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Aの革命  作者: r_SS
第3章
11/28

告別式 前編

 「海原さんさ、お兄さんの一件からまだそんなに日が経っていないのに仕事再開しちゃって大丈夫?あんまり無理しない方がいいと思うよ?」

  次兄萩田正平の衝撃的な最期から数日経過した10月上旬のとある火曜日に、完全に仕事モードへ復帰した海原あいりが例によって娯楽雑誌掲載用の原稿を瀬川健斗の元へ持参しに行った。

 「瀬川さん、お気遣いありがとうございます。でも私はもう大丈夫です。いつまでも自宅に引きこもっている訳にも行かないし、正直言うと、今こうして仕事に熱中している方が気が楽なんですよ。」

 あいりは落ち込んでいる様子を見せる事はしなかったが、どことなく情緒不安定な様子が垣間見え、そんな不安定な彼女の様子を健斗は心配げな様子で伺っていた。

 「それよりも瀬川さん、先日は兄の葬式に参列して下さって本当にありがとうございました。大したお礼はできないけど、コレ、おやつの時間にでも皆さんで召し上がって下さい。」

 あいりは健斗が実兄の告別式に参列したお礼として、菓子折りを渡した。


 萩田正平が首を吊って自ら命を絶ってから2日後に、海原一家は地元の火葬場にて家族葬を行った。

 「ねぇねぇ、正平お兄ちゃんどうして長い箱の中でおねんねしているの~?」

 一家の末娘である海原りりかが、例によって今の状況を理解できずに、棺桶の中で横たわっている正平の遺体を指差し、不思議そうに周囲に尋ねた。当然の事ではあるが、りりかが抱えているハンディキャップ上、周囲は誰も彼女に注意する事はできなかったのだ。

 「りりかちゃん、おばちゃんと一緒にあっちに行こうか?」

 喪主である実父海原洋の強い要望により、共に参列する事となった井田あきよが、りりかを控室に連れて行った。


 いよいよ荼毘に付そうとした時、火葬場の担当者が海原一家に対して心当たりがある様子を見せた。

 「おや、あんた確か倅の友達だったよな…?」

 その担当者は長兄の海原優に心当たりがある様子だった。そして優もその人物に対してすぐ様ピンと来たのだ。

 「あっ!久志のお父さんですよね!!!!まさかこんな所で再会するとは…。」

 その人物は優の幼少期からの親友であった遠田久志の父親だったのだ。しかし状況が状況故に互いに空気を読み合い、その場で必要以上に触れる事はしなかった。


 「こちらのご遺体については俺も業務上理解してるけどさ、アンタも色々と大変だな…。」

 遠田久志の父親は目の前にある遺体がどういう人物だったのか、そしてどういう死因だったのか等の情報を業務上全て知り得ており、複雑な表情を浮かべながら優に言った。

 「いえ、まさかおじさんが弟の火葬を担当するなんて、何て言ったらいいのか分からないけど、少なくとも縁がある方に担当して頂けるだけでもこっちとしては救われますよ・。」

 正平と遠田氏との間に直接的な接点はなかったものの、彼らの身内が親友同士であるだけでも何となく不思議な縁があると優は感じていた。

 「それじゃあ終わったら呼ぶからさ、しばらく控室で待っててな。」

 遠田氏は慰める様に優の肩を叩いた後、そのまま正平の遺体を荼毘に付した。


 (もうあの一件から随分と経つけど、あの時もおじさんの目の前で久志の遺体が火葬されたんだよな…。今頃になっておじさんの気持ちが分かるなんて皮肉だな。)

 優はその昔、幼馴染である遠田久志が若くしてこの世を去った当時、父親の嘆き悲しみ様が如何ほどだったのか、今更ながら思い出した。

 「さぁ皆、控室に行こうか。あきよちゃん1人にりりかの事を任せたりしたら大変だろうし。」

 実父海原洋がこう言うと、優・あいり・亮太、そしてあいりが仕事上接点が深い事と、数少ない『被差別コミュニティへに理解のある一般市民』として、海原一家より直々参列を求められた瀬川健斗が、無言のまま控室へと移動した。


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