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1 始まりは‥‥

皆様の休日を少しでも充実できれば、とても、うれしいです。

 始まりは、ごく普通のありふれた放課後、高校の図書室――


 1人の男子高校生が毎日、少し変な行動をしていた。


 彼は四葉道長(よつばみちなが)


 閲覧机に百科事典の一冊を広げ紹介されている物語を読み、いつもと変らないページを見つめていた。


 彼はずっとひたすら、あこがれるような目つきで見つめていた。


 そこには、西洋風の美しい女性が描かれていた。


 しばらくすると、ひとり言を言った。


「なんで『悪役王女』なのだろう! かわいそう! それに、なんでこの騎士は王女様を助けてあげないのかな! 世界最強なのに! 」


 その間、彼は全く気が付かなかったが、実は図書室の中で彼はとても注目されていた。


 まだ、図書室には数人の生徒が残っていたのだ。


 少し遠い机に座っていた複数の女子生徒達が彼を見て、気づかれないように笑っていた。


 やがて彼はページを元に戻し、西洋風の美しい女性の挿絵(さしえ)をまた、見つめ始めた。




 とても静かに見とれていた彼だったが、ふいに背中を叩かれた。


「道長、この頃いつも同じだな。その絵・きれいな女性をじっと見ている。ただ、たいがいにしとけ。お前はいつも注目されているし、もしかしたら変態だと思われるかもしれないから」


「うん、そうかな、そんなこと思のかなあ‥‥ 」


「それは、ファンタジー小説の主人公の挿絵なのかい」


「そうさ。『悪役王女の末路』という北欧で有名な物語、ファンタジーさ」


「末路か―― 最後はどうなるんだ」


「ネタバレになるし、それに、僕はこの亡国させた悪役王女と言われたこの人の悲惨な運命が信じられない。だから言いたくないんだ」


「お前はほんとうに、その王女様に心を奪われてしまったんだなあ。イケメン。県下一の進学校で断トツ、優秀な頭脳、最難関大学が全てA判定。だけど不思議ちゃんな所が大ギャップ」


 彼の親友、鈴木ふみおはそう言うと、首を振りながら図書室を出て行った。




 彼が見ていた百科事典のページは、北欧で有名な伝説の説明がなされていた。


 また、彼はページをめくった。


 すると伝説の最後のシーンが挿絵となっていた。


「ひどいな!! 」


 悪役王女アイリスが命を落す場面。


 彼女の国ルフト王国は、滅亡の時を迎えようとしていた。


 魔界の大侵攻を受けて、王宮は魔族に蹂躙(じゅうりん)されていた。


「かわいそう! アイリス王女は決して悪役王女ではない。彼女の敵が、嘘のうわさを広めたんだ。1人だけでも彼女を信じ、特にあの騎士! 助けてあげれば違った結末になったのに―― 」


 彼はそう言って立ち上がると、百科事典を綴じた。


 勢いよく立ち上がったので、大きな音が出て、図書室にいた生徒達の注目を浴びた。


 背が高くやせて肩幅はないが筋肉質、くせ毛、優しい目が大きかった。




 同じように図書室に座っていた女子生徒のグループの中でささやかれた。


「いつもの通りね。彼はもういなくなるわよ。りんねは彼とまだ話したことが無いのなら、今日は声をかけたら」


「うん‥‥‥‥ 」




 四葉道長は百科事典を元の場所に戻し、出口に向けて歩き始めた。


 そして、出口の扉を開けた。


 すると――


 不思議なことに出口の外の廊下は見えず、完全な暗闇に包まれていた。


 その時のことだった。


 四葉道長の心に、誰かが話しかけてきた。


「恐くないわ。そこからジャンプして―― アイリス王女を助けて」


 不思議なことにそのとおり、彼は恐怖を少しも感じなかった。


「アイリス王女様に会えるのですか? 」


「はい」


 彼は即座に決断して図書室から暗闇にジャンプした。




 四葉道長が図書室から出て行った後、座っていた女子生徒のグループも立ち上がった。


 同じように出て行こうとしたが、その内の1人が言った。


 (むらさき)りんねだった。


「ねえ。少し待って。確認したいの」


 そう言うと、彼女は本棚の中に入って行って、1冊の本を持ってきた。


 それは百科事典の1冊。


 さきほど、四葉道長が返したものだった。


「りんね。それは四葉君がさっきまで―― 」


「そうよ」


「百科事典って、こんなに何冊も続いているのに、よくそれがわかったわね」


「だって、わかるわ。なんとなくだけど」


 そう言うと、(むらさき)りんねは、その1冊の百科事典を閲覧机の上に置いた。


 そして、すぐにあるページを開いた。


「りんね。このページは? 」


「当然、さっきまで四葉君が見ていたページよ」


「えっ、えっ それも、なんとなくわかるの? 」


 質問に彼女はうなずいて返事をした。


 そのページを開いた時、彼女はたいへん驚き、とまどった顔をした。


 その表情を見て、彼女の友達が横からのぞき見した。


「え――――っ!!!! 」


 友達も驚きの声を上げた。


 髪は西洋の世界ではめずらしい純粋な黒色、青く吸い込まれそうな瞳。


 大変な美女。


「そっくり!!!! 瞳の色以外は、りんねと瓜二つじゃん」


「これは、偶然にしては恐い。でも私に勇気をくれたわ」


「たぶん、四葉君もりんねを見たら驚くわ。すぐに、つきあい始めたりして」


「ううん。彼は外面だけに捕らわれない人だから、私の内面も好きになってくれれば良いのに」


「大丈夫、大丈夫。あなたは美人にはめずらしく、内面もとても素敵よ。すぐに四葉君をとりこにするわ」


「でも、今彼は、この挿絵の王女様。このアイリス王女に恋しているのね。強力なライバルだわ」


 そう言った後、彼女はページに書かれている説明文を読み始めた。


「‥‥‥‥悪役王女?? なんで???? 」




 ‥‥‥‥‥‥‥‥




 図書室の出口から暗闇に向かってジャンプした後。


 四葉道長(よつばみちなが)は目を開けた。


 彼の目の前には、見たことのない光景が広がった。


 石で作られた建物の中、彼は木で作られた机に座っていた。


 机の上には陶芸で作られた皿、皿の上には大きな肉の塊があった。


「アーサー様。本日の夕食のメインは鳥肉でございます」


「アーサー?? 」

(あっ!! もしかしたら異世界転生したんだ)


「私の名前はアーサー? 」

(『私』なんて、いつもの癖なんだ)


「はい。あなたはこの国を守る世界最強の騎士アーサー様でございます」


「失礼ですが。あなたは? 」


「今日はおかしいですね。幼い頃からお仕えしている私の名前をお忘れになるとは。執事のアルフレッドでございます」


「アルフレッド。冗談です、ごめんなさい。いつもありがとう」


 





 


 









お読みいただき心より感謝申しわげます。

皆様の休日を少しでも充実できれば、とても、うれしいです。


もしお気に召しましたら、ブックマーク、重ねて御評価いただけると作者の大変な励みになります。

よろしくお願い致します。





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