港にて3
短いです
狙い通り、シーダーツは小夜を狙って海から飛び出してきた。が、想定していたよりも数が多い!?
「群れる魔物じゃないと聞いたんですけど!」
「普段は群れないんだがなあ。魔物も大量の餌がある所には自然と寄るんだろう」
シーダーツについて教えてくれた人が他人事のようにのんびりと言った。俺も遠い目をしたくなる気持ちを堪えて、みんなに指示を出す。
ハヤテは想定通り一匹に攻撃できた――耐久力がないのか倒し切ってくれた――が、次々と現れるシーダーツに上手く対処出来ていない。小夜は襲ってくるシーダーツを避けるのに精一杯といった感じだ。
「小夜は上空に一時退避! ハヤテは一匹ずつで良いから倒してくれ。イブキはハヤテが仕留め損なったシーダーツを狙ってくれ」
指示を出し終わり、ちらりと肩の上を見ると、ユキが「私は?」というかのように俺の顔を覗き込んできた。
「ユキは船に魔物が乗り込もうとした時に倒してくれ」
空中や水中の移動手段がないユキにシーダーツを倒せとは言えず、なんとなく曖昧な指示になってしまった。ユキは俺の肩から降りると船の中を走りながら辺りを見回した。指示通りに警戒して、すぐに倒せるようにしてくれているらしい。
俺は小夜とハヤテに強化魔法と回復魔法をかけた後で攻撃に参加する。攻撃と言っても攻撃魔法はないから、妨害魔法をかけて海に沈めたり、痺れさせて落としたりだが。
体勢を立て直した小夜も攻撃に加わってくれたことで無事に倒し切ることができた。
その後は魔物による襲撃はなく、港に帰ることができた。最初にも言っていた通り、ほとんど魔物が居ない場所を通っていたためだ。
シークガルとシーダーツの群れに遭遇したのはそのルートから外れてしまったためだという。グレッグさんは「欲張るとロクな事にならねえな」と苦笑いをしていた。
漁師さんたちと別れ、冒険者ギルドに向かう。達成報告のためだ。グレッグさんから「冒険者リックは依頼を完遂しました」と書かれた紙を貰っているため、それを受付で見せれば依頼報告になるらしい。
「確認します。……はい。問題ありません。これにて依頼達成です。貢献度の加算を致しますのでギルドカードをご提示ください」
帰ってきたギルドカードには今回の依頼の貢献度が増えていた。
「中級の依頼はかなり稼げるんですね」
「ええ。より強く、信頼できる方々が中級冒険者ですので。中級の依頼の中でも護衛系の依頼は高い方ですので、そのせいもありますね。今回は依頼者様からの評判もよかったため減点もされていませんし」
「減点されることもあるんですか?」
「はい。態度が悪い、守れなかったなど、減点要素はありますが、普通に活動していればマイナスになることはありませんよ」
普通に活動していればない、ということは態度が悪い人はマイナス貢献度にされることもあるのだろうか。真面目にやるのが一番だな。
「これからまた依頼を受けられますか?」
「いえ、今日はログアウト――帰るので」
今日はいつもとは違った場所に行って、戦えて、楽しかった! つい最近反対側の町でイベントがあったから、次の復魂祭はセア港で行われるだろう。海に慣れるためにも、気分を変えるためにも、これからは依頼を受けつつ海で戦うことにしよう。
依頼を受けて海に行ったり、それだけではユキが拗ねてしまうから森に行ってみたりしているうちに復魂祭の時期が近づいてきた。のだが、二つ問題が発生している。
一つ目はクラーケン問題。まだ神殿に被害は出ていないものの、周辺で姿が確認されているらしく、また復魂祭を狙って襲ってくるのではないかと言われている。冒険者ギルドがそれ関連でドタバタしていたから、冒険者ギルド関連でイベントが進むのかもしれない。
