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Brave and Partners Online  作者: 岩越透香
第五章 王都セントル
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魔の森を浄化せよ1

 誘った人のうち、一人は「先客がある」と断られたが後の二人は良い返事をしてくれた。加入してくれるのは、テイルさんとうぃーくすさん。王都に向かうときにパーティーを組んだ人たちだ。二人とも騎士の条件を満たしていたため、今の職業は騎士らしい。中途半端なステ振りの俺と違って彼らはバランス良くステータスを振っているんだろうな。


 最終的なクランメンバーは二十四人。大規模とは言えないが、そこそこの人数が集まったと思う。


 イベント当日はいくつかのパーティーに分かれて行動することになった。俺と一緒に行動する人はアオイ、Daikuさん、テイルさん、うぃーくすさん、はっぴぃさん。Daikuさんは【建築士】で、はっぴぃさんは弓使いの女性だ。


 イベント開始まで後数日。最善を尽くせるようにしよう。



「準備はOK?」

イベント開始直前、ネコさんがクランメンバーに呼びかける。


「私からは一言! 楽しもう!」

「おおー!」

「カウントダウンだ!」

誰かが言い出したそれにみんなで乗っかる。


「――ゼロ!」

開始時刻が訪れると視界が白く染まった。白い霧のようなものが晴れるとそこは鬱蒼とした森の中だった。近くに大きな機械が見える。あれが制御装置だろうか。


「行きましょう!」

アオイの声でイベントがすでに始まっていることを思いだし、パーティーメンバーに置いていかれないように走る。ステータスの関係で足が遅い俺とDaikuさんに強化魔法をかけ、最初の浄化ポイントまで強行突破する。


「前方に敵!」

「私が!」

小夜の索敵の結果を伝えると、はっぴぃさんは素早く弓を構え、見事に敵を撃ち抜いた。


「威力足りなかったかも!」

「大丈夫! 撃ち落としてくれてありがとう、後は任せろ!」

敵の残っていたHPをテイルさんうぃーくすさんが削り取っていく。良い連携だなと思いつつ、俺とDaikuさんに強化魔法をかけ直す。攻撃のために止まり、後ろに居たはずのはっぴぃさんはいつの間にか俺の前にいた。AGIの差を感じる。


「浄化装置の場所に敵! 燃えてるって!」

「やっと出番が来ましたか!」

浄化装置を置く場所には少し強い魔物がいると聞いていたからパーティーメンバー全員に強化魔法をかけ、準備を整える。


「水球! リック、あれ、魔法ですよね!」

「俺もそう思う! イブキ頼んだ!」

「こっちもお願いしますね!」

魔物が水球で怯んだ隙に俺とアオイの妖精の魔力吸収でMPを吸い尽くす。炎が消えて現れたのは膝ほどの大きさの鼠型の魔物。炎で体を大きく見せていたということか。


「これなら強斬り(バーストスラッシュ)を使うまでもない!」

「炎がなければただのデカい的だな!」

前衛二人の連携で鼠を撃破した。Daikuさんが浄化装置を設置している間、テイル、うぃーくす、はっぴぃさんが周囲を警戒する。俺も手伝おうとしたのだが、「MP回復のために瞑想していて」と言われたため、素直に従った。


「設置完了したら、リックと前衛どっちかはここに残って守ろう」

「俺が残る」

「分かった。私、アオイ、Daiku、うぃーくすは次の浄化装置の設置に向かおう。リックは設置完了したら、みんなに強化魔法を」

「設置完了」

Daikuさんの声を聞いて、範囲強化系の魔法を片っ端からかけていく。自分にも効果があるため、INTからかけていく。移動に使うAGIは最後にかけた。


「強化終わった!」

俺の報告を聞いて四人はすぐに走り出した。


「敵が来ます!」

「他の場所を確保して、敵が沸かないエリアを作り終わるまでの辛抱だな!」

「回復魔法分のMPは残っているので安心してください!」

「ははっ。お世話にならないようにはするさっ!」

小夜の索敵のおかげで不意打ちを喰らうことはないが、かなりキツい。テイルさんが上手くて、回復がほとんど必要ないのは助かっているが……。


「は、反対側からも敵!? 三体か……。ユキと俺で戦おう!」

「大丈夫か? STR少ないんだろ?」

「時間稼ぎくらいはしてみせる!」

向かってきたのは兎型の魔物。ポーンラビットとは少し違うからその進化系だろうか。悪魔石を使わなければユキもあんな風に進化したのだろうか。


 ユキは嫉妬の一撃で魔物を瞬殺した。……そんなに威力があるスキルだったか? 同族特攻があるのだろうか。よく分からないが、嬉しい誤算だな。


 俺はスキルを使って敵の攻撃を凌ぐ。STRは足りないから攻撃はなんとかなりそうだ。


「敵? ――上か!」

戦いに集中していて回避が遅れる。敵はハヤテと同じ魔物だ。俺が攻撃を喰らえば一撃で倒されてしまうだろう。


「ユキ、ありがとう!」

庇ってくれたユキにお礼を言い、回復をかける。庇うはそう何度も使える技ではない。立て直すためにユキを抱えて浄化装置の側まで戻る。


「回復するぞ、テイル」

「いや、それより強化魔法を頼む。攻撃は最大の防御ってやつだ」

「分かった」

強化魔法をかけても、押し寄せてくる魔物の勢いはとどまるところを知らない。ブレイドファルコンの羽が頬をかする。それだけでHPは半分ほど削れてしまう。瞑想をする暇が無いからMPが足りない。万事休すかという時、一筋の希望が差し込んだ。


「他の地点で浄化装置が起動した!」

「ああ、もう少しだ!」

攻撃した敵に状態異常も追加された。運がこちらに向いてきている!


「もう一方向もOKだな」

「ってことはアオイたちが起動すればここは安全だな」

もう少しと思って気が緩んでしまったのだろう。俺は後ろから来る魔物に気がつけなかった。


 攻撃されると分かったのは、敵が浄化装置まであと一歩という距離の時。間に合わない。でもここで終わらせたくない。そんな思いを胸に俺は速突きを放つ。


「キララ……!」

俺の攻撃は間に合わなかっただろう。だが、攻撃はキララの結界によって防がれていた。キララの結界があって本当に助かった……。


 アオイたちが向かった場所も無事に設置できたようで、俺たちがいる場所はセーフティーゾーンに変わった。だが、戦っていた魔物は消えないらしい。


「もう追加の沸きは無いから、一人でもなんとか捌けるだろう。リックはMPの回復をしておいてくれ」

「でも、早く向かわないと……」

「MPなしで向かってどうするんだ。それに、新しい魔物が現れないといっても、すでに現れた魔物は襲ってくる。しばらくはここにいないといけない」

「確かに。ありがとうテイル。少し冷静になった」

俺のMPが満タンになる頃には周囲の魔物はいなくなっていた。小夜に確認してもらったが、もう周囲にはいないようだ。


「ここはもう襲われる心配はいらないみたいです」

「そうか。……戦っている時みたいに楽な口調で良いぞ?」

「はい。分かりました。いや、分かった。ありがとう、そうする。じゃあ早く加勢しに行こう!」

「ああ!」

俺たちは先行していたパーティーメンバーに追いつくために走った。

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