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傭兵稼業の裏事情  作者: シンカー
第二章
36/46

第三十六夜 四回戦、開始

風邪が長引いてます、シンカーです。


やっとこさ四回戦が始まります。

なんかもう、グダグダになってきたような気もしますが、気のせいだと認識して頑張っていきたいと思います。


それでは、第三十六夜です。

どうぞ。


~四回戦の組み合わせ~


〈第一試合〉

No.15

至高の剣装ソードダンス

カルロス・シェイパー


VS


No.17

吸血姫ビフォーアフター

エルヴィネーゼ・マクスウェル




〈第二試合〉

No.12

雷電ピール

アクセル・プライム


VS


No.77

暗殺者アサシン

クラウド・エイト




〈第三試合〉

No.18

重量戦車マスファイア

リゼルグ・バージェスト


VS


No.19

二重身体サーヴァント

メアリー・アストレス




〈第四試合〉

No.21

ローラ・アルザス


VS


No.11

無限の檻コキュートス

セシル・フローラム



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




「こうやって見てみると、No.21の人が一番弱そうに見えるのに、ランクから言えばクラウド先生が圧倒的に低いんだよなぁ……」

 四回戦進出者が映されている画面を見ながら、カイルは誰に言うともなしに呟いた。

「確かに……。実況の人が言ってたけど、先生は本当に異端児アウトローなんだね」

 隣にいたフィオナも、同じく見ながら同意する。

 二人は今、クラウド達とは別行動していた。

 四回戦が始まる前のお昼休みに、エルヴィネーゼからお昼のお誘いがあったが、断ったのだ。その時は理由を明確に言わなかったが、二人とも四回戦の重要さを識っていたので、部外者は立ち去ろうと思っていたのだ。