二つ目は祭りの準備に関する問題だ。この町では、今年は紅白で町を飾りつける――クリスマスカラーで町を染める――のだが、どうやら上手く進んでいないらしい。町の人から聞いたところ、飾りを作る職人がサボっているとのこと。……なんだそれ。この問題には生産系のプレイヤーたちが解決に関わっているみたいだ。掲示板を覗いたところ、「金策イベントだー!」と喜びの声を上げる人々がいた。
リック
種族:人間 Lv.49
職業:神官Lv.20max 【加護】
HP:50/50
MP:70/70〈+8〉
STR:20(+8)〈−2〉
VIT:12(+31)
INT:50(+22)〈+8〉
AGI:16(+5)
【スキル】
使役 槍術Lv.17 棒術Lv.5 索敵Lv.5 回復魔法Lv.5 強化魔法Lv.9 妨害魔法Lv.4 付与魔法Lv.1 毒術Lv.14 麻痺術Lv.14 料理Lv.1 解体Lv.7 鑑定Lv.4
【装備】
普通の槍 STR:+8 耐久:324
神官のコート INT:+2 VIT:+3 AGI:−1 耐久:78
シルクのシャツ VIT:+3 耐久:34
シルクのズボン VIT:+3 耐久:23
エンジニアブーツ VIT:+2 AGI:+1 耐久:139
残りポイント:25
スキルも自分のレベルも順調に上がった。棒術レベル五では強打が、回復魔法レベル五では範囲回復が手に入った。強化魔法、妨害魔法も新しい魔法が覚えられそうで楽しみだ。
職業レベルの方はレベル二十で上がらなくなってしまった。今後のレベルキャップ解放に期待するしかないな。
溜まっていたスキルポイントは足りないステータスを補うのに使った。HPに振ったのは攻撃を喰らってHPを一残して耐えた経験があったため、ある程度までは耐えられるように。MPに振ったのは一度に使える魔法の数を増やし、よりサポートするため。AGIに振ったのは戦闘スピードが速いと感じたからだ。
雪
種族:ポーンラビット Lv.26
位階:2
HP:165/165
MP:0/0
STR:24
VIT:36(+3)
INT:2
AGI:22(+5)
特性:跳躍
【スキル】
突進 庇う 強攻撃
【装備】
制帽 VIT:+2 耐久:122
ネクタイ VIT:+1 耐久:163
小夜
種族:ココウモリ Lv.26
位階:2
HP:60/60
MP:0/0
STR:36
VIT:16(+2)
INT:11
AGI:40
特性:夜行性 飛行
【スキル】
精密動作 索敵
【装備】
星飾り VIT:+2 耐久:127
息吹
種族:風の妖精 Lv.39
位階:3
HP:-/-
MP:96/96
STR:1
VIT:1
INT:40
AGI:14(+5)
特性:魔力生命体 飛行
【スキル】
魔力吸収 風の加護 風魔法
疾風
種族:ブレイドファルコン Lv.9
位階:3
HP:10/25
MP:6/6
STR:46
VIT:3(+1)
INT:3
AGI:39(+5)
特性:飛行 刃翼
【スキル】
突進 助走
【装備】
スカーフ VIT:+1 耐久:400
雲母
種族:悪魔 Lv.37
位階:1
HP:65/65
MP:62/62
STR:12
VIT:20(+1)
INT:37
AGI:4(+5)
特性:怠惰、魔なるもの
【スキル】
自動回復、結界
【装備】
蝶ネクタイ VIT:+1 耐久:467
【結界】
任意の場所に結界を作り出す。発動者に近いほど威力が上がる。
キララの装備はリンに作ってもらった。しらたまとお揃いらしい。
キララが動きたがらないのは相変わらずだが、動かなくても良いスキル――むしろ動くと効果が半減するスキル――を手に入れたため、戦闘に参加してくれるようになった。キララの結界はかなり耐久力があり、今では頼もしい存在だ。
次話からイベントが始まる――というところですが、しばらく投稿をお休みします。ごめんなさい。
投稿再開は二月中旬頃を予定しています。遅くても三月中旬には再開します。




