幼少期 森から帰ってきた
僕はボアを括ったロープをくぐり、オーラを足と手にバランスよく纏い、前の方へと力一杯力を入れた。
「んぎぎぎぎぎ」
なかなかボアは動かない。
「んぎぎぎぎぎ」
今の時間はお昼前で明るい、それなのに僕は星が見えた。
しかし、その甲斐あってか、ゆっくりとボアを引き摺り出す。
最初の方だけ、ボアを引き摺るのにコツがあった様で、それから少ししてボアを引き摺るのに慣れた。
途中、ボア括ったロープもすっぽ抜ける事もなく、順調にボアを引き摺っていく。
森から家まで1キロぐらいだろうか、そんなに長い距離じゃない。
「アレックス、大丈夫?凄く辛そうで顔も真っ赤かよ、私が変わりましょうか?」
「良いよママ、これくらいへっちゃらだよ、最初はきつかったけどだんだん慣れて来たから」
「それなら良いけど、アレックス、また気を失わないでね」
母は僕に気を遣って言ってくれる。
森から家までの半分くらいの所まで来て、少し休憩をしてまた家まで進み、何とか僕はオーラ切れもする事なくボアを引き摺り家の庭までたどり着いた。
途中何度も母が代わろうか?と言ってくれたが断り、僕はやりきったのだ。
「アレックス、ありがとう、ボアはここに置いておいて良いから、ゆっくり休みなさい、オーラは大丈夫?」
「はぁはぁはぁ、オーラはまだ全然大丈夫だよ、僕のオーラ量が少し上がったみたいだし」
「それならよかったわ」
母は僕に激励の言葉私かけてくれた。
ボアを引き摺った跡を見ると、ボアの血がおびただしい程付いていて、本に僅かに溝になっていた。
しかし本当にボアを引き摺るのって大変だったなぁ、僕がまだ体が小さいせいもあるんだろうけど、こんな大変な事は今の母にはやってもらいたくない、とにかくやりきった。
「リタリア、アレックス、少しここで待っててね、使用人のトムを呼んでくるから、ボアを解体してもらいましょう」
そう言うと母は足早にトムを呼びに行った。
使用人のトム、最近まで全く見た事はなかったけど今庭にたまに居て、庭の手入れをしている人だ、たぶん。
「ねえリタリア、ボアって触れる?結構毛が硬いよ」
「ボアを触るくらいなら出来るわよ、どれどれ?」
僕の言葉にリタリアは、素直に答えてくれてボアを触った。
「本当だわ、結構毛が硬いわね」
「リタリア、ちょっとその手を嗅いでごらん」
するとリタリアはボアを触った手を嗅ぎ始めた。
「う、変な臭いする、触るんじゃなかったわ、イヤーー」
それはそうだろう、ボアは獣くさいのだ、だから触った手も、獣臭くなるのは当然の事である。
僕は知っていてリタリアにボアを触らせたのだ。
「アレックス、ボアの体に顔を埋めてみてくれない?」
「嫌だ、僕はそんな事したくない」
「良いからやりなさい、私が手伝ってあげるから」
「え〜ん、リタリアが僕をいじめるよ〜」
リタリアと僕がそんな事をしていたら、ちょうど母がトムらしき人物連れてやって来た。
「リタリア!!何やってるの、アレックスをいじめちゃ駄目じゃない、お姉さんでしょ」
「別にいじめていた訳じゃ無いわ、ちょっとからかっただけよ、でもアレックスごめんなさい」
「うん」
僕がタイミング良く嘘泣きをしたのが効果覿面で、母がリタリアを叱りつけた。
「リタリアお嬢ちゃん、アレックスお坊ちゃん、初めまして、私はこの家の庭を管理しているトムと言うものだよ」
「初めまして、リタリアです、今は5才です」
「初めまして、アレックスです、今は3才です、いつも庭を管理してくれてありがとうございます」
トムは律儀に挨拶をしてくれて、何故かリタリアと僕は年齢まで言った。
「私は今は55歳ぐらいだったかなぁ、それにしても立派なボアですなぁ、マチルダ様、身重なのに無茶をしなさる」
「これくらい大丈夫よ、それにここまで運んできたのは私じゃなく、アレックスだから」
「アレックスお坊ちゃんが?まさかそんな訳…」
「僕が運んだよ」
「そんなに小さいのに凄いなぁ、アレックスお坊ちゃん」
そう言うとトムはボアを軽々引き摺って行き、「今夜までにはボアの肉が出ますよ」と言い、去っていった。
そしてその夜、ボアの肉なのだろうカチカチで獣独特の匂いがして香ばしく、ちょっと満足のいく夕食になった。