 そのため、集合時間を決めてこうして二人でいるというわけだ。

「んで、第一試合の勝者が明日の初戦でNo.3と……」

「第三試合の勝者がNo.5と、そして第四試合の勝者がNo.4のシャイナさんと闘うわけか……」

 二人は既に昼食を終え、集合時間には少しばかり早いが、もう戻ってきていた。当然クラウド達はまだ帰ってきておらず、待ちぼうけを喰っている。

「まあ、セシルさんの四回戦突破はある程度間違いないと見て……」

「気になるのは、第一試合と第三試合ね。どっちもそこまでランクに差はないから、勝敗がよく分かんないわ」

「エルヴィネーゼさんには是非とも勝ってほしいけど、シャイナさんの話だと、ランクの一つの違いが、実力では物凄い差らしいし」

「二つ名にも当てはまるのかしら、その法則?」

「二つ名にこそ、当てはまりそうだけど……」

 カイルは腕を組んでうーん、と唸る。

「正直、さっぱりだ」

「ふふ、確かにね」

 軽く微笑んでから、フィオナは何となく周囲を見渡した。集合時間にはまだあるので、クラウド達の姿形は見当たらない。

 それに気付いたカイルが、フィオナに尋ねる。

「どうした?」

「ん? んーん、別に」

 フィオナは首を振って、視線をカイルに戻した。

「それにしても、あ〜あ……」

 突然、カイルが嘆きだしたので、フィオナは目を見開いた。

「どうしたの、急に?」

「……この溜め息には二つの意味が含まれてる。どっちから聴く?」

 頭は項垂れたまま、視線だけフィオナに向ける。

「何と何があるの?」

「僕のことと、先生のこと」

「んじゃあ、先生のことから」

 即決だった。悩むそぶりすらなかった。

 ちょっと悲しそうな目をしながら、カイルは頭を上げた。

「いやな、先生は勿体ないなって……」

「勿体ない?」

「ああ。先生は、シャイナさんの言ってた理屈が通じないわけじゃん?」

 訊かれたフィオナは首を縦に振る。

「そうだね。シャイナさんも、先生は例外だ、みたいなこと言ってたし……」

「だろ? だからNo.12にも勝てるんじゃないかって期待してたんだよ」

 そこまで聞いて、フィオナはピーンときた。

「なるほど。先生が棄権しちゃうのが嫌なんだ」

 フィオナの閃きに、カイルは少し悩む。

「んー、嫌と言うよりは……ムカつく、かな」

 その答えに、フィオナは目を僅かにピクリとさせた。それに気付かず、カイルは人差し指を立てて続ける。

「折角持っている実力を存分に発揮しないってのは、弱い者から見たら何やってんだ、って言いたくなるんだ」

「………………」

 フィオナは黙ったまま、カイルの話に耳を傾ける。

「己の実力を見せないで、適当にやってる感じ……。勿論、先生が適当にやっているとは思わないさ。だけど、やっぱり、なんかイラつくんだよね……」

 カイルは自分の左掌を見つめる。

「僕は、体格に恵まれている。自分でも、そこが自慢だ。だから、周囲も凄く期待してくれてた。養成学校を首席で卒業して、ゆくゆくは近衛兵になれたらって、夢を見ていた。でも──」

 掌を力強く握り締める。

「現実はそう甘くはなかった。首席どころか、クラス内ですら一番を取れない」

 それを聞いて、少し怯んだ様子のフィオナ。それには、カイルも気付いた。

「あ、気にしないでくれ。フィーが、物凄く努力しているのは知ってるから」

「う、うん……」

 おずおずとだが、フィオナは頷いた。

「そこで、自覚したんだ。僕は弱いって……」

「そんなこと……!」

 フィオナは反論しようとしたが、言葉が出てこなかった。何故なら、自分もカイルにとっては“実力のある者”だから。

「……ありがとう、フィー」

「あ……」

 カイルは、フィオナのその心遣いに感謝した。

「大丈夫だよ。僕は、僕の夢を諦めてはいないから。いつか、必ずフィーを抜いてやる」

 その言葉は、真っ直ぐだった。そこに弱気な部分は一切含まれていなかった。

「……やってみなさいよ、絶対に抜かれないんだから」

 対するフィオナも、不敵に笑って応えた。

「あ、それじゃあムカつくって言うのは……」

「うん。先生は僕にとっては雲の上みたいな人なんだ。その絶対的強者が、絶対的強者たらしめている実力を隠してると、なんだか弱い僕がバカにされてる気分になるんだ」

「……私も、カイルの言いたいこと、分かる」

 今度は、フィオナが拳を握り締める。

「先生が授業をしてくれた時、初め、軽く流すつもりだったらしいの……。でも、ギルドから急報が来て、だから少々・・本気を出したんだって……。その少々で、あたしは手も足も出なかった。……物凄く、悔しかった……!」

