第四十夜 4vs11
∴∵∴『クリスティア』領の沖合いにて∵∴∵
「ん? なんだ、あの船は?」
巡回船の監視台で見張りをしていた『クリスティア海上自衛隊』の一人の隊士、ライラル・プリハマムが、遠方に船影を見つけた。
それも一つではなく、複数。
「……取り敢えず、報告だ」
隊士は無線機を手に取り、艦長室に繋げる。
「こちら、ライラル一等兵。艦長はおられますでしょうか? どうぞ」
《どうした? どうぞ》
直ぐに返答があった。が、その声は隊長ではなく無線員の一人だった。
まあ、報告するのは誰でもいいか、とライラルは思い直し、報告を続ける。
「はい。遠方に船影を複数発見しました。まだ、我が国の領海には侵入はしていませんが、一応報告を、と。どうぞ」
《船影?》
無線員はそれだけ呟くと、少しの間無言が続いた。多分、マイクから口を離して誰か──恐らく艦長──に報告しているのだろう。
暫くして、無線機から声が届いた。
《その船影の方角は? どうぞ》
あ、興味を示した、と思いながら、ライラルは一度船影の方角をきちんと確認してから答える。
「南東の方角です。どうぞ」
《了解した。では、一等兵はそのままその船影を監視していてくれ。なにか動きがあれば、直ぐに報告を。どうぞ》
「了解しました。報告終わり」
そう言って無線機を切る。ライラルは言われた通り、双眼鏡を覗きこんで船影の監視に入る。
(責任重大だな。まあ、俺一人だけではないとは思うが……。てか、なんでこんなに近いんだよ。今日は、そんな報告来てないはずだけど……)
そんなことをつらつらと考えながら監視を続けて一時間程が経過。船影は小さくなるどころか、次第に大きくなってきていた。
(おいおい……。まだ領海内には入ってきてないけど、これはヤバいぞ……)
ライラルは、もう一度艦長室に連絡をしようと、双眼鏡から目を離した。
その瞬間──
ズガァアアアアン!!
轟音と共に、船体が大きく揺れた。
「ッ!?」
ライラルは、咄嗟に近くの手摺に掴まり、衝撃に耐えた。
(なんだ、何が起きたッ!? まさか……!)
ある推測を立てて、ライラルは慌てて双眼鏡を覗きこみ、先程まで監視していた船影を睨む。
その船影群の先頭とおぼしき一隻から、一瞬、キラリと何かが光った。その直後、
ズガァアアアアン!!
本日二度目の衝撃。
推測は、確信へと変わった。
(攻撃だとッ!? バカな……)
混乱で硬直していたライラルの無線から、怒号が響いた。緊急時専用の、特別無線である。
《どうした!? 何があった!?》
その声にハッと気付き、手摺に掴まりながら、こちらも大声で叫ぶ。
「恐らくですが、先の船影からの攻撃かとッ!!」
無線機の向こうで、息を飲む気配が伝わった。
《何故直ぐ様報告しなかったッ!?》
「船影は未だに領海の外ですッ! 攻撃されるなど、いえ、攻撃が届くなど微塵も思っておりませんでしたッ!!」
またもや、絶句の気配。
ズガァアアアアン!!
