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Aの革命  作者: r_SS
第2章
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最期の一服 後編

「亮太、本当に今まで済まなかったな。いや、亮太だけじゃない。父さんも優兄さんもあいりもりりか達皆に対して申し訳ない事をしたってずっと思っていたんだ。」

 正平が寂しげな表情で呟いた。

「皆が長い間色々と大変な状況だったのに、俺と母さんだけが都合よくここから逃げ出して、挙句自分だけが恵まれた環境下で暮らしてて、例えそれが父さんと母さんが皆の幸せの為に選択した事だって分かっていても、ずっと心の中で引っかかっていたんだ。」

 正平は更に話しを続けた。

「なのにさ、皆と来たら明日の俺の誕生日パーティを盛大に祝おうって言ってくれてさ、裏切者の俺に対してどうしてここまで親切にしてくれるんだろうって。だけど本当に嬉しかったよ…。」

 時折笑顔を見せながら語った正平であったが、やはりその表情はどこか寂しげであった。


「おい、どうしたんだよ?それならあいつらの前で直接そう言えば良いだけじゃねぇか?よりによって、何でそんな事俺にだけ言って来るんだよ?」

 亮太は憮然とした態度で言った。

「ああ、そうだな。て言うかさ、母さんと俺がこの家を出て行った当時、確か亮太はまだ5歳で母親に一番甘えたい時期だったにも関わらず、無理矢理引き離された様なモノだからさ、特にお前には一番しんどい思いをさせてしまったんじゃないかって。

 だからさ、あの『事件』があって一時本当に今後どうなってしまうのかって父さんから慌てて連絡を受けた時には、せめてもの罪滅ぼしをさせてもらったんだよ。まぁだからと言ってそんな事で亮太から許してもらえるとは全然思ってなかったし、許してもらう資格なんて俺にはない事くらい十分に理解してるけどさ、俺にできる事と言えば物理的な方法で援助する他なかったんだよ。」

 今から数年前、当時地元の実業系高校に通っていた亮太が澤井あんみを巡って武藤玄とトラブルになった事が原因で退学処分を受けた件について、正平が触れた。

「ハァ?そんな事言われても今更どうもこうもねぇよ。第一テメーのせいで思い出したくもねぇ武藤のクソ野郎が又思い出しちまったじゃねぇか!!!!!」

 自身にとって最も思い出したくなかった武藤玄の厭らしい顔を鮮明に思い出した亮太は、露骨に嫌な表情を見せた。

「それに俺の事はご心配なく。テメーが東大出ようが官僚様だか何だか知らねーけど、『勝ち組様』って奴になろうが、俺には一切関係ねー事だからよ!!!!!」

 本心なのか否か分かりかねるが、亮太は立て続けに次兄の正平に対して憎まれ口を叩いた。


「ああ、疲れた。俺もう寝るわ。」

 亮太は完全に吸い切った煙草を吸い殻に入れ、そのまま正平に背を向けながら自室へ戻ろうとした時、

「亮太、今まで本当にありがとう。」

 散々実弟から憎まれ口を叩かれたにも関わらず、どういう訳か正平は自身に背を向けた亮太に向かって礼を述べたのだ。

「……………………………チッ!!!!」

 しかしながら亮太は兄の一言に対して舌打ちのみをした後、そのまま自室へと去ってしまった。時計の針は間もなく翌日0時を指そうとしていた。




 

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