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2 運命に引き寄せられた2人は目を合わせた

 四葉道長よつばみちながは異世界転生した。


 そして彼の魂は、騎士アーサーの魂と合体した。


 ‥‥‥‥‥‥


 食事をしながら、騎士アーサーはアルフレッドに聞いた。


「今日、何か予定はあるのですか? 」


「はい。午後から、王宮で開かれる会議に御出席の予定です」


「会議、ですか。ごめんなさい。議題を忘れてしまいました。どんなことが話し合われるのですか? 」


「王族と貴族が集まり、平民の反乱への対応について対応を協議するのです」


「反乱はもう大規模になっているのですか」


「いえ、まだ小規模な反乱が散発しているだけです」


(そうだ。確か物語では、この段階の会議ではなぜか、何も対応しないという結論になったんだ。そのおかげで最後には、平民の反乱が全国土・全国民に広がり、国が滅ぶ原因になってしまった)




 午後になった。


 王宮の謁見の間には、王族と貴族が集まっていた。


 ルフト王国のウィリアム王が宣言した。


「平民による反乱行為について意見を申すがよい。我が国の各地域でちらほら発生しているらしい。な――に、大したことはない。我が忠実なる国軍がハエたたきのように鎮圧してくれるわ」


 ウィリアム王の玉座の隣には、アイリス王女の席があった。


 王女の髪は西洋の世界ではめずらしい純粋な黒色、青く吸い込まれそうな瞳をしていた。


 騎士アーサーはついつい、王女の方を見つめてしまった。


 会議は進行していた。


 ずっと王女は会議の内容を黙って聞き続けていたが眉をひそめ、顔をしかめていた。


「王女様は国王の意見に反対みたいだ」


 アーサーは心の中でつぶやいた。


 


 ある貴族が手を挙げた。


 国王が指差し、発言を許した。


 それは貴族の中の最上位、ロレーヌ公爵だった


 公爵は言った。


「国王陛下のおおせのとおりでございます。たかが平民、陛下をお支えして我々が行っている政治に反乱を起すなんて無礼千万です。何も対応しなくて大丈夫です。すぐに、不満分子は消滅するでしょう」




 謁見の間にいたほとんどの王族と貴族が、このまま会議が終わることを望んでいた。


 何も対応しなくても、彼らの今の身分と贅沢な暮らしが、そのまま平穏に続くと考えていた。


 ところが、アイリス王女だけが、このままでは終わらせてはならないと考えていた。


 がまんできず、王女は自分の席から立ち上がり、かなり強い口調で話しかけた。


 彼女は、勇気を振り絞っていた。


「私は平民達の反乱に対し、対話が必要だと思います。何もしないということには反対です。お父様のお言葉ではありますが、いかに鎮圧のためとはいえ、国軍が武力を使い平民達を鎮圧することに反対です」


 国王はちらっと王女の方を見たが、何も言えないようだった。


 代わりにロレーヌ公爵が話し始めた。


「王女様、ここでそのお言葉は大変困ります。折角、国王陛下の意に従うことをみなさんが決めようとしていたのに。それに、私の2人の息子も国王陛下をお助けし政治を行っています」


 その後、公爵は2人の息子に合図した前の方に呼んだ。


「フランソワーズ、ニコルは、内務大臣、外務大臣。それぞれが大変難しい職務でございます。親からみても、しっかり政治を動かしています。平民の批判なんか無視すれば良いのです」


「でも、ここにいらっしゃる皆様は平民の生活の実情など、全く知らないじゃないですか、それで国の政治を動かしてよいとは、絶対に思いません」


 公爵は皮肉を込めて話し始めた。


「王女様は王族にあるまじく、平民との対話を何回もされています。だから、です。王女様が平民の批判を聞いたのに、なぜ対応しないかと平民が増長するのです」


(国王の無策は悪役王女のせいと言い触らしているけどな)


 自分が言い終えた後、公爵は謁見の間にいた王族や貴族を恐い顔で見渡した。


 無言の力で同意を求めたのだった。


 すると、最初は公爵の2人の息子、フランソワーズとニコルが拍手を始めた。


 さらに、その拍手に同調するように、最後は満場一致の大きな拍手のうずとなった。


 本来は優しいアイリス王女はその様子に気おくれしたのか、泣き出すのを必死にこらえていた。




 その時、謁見の間の中に(りん)としたよく通る声が響き渡った。


「アイリス王女様。私はあなたに心より賛同します。あなたのお考えはすばらしい!! 」


 声の主は集団の後方に控えていたが、やがて前方に向かって歩き始めた。


 背が高くやせて肩幅はないが筋肉質、くせ毛、優しい目が大きかった。


 騎士アーサーだった。


 彼は最前列に着くと一旦、アイリス王女の前にひざまずき、再び立ち上がった。


 回れ右をして、出席者全員に呼び掛けるかのように話し始めた。


「私達、王族や貴族は生まれながらに偉いわけではありません。平民のみなさんのために働き、平民のみなさんが許していただいているから、偉い地位に留まっていることができるのです」


 それは、これまでの騎士アーサーだったら、とても言わないことだっただろう。


 聞いた人の心の奥底に届くかのような誠実な話し方だった。


 急変した彼を見て、王族や貴族達はびっくりした。


 ただ、世界最強の騎士としての名声が、その発言に重みをましていた。


 やがて、彼の発言に対しても、閲覧の間にいる多くの人々から拍手が起きた。




 拍手の中、騎士アーサーはウィリアム国王とアイリス王女の前にひざますき嘆願たんがんした。


「国王陛下、あなたの忠実なる臣下アーサーからの切なるお願いでございます。今、各地で起きている反乱軍との対話役に、私を御指名ください」


 それにはアイリス王女が驚き、質問した。


「騎士カイロス。あなたのような武人には、全く畑違いの重い役回りですが、お願いできるのですか」


「はい王女様。私に全てお任せください」


 そう言った後、彼と彼女の目が合った。


 即座に王女は感じた。


 胸が1回、大きく鼓動した


(この方は、運命の人!!!! )


 彼は心の中で伝えた。


(もう大丈夫です。あなたを、ルフト王国を亡国させた悪役王女には絶対にしません)





 


 





 



お読みいただき心より感謝申しわげます。

皆様の休日を少しでも充実できれば、とても、うれしいです。


もしお気に召しましたら、ブックマーク、重ねて御評価いただけると作者の大変な励みになります。

よろしくお願い致します。





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