その間に、再び衝撃が船体を走る。
《くそっ! 一等兵、これはなんの攻撃だッ!?》
思えば、この質問はあまりにも滑稽であった。
ライラルは、領海の外からの攻撃はない、と思い込んでいた。つまり、裏を返せば、“領海の外から攻撃可能な大砲は存在しない”ことを意味する。そして、少なくとも向こう十年間は完成出来ないと言われている。
この知識は、当然無線員の頭にも入っており、だからこそこの攻撃の正体は自ずと導き出されるはずだが、やはり突然の攻撃で混乱しているのであろう。
「自分の推測ではありますが……」
《構わんッ!》
「ハッ! 魔術による、超遠距離狙撃かと」
《………………》
三度、絶句。
否、今回は歯軋りの音が聞こえてくるので、厳密には絶句ではない。
《……根拠は!?》
無線員の声に苛立ちが増し始めた。恐らく、無自覚に。
「衝撃の直前に、一隻の船影で、一瞬ですが光が見えました。恐らく、光術の類いかと」
ライラルの推測を受け、無線員が遠くの誰かに喋っている、否、怒鳴っている声が無線から聞こえた。マイクから口を遠ざけているようで、その詳細は聞き取れない。
《……分かった! そちらに損傷はッ!?》
僅か十秒程で無線員はマイクに戻ってきた。ライラルは辺りを見回してから答えた。
「特に見当たりません!」
《そうか。ならば、一等兵は変わらず敵船影を監視してくれ! 攻撃が来る前兆を視認したら、直ぐ様無線で警告しろッ!》
その指示に、ライラルは焦って反論した。
「む、無理ですッ! 前兆は、ホントに攻撃の直前で、光ったと思った瞬間には既に撃たれていますッ! 間に合いませんッ!!」
ズガァアアアアン!!
四度目。いつまでこの巡回船がもつのか。頭の片隅にそんな考えがよぎる。
《いいからやるんだッ!!》
有無を言わさぬ口調に、ぐっと息を詰まらせるライラル。
無線員の後ろから、艦長室が錯綜している雰囲気を感じ取れる。
(向こうも混乱しているんだ……)
ライラルは一度、強く目を瞑って気持ちを落ち着かせる。
「……分かりましたッ! やってみますッ!」
《ああ、頼んだぞ! 無線は繋げたままにしておくからな》
「はいッ!」
ライラルは力強く返事をして、双眼鏡を顔の前に持ってくる。双眼鏡で大きくなった船影が視界に広がる。
(やってやる、やってやる、やってやる、やってやるッ!!)
過剰とも言える決意を心の中で繰り返しながら、敵船影を睨み付ける。ほんの僅かな予兆も見逃さないように。
……だが、その予兆が来ない。四度目の攻撃から数分経過したが、なんの動きも見られない。
(……どうしたんだ? こっちが沈没したと勘違いでもしてるのか?)
浮かんだ予測を、ライラルは直ぐ様否定した。
(そんなわけあるか! 敵はあの距離からの狙撃が可能なんだ……、こっちが見えないはずがない! じゃあ、なんで……動かない)
その後も監視を続けるが、やはり動きがない。
(そう言えば──)
ふと、ライラルの脳裏に甦ったのは、今までの攻撃。その、インターバルだった。
(一度目と二度目は間髪入れずに撃たれたけど、二度目と三度目、更には三度目と四度目の間隔は、どんどん長くなってた。もしかして──)
行き着いた答えに、ライラルは背筋が震えた。
(あの魔術は、連射が出来ない……!)
この推理を、ライラルは艦長室に伝えるかどうか悩んだ。
(どうする、今無線で連絡したら、攻撃と勘違いされる……。かと言って、伝えないわけにも……)
うんうんと唸っていたライラルだが、最終的に、艦長室の誰かが既に気付いているだろうと決め付け、伝えないことにした。
(俺の仕事は、敵船影の監視だ。余計な事は、控えた方が良い……)
そう思って、一瞬だけ視線を無線機に向けた。
その視界の端で、船影から光点が見えた。
(しまっ──!)
ズガァアアアアン!!
