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Aの革命  作者: r_SS
第3章
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告別式 後編

「瀬川さん、今日はお忙しい所本当にありがとうございました。」

 亡き兄の告別式を終え、海原あいりはもう1人の外部からの弔問客である瀬川健斗にお礼を言った。

「何水臭い事言ってるんだよ?こちらこそ海原さんには散々お世話になっているんだしさ、そんな君のご家族に不幸があった事を知った日には駆け付けるのが人情ってものだよ。なのにさ、お兄さんの職場関係者の人って誰も来ないんだね。随分と薄情だよ。」

 健斗がこう返した。

「別に気にしていないから大丈夫です。元々身内だけどお葬式をやる事にしたんですから。直接的な関わりがなくても、自分の為に足を運んでくれる人がいると分かっただけでも兄自身喜んでいると思います。」

 あいりは伏し目がちにこう言った。


 亡き兄こと萩田正平の告別式は家族の意向で身内のみで行った理由もあったが、それでも一般弔問客として井田あきよと瀬川健斗の2人が善意で駆け付けて来たのだ。

 一方で萩田正平の勤務先からは香典と献花が事務的に送られただけで、『被差別コミュニティとは接点を持ちたくない』と云う理由なのか、直属の上司や同僚達は1人たりとも弔問に訪れる者はいなかったのである。

「それよりも瀬川さんだって『被差別コミュニティ』に足を踏み入れるのは躊躇したんじゃないんですか?下手すりゃ仕事や家族関係にも悪影響が出るのかもしれないし?」

 あいりは健斗の身を案じた。

「ははは。何馬鹿気た事を言っているんだい?君だって知っているじゃないか。僕は海原さんの出自云々関係なく、君の文才を見込んでウチの原稿を頼む様になったんだし、何しろ僕自身が出版業界を目指した理由、海原さんだって知っているじゃないか?」

「そうだ、そう言えばそうでしたよね。瀬川さんと主人公の『瀬川丑松』と苗字が一緒で、どことなく親近感が沸くって言ってましたっけ。」

 何時だったか、健斗は自身の愛読書であり、かつ人生の座右の銘として大事にしている島崎藤村著の『破戒』の文庫本をあいりに紹介した事があったのだ。

 その文庫本は既に何度も繰り返し読み返されていたのか、非常にボロボロで、尚且つ手垢までついている様に見えていたが、それだけ健斗にとっては大事にされていたモノだとあいりは理解していたのだ。


「それじゃあそろそろ帰るね。海原さん、仕事の方はしばらく大丈夫だから無理しないでゆっくりと体を休めてね。」

 健斗はあいりを労った後、告別式を後にした。そして

(『この地』に足を踏み入れたのは何年振りだろうか?尾崎がいた頃はよく あいつの事務所に訪れていたけど…)

 ふと尾崎灯哉の事が頭をよぎったのだ。



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