異世界魔女と弁護士
私の元を訪ねてくるのは依頼人だけではない、依頼を通して知り合った人達も来る事がある。
大抵は『協力して欲しい』とかだ。
その常連とも言うべき人物が事務所にやって来た。
「リリア、お願い! 力を貸して!」
「ノゾミ、また厄介な事を引き受けたのね……」
「だってぇ、先輩が押し付けてくるんだもん……」
「希さんは押しに弱いですもんね」
「明那ちゃんも冷たい事言わないでよぉ」
彼女の名は『幕下 希』、弁護士である。
彼女とは師匠の伝手で出会った。
本当は師匠の方に依頼をしたのだが私の方が適任だろう、という判断で私が依頼を受けた。
それ以来、彼女は何かと私を頼るようになる。
彼女は弁護士としては新米で面倒な仕事が回ってくるらしい。
……まぁ頼られるのは悪い気はしないのだけどノゾミは若干人を信じやすいというか嘘を見抜けないところがあるのでそこはどうかと思う。
「で、今回は何があったの?」
「それがですね、人探しなんですよ」
「人探し?」
「守秘義務があるから細かい事は言えないんですけどとあるお金持ちが息子さんを探しているんです」
「それって喧嘩別れしちゃった、て事ですか?」
「流石は明那ちゃん! 家を継ぐ継がないで揉めて10年前に息子さんが飛び出して行っちゃったんですよ」
「10年間も連絡は無かったの?」
「えぇ、ところが最近になってその方に病気が発覚してもう長くは無いそうなので……」
なるほど、悔いを残さない為ね。
「わかったわ、じゃあこの紙にそのお金持ちの名前と息子さんの名前を書いてもらえる?」
「え、それでわかるの?」
「家族としての縁が繋がっていれば居場所も特定出来る筈よ」
この紙は特殊な紙で魔力を流せばある程度の真実がわかる。
勿論、扱えるのは私だけ。
ノゾミはサラサラと二人の名前を書いていく。
「それじゃあ鑑定を始めるわ」
私は紙に手を当てた。