今までより強く、そして近くで響いた衝撃音。物凄い揺れに耐えきれず、ライラルは床に倒れ、強かに頭を打ち付けた。
そして、そのままライラルの意識はフェードアウトしていった。
「監視台がやられましたッ!」
艦長室にいた一人の自衛官が、艦長に大声で叫ぶ。
「ああ、見えてるよ!」
艦長も、その方向を見ていた。
塔の半ばから折られた監視台──巡回船の四方に建てられている、高さ五メートル程の塔の形をしている。頂上には小部屋が一室設けられており、そこに常に一人は篭っている──は、ゆっくりと倒れていき、海に叩き付けられた。その衝撃による波が、巡回船を襲う。
「クソッ! 救難信号は出したのかッ!?」
艦長が一人の無線員に怒鳴り付ける。その無線員は、何かの機器を弄りながら答えた。
「それが、電波妨害でも発せられているのか、信号が発信出来ません!」
「そんな、バカな……!」
艦長は、手に持つ双眼鏡を覗きこみ、敵船影を睨む。
「一体どこの国の海軍だッ!? 何故クリスティアを狙うッ!?」
敵の国旗を見つけようと睨み続けるが、はっきりとは視認出来ない。
「クソッ! おいっ、艦内無線は大丈夫だったな!?」
「は、はいっ!」
「全乗組員に通達だ! 緊急避難ボートに乗り込めッ! この船は捨てるッ!!」
「りょ、了解しましたッ」
無線員は無線機のスイッチを入れ、マイクに向かって叫び始めた。
「艦長も……」
「……ああ」
一人の自衛官に促され、艦長室から出ようと踵を返し、もう一度船影の方に振り返った。
「許さん……!」
恨みの篭った眼差しで船影を睨み付け、顔を正面に戻した。
「か、艦長ッ!」
だが、すぐに振り返ることとなる。背後から呼ばれたので振り返ったのだが、視線は既に別のものに釘付けになっていた。
「ま、まさか……」
それは、船影の方角から飛んでくる。初めに言っておくが、この世界に飛行機といった、空を飛ぶ機械はまだ開発されていない。にもかかわらず、それは飛行している。
つまり、空を飛んでいるのは生物だ。
そのサイズは大きく、軽く三メートルはあるだろう。その生物が、背中に生えている二枚一対の羽根を上下に動かし近付いてくる。
「……こ、攻撃準備ィイイ!」
艦長は、慌てて艦長室の乗組員に命令するが、誰一人動こうとはしない。あるものは呆然と、あるものは体を恐怖に震わせ、またあるものは絶望に涙していた。
ウォオオオオッ!
それが咆哮した。それだけで、乗組員全員が竦み上がった。
「そんな……」
先程までは戦う意志を見せていた艦長も、その決意を根元から折られてしまった。
「なんで……」
それは、遂に詳細が視認出来るほどまで巡回船に接近した。
体表は空色の鱗で覆われ、その瞳は深い藍色。背中の羽根が起こす風は、突風となって巡回船を揺らし、その四本の足は丸太程の太さだ。
それは、細長いその顎を、耳まで裂けるのではないかと思われる程まで開く。
「飛空竜がここにいるんだァアアッ!!」
それ──飛空竜の顎から放たれた火炎球が巡回船に直撃し、巡回船は瞬く間に海の藻屑となってしまった……。
大会二日目の終了時刻と、時を同じくして──
***********
一隻の巡回船と連絡が取れないという報告をクリスティアの総裁が受けたのは、大会三日目の朝だった。
先日の試合に興奮し、今日の試合も楽しみにしていた総裁だったが、冷や水をかけられたように冷静になった。
「なに……? それは本当か?」
「はい……。間違いありません……」
報告を伝えに来た部下と深刻な表情で話し合っている総裁に、一人の老人が近付いた。
「どうかしたのかの?」
中央ギルド連合のゲイル・トーラスである。老人特有のゆったりした口調で、人に警戒心を抱かせない。
「いえ、別になんでもありません」