 フィオナはぶるぶると拳を振るわせ、表情を険しくしていた。カイルは、そんなフィオナを見ていた。

「ま、つまり、そういうこと。これが、一つ目の溜め息の理由」

「ふぅー……。じゃあ、もう一つのカイルの理由って?」

 息を吐いてなんとか気を落ち着かせたフィオナ。カイルはそれに気付かないふりをして、椅子と椅子の間に立て掛けてある細長い袋を叩いた。

「先生に相手してもらう暇なんてないなぁって……」

「……なんて軽い溜め息」

 思わず言ってしまったフィオナだが、彼女に悪気はない。だが、そんなこと知る由もないカイルは、当然噛みつく。

「軽いとは何だ、軽いとは!? めっちゃ重要だぞ、これ! そのためだけにわざわざ持ってきたんだからな!」

 思わぬ勢いに、つい引いてしまったフィオナ。

「そ、そんなに怒らないでよ……」

 カイルも、ハッと我に返った。

「ご、ごめん……、なんか、つい……」

 急に黙ってしまった二人。どちらも、空気が重いと感じつつも何も言えなかった。

 何か言おうにも、何を言えば良いのか。先程感情的になってしまったがために、なかなか次の言葉が見つからない。

 重苦しいその雰囲気の中、二人が待ち望んでいた一団が帰ってきた。

「ゴメーン! 待たせちゃった?」

「「ッ!!」」

 慌てて二人が振り向いてみれば、そこにはエルヴィネーゼを先頭に、クラウド、リン、シャイナが近付いてきていた。

「先生ッ!」

「エルヴィネーゼさんッ!」

 二人の思わぬ大声に、きょとんとするエルヴィネーゼ達。

「どしたの?」

「あっ、い、いえ……、なんでも、ないです、ね?」

「うぇ!? あ、は、はい! なんでもないです!」

 挙動不審な二人に、頭を傾げるエルヴィネーゼ達。

「そ、それより! エルヴィネーゼさんはそろそろ試合ですよね?」

 それに気付いたカイルが強引に話題を変えてきた。エルヴィネーゼは疑問に思いつつも、それに答えた。

「ん? うん、まあね……」

「絶対に勝ってください! 応援してますから!」

 カイルの声援に、疑問をキッパリ頭から捨て去って、エルヴィネーゼは力強く笑った。

「勿論! 敗けるつもりなんて毛頭ないわ!」

「頑張って下さいッ!」

「ええ!」

 フィオナの激励にも確りと頷く。

「エルちゃん、そろそろよ」

 そこへ、シャイナが後ろから話しかけた。

「分かりました」

 エルヴィネーゼは一つ頷いて、皆を見渡した。

「あれ? ソラリスは?」

「そう言えば、まだ来てませんね、あの子」

 フィオナも辺りを見回すが、見当たらない。

「大方、まだ昼食じゃないか?」

 カイルの推測に、エルヴィネーゼは「そうかもね」と納得する。

「んじゃ、改めて。──」

 順に、皆の顔を見ていく。そして、全員見渡してから、言い放った。


「いってきます」



***********



《サァ、四回戦の始まりだぜェエエエ! ついにここまで来たッ! ここからは全ての試合がメインイベントッ! テメェラには息つく暇すら与えないぜ!!》

 ワァアアアアアア!!

 観客のボルテージは、初めから最高潮。皆、これからの試合に期待しているのだろう。

《そんじゃあ第一試合ッ! 東側、クードルト大陸からの出場ッ! No.15『至高の剣装ソードダンス』カルロス・シェイパーァアアアアア!!》

 呼ばれたカルロスは、悠然とフィールド脇まで歩いてきた。その背中には、三回戦で使用したあの長剣、〈鎧断つ無情の剣デュランダル〉を背負っていた。

《続いて西側ッ。ローレンシア大陸からの出場ッ! No.17『吸血姫ビフォーアフター』エルヴィネーゼ・マクスウェルゥウウウウウ!!》

 対するエルヴィネーゼも、同じく落ち着いた感じで出てきた。その手首には、確りと〈血風舞う蹂躙の爪ダーインスレイブ〉が装着されている。

 両者はフィールド中央まで歩いてきて、がっちりと握手した。

「よろしく」

「こちらこそ」

 カルロスはエルヴィネーゼの〈血風舞う蹂躙の爪ダーインスレイブ〉を興味深そうに見つめる。

「面白い武器ですね。当然、固有兵装なんですよね?」

「当たり前じゃない。こんな突飛な代物、ベリアルのお爺さんしか創ってくれないって」

 爪を掌側に回転させて、カルロスに見せる。

「そうかもしれませんね。だとしたら……」

「だとしたら?」

「俺の〈鎧断つ無情の剣デュランダル〉でも簡単には真っ二つには出来ない、か……」

 カルロスは右肩の後ろから出ている柄をさすりながら呟いた。

「アンタなんかと斬り合いなんかしたくはないんだけどねぇ……。残念ながら、あたしは接近戦の方が得意なのよ」

 エルヴィネーゼは自分のポシェットを軽く叩いた。

「『吸血』ですか?」

「ええ。流石にこれ使わないと、あっさり敗けちゃうからね」

 ニシシ……と恥ずかしそうに笑うエルヴィネーゼ。

「でも……」

「ん?」

 そこで割り込んできたカルロス。

「例え『吸血』を使ったとしても、試合時間が延びるだけ・・ですよ」

「……言うじゃない」

 共に、ニヤッと不敵な笑みを浮かべる。不穏な気配が二人の周囲に漂い出した。

「悪いけど、下剋上させてもらうわ!」

「返り討ちにしてあげますよ」

 二人は、最後の決め台詞を言ってから互いに後ろに振り返る。そして、フィールドラインまで下がった。

 ビーッ!

 最初のブザーが鳴り、エルヴィネーゼとカルロスはフィールド内を駆け始めた。

 共に隠れ場所を見つけて、そこに潜む。

 そして、三十秒後……。

 ビビーッ!

 二度目のブザーが鳴った。


 四回戦第一試合が、始まった。








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