年経つと、聖レミは彼を生き返らせて、贈り物を与えると公表した。

 飲み物がない人たちに歓待された聖レミは、彼らの樽に奇跡のワインを満たした。

 聖レミはクロヴィス王から水車小屋(製粉工房)を贈られたが、製粉工がそれを引き渡すことを拒否したため、聖レミは神の力で工房をひっくり返し、地中に投げ捨てた。

 ある夜、聖レミが一人で礼拝堂にいると、聖職者たちは全員眠っていたが、栄光の使徒ペトロとパウロが天国から降りてきて、聖レミとともに朝の祈りをおこなった……など。


 フランスのクロヴィス王の洗礼と、聖霊の降臨について——聖霊が「来たり給え、創造主なる聖霊よ(Veni Creator Spiritus)」を歌いながら、神に祝福された聖油の瓶をくちばしにくわえて運んできた伝説——を、ドンレミ村の住民よりも詳しく知っていた人がいるだろうか?[314]


 聖レミがクロヴィス王に語った言葉を、ドンレミ村の人々よりも知っている人はいない。教会で話すラテン語ではなく、民衆が話す善良な国言葉で、次のようなものだ。


「さあ、王よ、知識を学び、神に忠実に仕え、公正に裁きなさい。そうすれば、あなたの王国は繁栄するでしょう。もし、王道が正義から外れるならば、この王国は滅びの危機にさらされるでしょう」[315]


 ようするに、ジャンヌは、彼女を導いた聖職者や故郷の農民を通じて、何らかの方法で、ランスの聖油のことや王家の血筋を大切にしていた聖レミのこと、フランス王たちの塗油式について知っていたのである。


 そして、大天使がジャンヌに現れてこう言った。


「神の娘よ、あなたは王太子をランスへ連れて行き、ふさわしい塗油式を受けられるようにしなさい」[317]


 ジャンヌは理解した。

 目からベールが剥がれ落ち、心に明るい光が差し込んだ。


 神がジャンヌを選んだ理由は、王太子シャルルをランスに導いて塗油式を受けさせるためなのだと。


 昔、聖レミのもとに送られた白い鳩は、処女の呼びかけで再び降りてくるだろう。


 フランスを愛する神は、彼らの王に「しるし」を付ける。

 しるしがなければ王権は消滅する。


 聖油を塗る儀式によってのみ、王は作られる。

 王太子シャルル・ド・ヴァロワ卿はまだ塗油式を受けていない。


 すでに、父王はサン・ドニ大聖堂の霊廟で王冠と笏を持って横たわっているのに、息子はまだ王太子にすぎず、尽きることのない聖油が王太子の額に流れる日まで、王家の遺産を受け継ぐことはできない。


 神は、若くて無知な農民の少女を選んだ。敵地を通り抜けてランスまで王太子を導き、そこで彼は聖ルイに注がれた聖油を受けるだろう。


 神の道は、計り知れない!


 馬の乗り方も知らず、戦争のやり方も知らないこの卑しい娘を、キリスト教国フランスの世俗的な代理人(シャルル七世)を神のもとに連れてくるために選ばれた。


 それ以来、ジャンヌは自分がどんな偉業を成し遂げるべきかを自覚した。

 しかし、まだそれを達成するための手段を見極めていなかった。


 聖カタリナと聖マルガリータは、「あなたはフランスへ旅立たなければなりません」と言った。


 大天使ミカエルは、「神の娘よ、あなたは王太子をランス[318]へ連れて行き、ふさわしい塗油式を受けられるようにしなさい」と言った。


 ジャンヌは彼らに従わなければならない——だが、どうやって?


 もしその時、ジャンヌを導く敬虔な助言者がすぐそばにいなかったとしたら、ちょうどその頃、ジャンヌの父親に起こった、非常に個人的でさして重要ではないある出来事が、若き聖人ジャンヌに道を指し示す役割を果たしたのかもしれない。


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