とは言うが、なにかあったのは誰の目から見ても明らかだ。
「話してくれれば、儂らも何かの力にはなれるかと思うんじゃが……」
ゲイルの言葉に、総裁は熟考し始めた。彼の部下も、黙ってその様子を見ている。
暫くして、総裁はこの報告を伝えることを決心した。
「実は──」
総裁は、自身が報告された全てを、ゲイルにそのまま教えた。
「ふむ……、それは不審じゃのう」
「ええ……」
ゲイルは、その白い顎髭を撫でながら思案する。
「ですが、何かの機械トラブルかもしれません。あまり気にせずにいてください。とにかく最大の懸案は、このギルド大会が、無事に終了することですから」
総裁の言葉に、ゲイルは柔らかな笑みを浮かべた。
「それもそうじゃな。今日は最終日。無事に終わってくれると良いがな……」
昨日の第四試合は、結局波乱もなしに、順当にセシルが駒を進めた。
よって、初日からセシル本人が言っていた、シャイナとの試合が可能となった。
大会三日目、つまり最終日の準々決勝は、どの試合から行うかをくじ引きで決定する。その結果、このような順番となった。
第一試合
No.4
『魔弾の射手』
シャイナ・フォルク
vs
No.11
『無限の檻』
セシル・フローラム
第二試合
No.5
『破城拳』
スターツ・ゴルド
vs
No.18
『重量戦車』
リゼルグ・バージェスト
第三試合
No.3
『機動艦隊』
ヴァドレッド・フラム
vs
No.15
『至高の剣装』
カルロス・シェイパー
つまり、いきなり目的の試合が行われるということだ。
「頑張ってね、セシルさん」
「頑張って下さい」
「……うん」
カイルとフィオナの激励に、頷いて応えるセシル。
「頑張ってね」
「頑張って下さい、セシルさん」
「……うん。敗けないよ」
皆がセシルに頑張れを送っている。因みにシャイナは既に別れており、ここにはいない。
「まあ、シャイナさんには敵わないだろうけど、精々頑張んなさい」
「……素直じゃない」
「なにをー!」
エルヴィネーゼは、一日休んですっかり元気になっていた。昨日の敗戦を引き摺っている様子もなく、気持ちの良い笑顔を振り撒いている。
「……クラウド」
「ァ? なんだ?」
セシルは最後に、一言も発していないクラウドに向き直った。
「……私が勝ったら結婚して」
「………………」
呆れてものも言えないクラウド。エルヴィネーゼは目を細くし、学生三人はストレートな発言に顔を赤く染める。リンは目を丸くしてクラウドを見る。
「……ダメ?」
何も答えないクラウドに、セシルは残念そうな雰囲気を醸し出す。
「…………否、別に良いが」
「……え?」
クラウドの言葉に、きょとんとするセシル。他の皆も驚愕の表情でクラウドを見る。
「嗚呼、分かった。シャイナさんに勝てたら、考えてやるよ」
「………………」
まさかのクラウドの了承に、呆然となるセシル。予想だにしていなかったのだろう。
「……本当に?」
「嗚呼」
「……ッ!」
確認にも頷いたクラウド。珍しく表情を崩すセシルは、拳をギュッと握った。
「……絶対に勝つ」
そして、フィールドのサイドへと歩いていった。
「……正気?」
セシルが行ってからクラウドに詰問したのは、エルヴィネーゼだった。どこか不機嫌そうな様子だ。
「嗚呼、勿論」
「ホントにセシルが勝っちゃったらどうするのよ?」
「……それは、ない」
クラウドは、エルヴィネーゼの不安をバッサリ切り捨てた。
「まだ、アイツの実力ではシャイナさんには敵わない」
「……だと良いけど」
エルヴィネーゼがそう呟いた直後に、実況の音声が入った。
《レディースエェンドジェントルメェエエン! 遂に大会も最終日ッ! テメェラ、しっかりと燃え尽きろよッ!!》
ウォオオオオ!
