2.5 ジャンヌを導く「声」の正体
二人の聖女が訪問するようになってから、聖ミカエルは以前ほど頻繁には来なくなったが、ジャンヌを見捨てたわけではなかった。
ある時、聖ミカエルはジャンヌに、フランス王国への愛について語りかけた。それは、ジャンヌの心に宿る愛だった。[288]
乙女の魂がより神聖で英雄的になるにつれて、聖なる訪問者たちの声はますます強く、熱心になった。彼らはジャンヌに使命を明らかにした。
「神の娘よ。あなたは村を離れてフランス(イル・ド・フランス)へ行かなければなりません」[289]
ジャンヌが「声」を通して思いついたこの聖なる軍事的使命というアイデアは、外部からの介入なしに、自然に彼女の心に浮かんだものだったのか、それとも彼女に影響を与えている誰かによって示唆されたのか?
この問題は、わずかな手がかりがなければ解明できないだろう。
ドンレミ村のジャンヌは、「フランスが一人の女によって破滅し、一人の乙女によって救われる」という予言を知っていた。[290]
この予言はジャンヌに強い印象を与えたばかりか、のちに自分自身が予言された乙女であると信じ、確信していることを示すような話し方をした。[291]
では、ジャンヌにこの予言を教えたのは誰か? 村の農民か?
いや、農民たちはこの予言を知らなかった。どちらかというと、聖職者たちの間で流布していたと考える方が自然だろう。[292]
さらに、この件で重要なのは、ジャンヌがこの予言の「特殊な形式」を知っていたということだ。
それは明らかにジャンヌのためにアレンジされた内容で、「救世主の乙女はロレーヌの国境から来る」と地域が特定されていた。
この手の込んだローカルな追加文は、牛飼いのしわざではない。(ジャンヌの)魂を導き、行動を焚き付ける能力のある誰か(の存在)を示唆している。
このように改訂された予言は、目的を容易に推測できる聖職者のしわざであることはもはや疑いようがない。
それ以来、幻覚を見る若き予言者は、この考えに取り憑かれて動揺し、意識を支配されている。
その人物は、どういうつもりでこのようなことをしたのか。
ムーズ川のほとり、田舎の慎ましい人たちの間で、哀れなフランス人の運命に心を痛めていたある聖職者が、ジャンヌの幻覚を王国の繁栄と平和実現に結びつけて導こうとした。
この人物は、敬虔な熱意に突き動かされて、フランス王室の救済に関する予言を集め、自分の計画を実現することを目的に「予言を追加」した。
ロレーヌやシャンパーニュ地方の司祭たちの中から、当てはまる聖職者を探してみよう。彼らは、国難のために残酷な苦しみを強いられていた。[293]
税金と補助金(臨時税)の重荷に押しつぶされ、貨幣の改鋳によって破産した商人や職人たち[294]、家も納屋も工房も破壊され、畑が荒廃した農民たちは、もはや公共の礼拝の費用を負担できなかった。[295]
封建的な義務と信徒の寄付を両方とも奪われた聖職者たちは、修道院を去り、パンを求めて家から家へ物乞いしていた。修道院には、老いた修道士2〜3人と子どもたち数人しか残っていなかった。
要塞化された修道院は、両陣営の隊長や兵士を引き付けた。
彼らは城壁の中に立てこもり、略奪と焼き討ちを繰り返した。
そのような状況で、聖なる修道院のひとつがなんとか持ちこたえると、さまよう村人たちはそこを避難所にした。食堂や寝室が女性たちに侵入されるのを防ぐことは不可能だった。[296]
信仰の苦しみと醜聞の苦しみに悩む、暗く混沌とした群衆の中に、予言の改訂者と乙女の指導者がいると推測できる。
ドンレミ村の司祭ギヨーム・フロンテ師が、その人物であるとは考えられない。
ジャン・ミネ師(ジャンヌが生まれたときに洗礼を担当)の後継者となったフロンテ師は、残っている会話から判断すると、その他大勢の信徒たちと同じくらい素朴だった。[297]
ジャンヌは多くの司祭や修道士と交流していた。
母方の叔父であるセルメーズの司祭を訪ねる習慣があり、シュミノンの修道院では[298]、ジャンヌの後を追ってフランスに来ることになる若い下級聖職者のいとこに会っていた。
ジャンヌの並外れた信心深さと、大多数のキリスト教徒には見えないものを見る能力を、彼らはすぐに認識しただろう。
彼らはジャンヌとさまざまな会話をしたに違いない。もし、会話の内容が保存されていれば、ジャンヌに素晴らしい召命のインスピレーションを与えた源のひとつを教えてくれただろう。
ジャンヌと交流していた聖職者の誰か、その名は永遠にわからないが、フランスの王と王国のために天使のような救世主を育てた。




