幼少期 初めての授業
10月が終わりの頃、朝の冷え込みが少しだけ厳しくなって、布団から出るのがおっくうだ。
しかし今日から、僕の家に教師である、アンブレア様が来る事になっているから、気分は上々だ。
朝食が終わり、しばらくすると部屋の扉が開き、アンブレア様が入ってきた。
「おはようございます」
「おはようございます、アンブレア様」
挨拶をしてくれたアンブレア様は、リクルートスーツの様な黒いスーツ姿だった。
僕はと言うと、ベージュの長袖のシャツに、くるぶしまである白のズボンを履いて居る。
「さあアレックス君、今日から勉強を始めるわね、別の部屋に準備をしているから行きましょう」
「はい」
アンブレア様の言葉に、僕は元気よく返事をして、後についていく事にする。
「いってらっしゃい、アレックス」
母は少し悲しそうなめをして言った。
僕が母と離れるのは、生まれてから今日が初めてなので、少し寂しいのかも知れない。
本を取りに行くにも、厨房に行くにもいつも付かず離れずだったから。
少し歩き、部屋の扉の前に着くと、扉を開き中に入る。
部屋の中には机が5つくらいあって、その机は木で作られていて引き出しもある、そして椅子も木で作られている、明治にあった様のレトロな感じの物が置いてあった。
教鞭を取るであろう先には、小さな黒板があった。
人数が少ない昭和の教室と言った感じだ。
「アレックス君、この机の引き出しの中に教科書があるから、まずは国語の教科書を取って机の上に置いてくれるかしら」
アンブレア様は机の隣りに立ち、僕は言われたまま教科書を置き席に座ると、授業が始まった。
最初は書き取りと単語を覚える事だった。
しばらく、アンブレア様は僕の手元を見ていて、僕に話しかける。
「じゃあこれでテストを行います、アレックス君はテストは初めてかな?まずはやって見ましょう」
そう言うと、アンブレア様は一枚の紙を取ってきて、僕の机の上に置いた。
その紙は簡単な単語を書き取るようなものだった。
僕はそれに答えを書き終わると、アンブレア様がテストの紙を回収して採点をする。
「アレックス君、全問正解よ、アレックス君には簡単すぎたかしら、まだ時間があるから今度は算数の教科書をだしてみて」
「はい」
アンブレア様は少し困った様な感じで僕に言い、それに僕は何食わぬ顔で返事をした。
そして今度は算数の教科書を机から取り開いてみる。
文字の形は違うけれど、意味としては、プラス,マイナス、掛ける、割るの4足演算と同じ物だと言う事がすぐにわかり、僕はアンブレア様にちょっと言ってみる事にした。
「アンブレア様、テストをお願いします」
「え〜〜、もしかして算数も出来るのかしら、わかったわ、じゃあ今度はこれをやって見て」
そうしてアンブレア様は机の前に紙を置き、僕はテストをやる。
しばらくして書き終わり、アンブレア様がテストの採点を終えると、僕の机の上に採点済みの紙を置く。
「アレックス君、これも全問正解よ、これで授業を終わりにしましょう」
アンブレア様は少し急かす様にそう言って、僕と一緒に教室から出て部屋に戻って行く。
部屋に入ると母とリタリアが居て、母と何やら話しをしている様だった。
「アンブレア様、どうでしたか、アレックスの様子は」
母がアンブレア様に尋ねた。
「カーマインから読み書きは出来ると聞いてはいたけど、勉強も教えていたんですか?今日は国語だけにしようと思っていたのですけれど、テストしたところ満点で時間もあったので算数まで勉強しましたわ」
すると今度は少し考えてアンブレア様に言った。
「そうだったのですね、アレックスは良くカーマインの書斎から本を持って来て読んでましたけど、その本は内容が難しくて、参考になる様なものは無かったですわ、もしかしたらカーマインが合間でアレックスに勉強を教えていたのかも知れませんわ」
「私、実はもっと時間が掛かるかも知れないと思って居たから、授業内容を大幅に変更しなくてはいけないから、ちょっと困ったぐらいですわ」
「そうだったのですね、何か申し訳無いですわ」
アンブレア様が困った様にそう言うと、母がそう答えた。
「ではアレックス君、次の授業でまた会いましょうね、ではマチルダさん、私は今日はこれで帰りますわ」
「アンブレア様、また今度」
「アンブレア様、今日はありがとうございました」
アンブレア様はそう言って軽く会釈をして帰って行った。