観客のボルテージはいきなり最高潮。当然と言えば、当然だが。
「始まったな……」
「……シャイナさんに頑張ってもらうか」
クラウドとエルヴィネーゼは、大人しく席に座った。
《第一試合! 東側、ローレンシア大陸からの出場! No.11『無限の檻』セシル・フローラムゥウウウ!》
呼ばれたセシルは、無言のままフィールドに歩いていく。ただ、その背中からは、今までの試合では見られなかった“ヤル気”が、まるでオーラのように立ち込めている。
そして、もう一つ、今までとは違った様相をしている。
「左手に……鎖?」
そう。セシルは左腕に鎖を巻き付けていたのだ。
「〈因果繋ぐ永遠の鎖〉……! マジで本気じゃない……」
「メビ……?」
エルヴィネーゼの呟きに、ソラリスが首を傾げた。
「セシルの固有兵装よ」
「あれがですか!? ただの鎖ですよね?」
カイルは身を乗り出しセシルの鎖をよく見ようとする。
「ベリアルが造った武器だ……。ただの鎖なはずがない」
「………………」
クラウドの断言に、言葉を失うカイル、フィオナ、リンの三人。
だが、そこに一人だけ混じっていない人物がいた。
「あ、あのぉ〜……」
その人物は、何やら固い雰囲気の中、おずおずと手を挙げて発言する。
「固有兵装って……なんですか?」
ソラリスだった。一人だけ皆の空気についていけず、おどおどした様子だ。
「……そう言えば固有兵装の説明したとき、ソラリスはいなかったわね」
ああ、と思い出すエルヴィネーゼに、周りもそう言えばと同じく納得。
「じゃあ、説明してあげな──」
ワァアアアアア!!
「──な、なに……!?」
エルヴィネーゼが親切に教えようとしたが、観客の歓声に声が掻き消されてしまった。
「シャイナさんのご登場だ……」
クラウドの視線の先で、シャイナが堂々と登場してきた。
《そして、待たせたな……。遂に一桁の登場だッ! ローレンシア大陸からの出場、No.4『魔弾の射手』シャイナ・フォルクゥウウウ!!》
ワァアアアアアッ!!
圧倒的な声援を受け、シャイナはフィールドに向かいながら観客に笑顔で手を振っている。左右の腰には、銃身が異様に長い拳銃を二挺、ホルスターに入れて吊っている。
「……相変わらず、ムカつく」
「突然なによ……?」
中央についた途端に発せられた言葉に、シャイナは目を丸くした。
「……別に。それより──」
「?」
セシルは、キッとシャイナを睨む。その瞳には、決意の炎がメラメラと燃えている。
「……私の幸せのために、貴女には踏み台になってもらう」
「………………」
セシルの宣言に、シャイナは(笑顔のまま)表情を引き締めた。
「何があったかは知らないけど、あんまりヤル気の炎を燃やしすぎると、自分の氷が溶けちゃうわよ?」
そして、不敵な笑みを浮かべるシャイナ。いつも笑みを浮かべているはずだが、今の笑みはどこか威圧感を感じさせる表情だ。
「……ならば、私はその炎も糧とするだけ」
「無理ね。氷と炎は相性最悪。二足の鞋で空回りしちゃうわよ」
「……やってみなくちゃ分からない」
「やらなくても分かるわ」
凄まじい舌戦。この挑発合戦を観客が聞くことが出来たなら、恐怖で背筋が凍るだろう。
「……試合の後にも、その鬱陶しい笑顔を浮かべられていれば良いけど」
「そのままお返しするわ。その無表情が、涙でぐちゃぐちゃになってないことを祈るわ」
「………………」
「………………」
暫く、無言で睨み合う。そして、不意に、同時に右手を動かした。
ガシッ
「まあ、お互い悔いの残らないよう……」
「……正々堂々、とは言わないけど……」
「健闘しましょう」
「……ええ」
ガッチリ繋がった右手と、この言葉。互いに、無駄な憎しみは持っていないようだ。
「それじゃあ」
「……うん」
握手を解き、共に自分のサイドへとはけていく。
《なにやら剣呑な雰囲気っぽかったが、まあ関係ネェ! そろそろ試合開始と行きますかッ!》
ビーッ!
実況の言葉通り、最初のブザーが鳴った。
二人の戦姫が、フィールドに足を踏み入れた──。
準々決勝第一試合、試合開始。