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Aの革命  作者: r_SS
第3章
14/28

井田あきよの過去 後編

 間もなくして小島周造・井田あきよの2人は地元へ戻り、晴れて自分達の飲食店をオープンする事になった。

「ホラあきちゃん!!!笑顔だよ!!!今日は折角の開店記念日なんだから!!!!」

 開店日当日、2人は店前で記念撮影をした。どことなく寂れた感が否めない『被差別コミュニティ』エリア内には似つかわしくない小奇麗な飲食店が開店した事を、地元民の間であっと言う間に話題となり、店は2人の想像を遥か絶する程の大繁盛店となった。


 開店してから数か月経過した頃、それまでの疲れが祟ったのか、やたらと咳込む事が多くなるなど、周造の体調が優れない日々が続く様になった。

「周ちゃん、随分とせき込んでいるみたいだけど大丈夫?顔色も随分と悪そうだよ?店も軌道に乗ってそれなりに月日が経ったしさ、ここらで1週間ほど長期休業する?」

 体調不良気味のパートナーの事を心配したあきよが、1週間の休業を提案した。

「大丈夫だよ、あきちゃん。ちょっと疲れが出ただけだよ。こんな事くらいでお店を休んだりしたら来てくれるお客さんに申し訳ないよ。後で栄養ドリンク飲めば直ぐに回復するからさ。」

 誰の目から見ても明らかに体調が芳しくなさそうな周造であったが、少々疲労が溜まったくらいで店を休むのは勿体ないと言わんばかりな言い方で、冷蔵庫から栄養ドリンクを1本取り出して一気に飲み干した。


 ところがその日の晩、いつもの様に閉店後の片付けをしている途中で、突然周造がその場に倒れこんだのだ。

「周ちゃん、周ちゃん!!!!!ちょっと大丈夫!?????嫌だ、すごい熱じゃない!!!!!」

 すぐさま周造の元に駆け付けたあきよは咄嗟に周造の額に手を当てた所、尋常ではない高熱を発していたのだ。

「いや…、あきちゃん。そんなに大げさに騒がなくても大丈夫だよ…。ゴホゴホゴホッ!!!!」

 無理矢理大丈夫なフリを見せようとした周造であったが、この時咳き込みが酷く、意識も朦朧としていたのだ。

「どこが大丈夫なのよ!!!!!とりあえず今から救急車を呼ぶから周ちゃんは部屋で横になってて!!!」

 あきよはすぐさま寝室に布団を引き、何とかして周造を布団に寝かせた後、救急車を呼んだ。


 119番の通報後、間もなくして重度の肺炎に罹患した周造は救急車に搬送され、あきよも付き添って病院へと向かったが、ここにきて小島周造・井田あきよ達の出自が要因なのか、十分に空きベッドがあるにも関わらず、何軒もの病院が受け入れを拒否したのだ。中には『被差別コミュニティの患者を受け入れると悪評が立ってしまう』とあからさまな意思表示をする病院さえ少なくなかったのだ。

「ちょっと、一体どういう事なのよ!!!!これって明らかにうちらに対する差別じゃない!!!」

 病院側のあまりにも理不尽で非人道的な対応に我慢ができなくなったあきよは、搬送中の車内であるにも関わらず大声で叫んだ。

「奥さん落ち着いて下さい!!!!必ず受け入れ先の病院を見つけますから!!!!!!」

 救急隊員が何とかあきよの事を宥めたが、その横でもう1人の救急隊員が明らかにあきよと周造の2人に対して蔑む様な目つきで見ていたのである。その後も周造の容態が悪化の一途を辿ろうが、あきよが今の状況に対してヤキモキしようが、受け入れ先の病院が見つかる事はなかった。やがて周造の容態が急変し、心肺停止となった。最早為す術がなくなったので、再び救急車はあきよ達の地元へと引き返し、そのまま被差別コミュニティ内にある小さな病院の医師によって死亡確認がなされたのだ。


 (あの時葬式をやるお金がなかったから私ひとりで直葬で周ちゃんとお別れするはずだったのに、洋さん達が集まってくれて、盛大に旅立たせる事が出来た事が本当に救いだったよね。)

 当時いくら繁盛店だったにも関わらず初期投資に掛かった費用の返済に追われ、財産らしい財産など

全く無かった為、事実上の夫であった小島周造の葬式代もままならなかった当時、海原あいりの実父こと海原洋をはじめ、地元の人達の尽力によって盛大な葬式を行えた事が、医者に見放された挙句、肺炎で苦しんでこの世を去った小島周造にとって唯一の救いであったと、井田あきよはふと当時の事を回想したのだ。





 

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