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Brave and Partners Online  作者: 岩越透香
番外編 ユキ
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再会

「リベンジマッチだ。強くなったところを見せつけてやろうぜ」

ユキたちは頷く。ユキたちの様子を確認したリックはユキに強化STRをかけてからボスエリアに足を踏み入れる。


 ボスは前回と同じように木の影から出てきた。そこをユキが強攻撃の突進で攻撃する。


「効いたよな、狼野郎! サヨ、強化STR。爪に気をつけて攻撃してくれ」

ユキの攻撃で怯んだ隙にリックが拘束する。拘束はすぐに解かれてしまったけれど、サヨのおかげもあり、強攻撃のクールタイムは明けた。


 二度目の強攻撃。ボスは苦しそうな声をあげ、ユキを睨みつける。効いているけれど、次も同じようにいくかは分からない。


「ユキ、強攻撃のCTが終わったら突進と強攻撃で攻撃。サヨ、ユキがスキルで攻撃できるよう、気を引いてくれ。強化AGI、付与麻痺術」

リックはクールタイムとスキルの効果時間を考えて戦ってくれていて、戦いやすい。


 今度もうまく攻撃できた。とはいえ、相手もただ攻撃されるだけではなく、痺れながらも突進後のユキを引き裂こうとする。


「させるか! 拘束」

すかさずリックが拘束で動きを止める。さすがリック。コンビネーションはバッチリだ。


 強化魔法を使われつつ、突進も使ってちまちま削っていると、ボスが吠え、仲間を呼んだ。


「サヨ、子分を狙ってくれ! ユキはサヨが倒し終わるまで耐えてくれ! 強化VIT」

杖を振り回してワイルドウルフを追い払おうとするリックを横目にボスと向き合う。サヨが増えたワイルドウルフを倒すまでユキだけで耐えないと。


 爪の攻撃を避け、ボスの足の間を滑り込み、お腹を蹴り上げる。ボスは大きいから、グッと近づけば逆に攻撃しにくいみたい。


 調子に乗ってボスの下から攻撃していたらボスはユキを潰すために倒れ、ユキは間一髪で抜け出す。近づきすぎてもそれはそれで危ないということね……。



「だいぶ強くなったでしょ〜。えへん」

「リックの援護ありでしょ。まだまだね」

「厳し〜。援護するよっと」

子分を倒し終えたサヨが合流する。サヨは空中から攻撃を仕掛けてボスを翻弄する。一人で相手をするのは大変だったから助かるけど……弱気なところに目を瞑ればサヨはユキよりも強いのが少しムカつく。ユキはもっと活躍したいのに。


 ボスは一際大きく吠え、目を赤く光らせた。暴走状態か。攻撃のキレが増している……! 翻弄されつつも、なんとか耐え、攻撃を続ける。


 ボスと向き合う。さて、どっちから攻撃が来る? 右か、左か。その予想は外れた。ボスはユキに向かって大きく口を開いた。逃げようともがいてみるけれど、まるでボスの口の中に吸い込まれるようだ。避けられない……!


「最後だ! 頑張ってくれ! 強化――」

リックの言葉が聞こえなくなった。


 丸呑みだったのが幸いし、即死することはなかったけれど、胃の中でじわじわと体力を削られていく。特に痛いとかはないけれど、嫌な感覚だ。


 ……リック? リックがピンチなの?


 守らないと。その思いでリックを庇う。直後、襲ってくる鋭い痛み。狼の爪に引き裂かれたのか。てことは体の外に出れたのか。


 まだギリギリ体力が残っていたためリックに回復してもらい、ボスが倒れる様を見る。ユキを丸呑みにしたのは悪あがきだったのかサヨの一撃であっさりと決着した。


「やった! ありがとう、ユキ。サヨ」

喜ぶ彼を見て、本当に討伐できたのだと実感する。ゲーム初日、あんなにも大きく見えたエリアボスを、誰も欠けることなく――リックを死なせることなく討伐した。


「ユキ〜! 見た? 僕の活躍!」

「見た。……ありがと」

「どういたしまして〜」

嬉しそうに飛び回るサヨを見て気が抜ける。ユキもリベンジに燃えて張り詰めていたのかも。


「少しはかっこいいところ見せられたかな?」

ユキたちはリックに答えるように頷いた。


「今日は流石にログアウトだな。疲れたし。でも良かった〜。片方だけでもボスを倒せて」

町に帰り、呟くリック。


「βテストが終わってしまう……」

「ユキ、何か言った?」

「いいえ、何でもないわ」

今日は入れずに残り二日。今日、リックとの時間には限りがあるということを改めて思い知らされた。



 エリアボスを倒してからは町の人と話したり、まだ行っていなかった東の森へ行ったりのんびりと過ごした。サヨは楽しそうにしていたけれど、ユキはどうしても楽しみきれなかった。


「また明日も探検? 楽しみ〜」

「そう、かもね」

「……? なんか変?」

最終日、何も知らずに明日を待つサヨに少しだけ嫉妬した。



 気がつくと目の前にリックがいた。けれど、ユキが知るリックとは少し違った。杖じゃなくて槍を持っているし、知らない魔物を連れている。


 その上、体に違和感がある。本来存在しているものがないような……。サヨには特にないらしく、この空間を呑気に観察している。


「ユキ、小夜!」

リックが駆け寄ってくる。


 近くにいる神官が彼を止めようとするが、彼はまっすぐユキの方へ来てユキと目を合わせた。


「会いたかった……」

「……リック」

ユキも会いたかった。久しぶりに抱きつこうと助走をつける。すると、意図せずスキルが発動したらしく、リックが蹲る。


 ユキがリックを傷つけるなんて! 慌てて駆け寄ろうとするものの、見えない壁のようなものに阻まれる。……この魔法陣、邪魔だ……。


 ユキ達を白い球体が覆い、リックがその上に手を置く。神官が何か言葉を発するとリックとユキが繋がったような感覚になる。ここに来てすぐ、違和感があったのはリックと契約をしていなかったからか。


 リック、またユキを選んでくれてありがとう。


「ユキよ。リックの一番はユキだからね!」

「底辺種族が偉そ〜にしないでもらえる?」

「は?」

「ざ〜こ♪ ざ〜こ♪ 使役のしやすさしか取り柄がな〜い♪」

でも、この性格の悪い妖精がユキが知らないリックを知っているとか許せないんですけど!

ちなみに性別は

メス→ユキ・ハヤテ

オス→サヨ・キララ

なし→イブキ

です。

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