13.7 レ・トゥーレル奪還(2)総攻撃
15分後、ジャンヌは短い祈りを捧げた後、兵士たちのところに戻ってきて言った。
「イングランド軍は疲れ果てています。はしごを持ってきてください」[1085]
それは本当だった。火薬はほとんどなく、最後に発射した一斉射撃は不十分な装填で、素手で投げた石よりも飛ばなかった。[1086] 彼らには、もはや武器の破片しか残っていなかった。
ジャンヌは砦に向かった。溝(堀)のふちにたどり着いたとき、突然、剣よりも千倍も大切な軍旗が見知らぬ人の手の中にあるのを目撃した。ジャンヌは軍旗が危険にさらされていると思い、それを取り戻そうと急いだ。
溝に下りようとしていたバスクに追いつくと、ジャンヌは「旗の尾」と呼ばれる部分をつかみ、全力で引っ張りながら叫んだ。
「はっ! 私の軍旗、私の軍旗!」
バスクは、なぜ上から引っ張られているのか分からず、硬直して立ち尽くした。ジャンヌはつかんだ軍旗を放そうとしなかった。
貴族と隊長たちは軍旗が揺れているのを見て、それを合図と受け取り、集結した。
その間に、ジャン・ドーロンは城壁に到着した。
バスクがすぐ後ろをついてきていると思っていたのに、振り向くと、溝の反対側で立ち止まっていることに気付き、彼に向かって叫んだ。
「おい! バスク、おまえは何を約束したんだ?」
ドーロンの抗議を受けて、バスクは先を急ごうと軍旗を強く引っ張ったので、ジャンヌは手を離し、彼はぶじに軍旗を城壁まで運んだ。[1087]
ジャンヌは何が起きているかを理解し、納得した。
そして、近くにいる人たちに言った。
「見て! 私の軍旗が防壁に触れるのを見てごらん」
騎士は答えた。
「ジャンヌ、旗が触れている」
それからジャンヌは叫んだ。
「すべてはあなたたちのものです。突入してください」[1088]
貴族、市民、兵士、弓兵、町民がすぐに溝に飛び込み、柵をよじ登った。
あまりにも素早く、あまりにも大勢で柵をよじ登ったので、まるで鳥の群れが生垣に降り立つかのようだった。[1089]
要塞内に侵入したフランス軍は、モリンズ卿、ポイニング卿、トーマス・ギファート卿、マントの総督、グラスデール隊長たちイングランド軍の隊長が、部下の逃走を援護しながら、誇らしげに敵に顔を向けて後退していくのを見た。[1090]
ウィリアム・グラスデールは、シャンドスの軍旗(standard of Chandos)を手に持っていた。それは80年以上もの間、イングランド軍が勝利したときに翻ったものだが、今や子供の軍旗の前で退却を強いられていた。[1091]
城壁に、乙女が立っていた。
パニックに陥ったイングランド軍は、血が流れても力を失わず、呪文で深い傷を癒すこの魔女は、いったい何者なのかと不思議に思った。
その間、ジャンヌは優しく悲しげに彼らを見つめ、すすり泣きながら声を震わせて叫んでいた。
「グラシダス!グラシダス! 降伏せよ、天の王に降伏せよ。あなたは私を娼婦と呼んだが、私はあなたの魂とあなたの部下の魂を深く憐れんでいます」[1092]
(⚠️グラシダス(Glassidas):フランスではグラスデール(Glasdale)をこう呼んでいた)
*
同時に、町の城壁とラ・ベル・クロワ(オルレアンの大橋にかかる「美しい十字架」のシンボル)の防壁から、大砲の弾がレ・トゥーレル要塞に降り注いだ。[1093]
モンタルジ砲とリフラール砲がそれぞれ石弾を投げ放った。
ギヨーム・デュイジーの新しい大砲は、シェノーの小門(裏門)から重さ120ポンドの弾丸を発射した。[1094]
レ・トゥーレル要塞は、大橋の方面からも攻撃された。
イングランド軍によって破壊されたアーチの上に狭い歩道が架けられ、僧兵(聖職者の騎士)ニコル・ド・ジレスム師が最初に渡った。[1095]
彼に続いた者たちは、レ・トゥーレル要塞へ近づくのを妨げていた防護柵に火をつけた。
こうして、イングランド軍600人は、力も武器も使い果たし、正面と背後の両方から挟撃された。その上、狡猾で恐ろしいやり方で、彼らは下からも攻撃を受けた。
オルレアンの人々は、松脂、麻くず、薪、馬の骨、古い靴、樹脂、硫黄、98ポンド分のオリーブオイル、その他、燃えやすく煙が出やすい材料を大量に積み込んだ大きな艀船(はしけ。荷運び用の平たい船)を用意していた。
彼らはそれを、敵がレ・トゥーレル要塞と防壁の間にかけた木製の橋の下に停泊させると、積荷に火をつけた。艀船の炎は、イングランド軍が退却しているちょうどその時、大橋に燃え移った。
煙と炎に包まれて、イングランド兵600人が燃えるプラットフォームをあたふたと通り抜けた。
やがてウィリアム・グラスデール、ポイニングス卿、モリンス卿たち幹部が撤退する番となり、30〜40人の隊長とともに逃げ出そうとした。しかし、彼らが大橋に足を踏み入れると、木炭になった橋の梁が崩れ落ち、シャンドスの軍旗とともに彼らは全員ロワール川に飲み込まれてしまった。[1096]
ジャンヌは哀れに思い、グラスデールの魂と彼とともに溺死した人々の魂を悼んで涙を流した。[1097]
ジャンヌと一緒にいた隊長たちもまた、これらの勇敢な敵兵たちの死を嘆いた。彼らが溺死したことで、フランスに大きな損害を与えることを思い出した。もし生きたまま捕らえることができたなら、その身代金は、莫大な富をもたらしたはずだった。[1098]
逃げ出したイングランド兵600人は、燃える板を渡った後、大橋の上でフランス軍に襲われた。400人が殺され、残りは捕らえられた。この日の戦いで、オルレアンの人々は100人の犠牲者を出した。[1099]




