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Brave and Partners Online  作者: 岩越透香
第四章 第二の町
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港にて2

 次の日、最後の依頼を終わらせ、貢献度が千に達した。中級への昇格の手続きをしてもらうために受付に行く。


「規定の貢献度に達したため、中級冒険者への昇格が認められます。どうなさいますか?」

「どう、とは?」

「昇格するかどうかを選ぶことが出来ますので、するかどうかの確認です。ちなみに、中級への昇格の場合、しないことのメリットは皆無です」

「そうなんですね。もちろん昇格したいです」

「はい。しばらくお待ちください」

ステータスを見たり、アイテムを整理したりしながら処理が終わるのを待つ。


「お待たせしました。ご確認ください」

初級のものとほとんど変わりはないな。初級が中級に変わっただけか。


 これでチュートリアルは全て終了かな。チュートリアル完了まで長かったなあ。俺がギルドの依頼に消極的だったせいだけどさ。


【チュートリアル いずれかのギルドで一人前と認められよう】…clear


「ところで、上級に昇格しないメリットはあるんですか?」

「ありますよ。上級からは指名依頼が出されることがあるのですが、人に縛られたくない方は中級のままでいることもあります。が、上級になると幅広い依頼が受けられるためなり得です。あと、異界からの方はいつこちらの世界に来られるか不明なので、指名はされにくいですね。されても期限がないか長いことが多いです」

「なるほど……。でも俺が上級になれるくらいの貢献度を稼げるのは随分先の話でしょうけど」

「最近のペースなら、早いうちに昇格ラインに達しますよ。卑下なさらないでください」

といっても、中級に上がれたことだしギルドの依頼をここまで積極的にこなすことはないだろうけどな。海に出れそうな依頼を見繕ってもらい、そのうちの一つに挑戦してみることにする。


 依頼は漁船の護衛だ。魔物が出るような場所を通るつもりはないが、最近物騒になってきているということで、護衛を付けるようにしたらしい。


「よろしくな、冒険者のにーちゃん。俺は船長ってほどの者ではねえが……ここの責任者をやっているグレッグだ」

「グレッグさん、よろしくお願いします」

「依頼内容はギルドの方でも聞いていると思うが、漁船の護衛だ。もし魔物が現れたら戦ってもらうことがある。その時に出来たらで構わないが、海に魔法を撃ったり魔物を落としたりしないで欲しい。魚が逃げちまうからな」

人の良い笑みを浮かべた彼は「もちろん出来たらで構わねえ。命が一番大事だからな」と付け加えた。良い人そうで安心だ。彼の期待に精一杯応えよう。



 挨拶も済んだので俺たちは船に乗り込んで広大な海に向かって出発した――といっても近場をぐるっと回るだけらしいけど。


 漁師さん達は幅広い年齢層の人がいるが、その多くは俺の年上だ。そのためか、子供や下の兄弟への注意――例えば「船酔いに気をつけろ」や「はしゃいで海に落っこちるなよ」――のような言葉をかけられた。高校生なのに、子供扱いされてしまって悔しい。俺、海に落ちそうな程はしゃいだつもりはないんだけどな……。


 これ以上温かい目で見られるのは御免だ。仕事の邪魔をしないような位置を探してパートナーを抱えて座った。それでも仕事はもちろんする。小夜と俺の二人体制で索敵をする。


 しばらくして、船の揺れにも慣れてきた頃、小夜が敵の反応があると伝えてくれた。指し示す方角を見ると小さく鳥のようなものが見える。確かに、海だからって敵は下から来るとも限らないか。


「グレッグさん! 魔物が向こうの空にいるので撃ち落とします」

「へ? ああ、あの小さく見える奴か……。ほっといていいよ」

「でも、こっちに来てますし……」

「ああいった魔物はむしろ攻撃すると寄ってくる場合が多い。それに、撃ち落とすって言うなら魔法を使うんだろ? 手札は温存した方が良いぜ」

彼の言うことは理解出来るのだが、この調子だと俺は一度も戦わずに港に戻ることになってしまいそうだ。せっかく海に出たのだから、海洋系魔物と戦いたいと思うのはプレイヤーだからだろうか。


 なんてことを思っていると、グレッグさんの次に年上の船員が小夜が発見した鳥を指さして言った。


「船長! あれ、シークガルです!」

「何? 本当か!?」

「はい!」

シークガルという言葉にざわめく船の中で俺だけが取り残されていた。こっそり近くにいた人にシークガルについて尋ねると、宝を呼ぶ鳥と説明された。


「あれはかもめ型の魔物で、とにかく魚が多い場所を見つけるのが得意なんだ。だから、あいつらを見つけられて喜んでいるんだ」

「魔物ですよね? 危険じゃないんですか?」

「シークガル自体は大して強くないんだ。それに危険に見合ったものが手に入る」

「……また俺の出番はなさそうだ」

「護衛対象が自ら敵の方へ突っ込む状況は嫌だとは思うが、シークガル以外の魔物に襲われることもあるから、あなたは必要だと思うからそんなことはない」

静かに肩を下ろす俺に、シークガルについて教えてくれた青年が俺をフォローしてくれた。


 シークガルを発見した場所に近づいてきた。俺は槍を握りしめ、すぐに戦えるように用意した。


 シークガルは普通のかもめとほぼ同じ見た目をしていた。しかし、船が彼らに近づいた途端、「俺たちの縄張りを荒らすな」と言わんばかりに襲いかかってきた。


 船員たちは槍を取り、かもめを迎撃していく。かもめが空を飛ぶと言っても、攻撃をするために地上に降りる必要がある。そこを狙っているようだ。ハヤテのように飛行速度が速いとこの対応は難しいが、シークガルはそこまで早くないためこのやり方が可能なようだ。


「船長! 下から何かが!」

シークガルは倒し終わり、これで終わったかと思った時、聞こえてきた声。俺たちはその声がした方向に走り出す。


「何かあったんですか!?」

「おお、冒険者の! 下から魔物が接近してくると報告されてな。一応対処はしているが、倒してもらえないだろうか」

「もちろんです。これが仕事ですから」

軽く魔物についての説明を聞き、パートナーたちに指示を出す。


 魔物の名前はシーダーツ。ダーツの針のような形の魚で、動くものに襲いかかってくるらしい。光るものに向かって飛ぶ性質あるため、船を護衛する人がいない時は、じっとして光るものを遠くに投げてやり過ごしていたらしい。


 船に穴を開けることも多い害悪な魔物で、倒せるなら倒して数を減らしたいと言っていた。


 メタ推理も交えて考えると、港に近い場所には強すぎる魔物はいないはずだ。シーダーツは高い速さと威力と貫通力を持っているらしいが、それが本当なら防御力は低いはずだし、魔法も使わないだろう。


「小夜。海の上を魔物に注意しながら飛んでくれ」

小夜には申し訳ないが、囮となってもらう。小夜の首元では太陽の光を受けて装備している星飾りが光り輝いている。


 俺の作戦はこうだ。


 まず小夜が海の上を飛び回りシーダーツを空中に誘き寄せ、空中で身動き出来ない隙を狙ってハヤテが攻撃する。STRもAGIも高いハヤテなら倒し切れると思うが、もし倒しきれない場合はイブキが最後に攻撃する。


 敵の情報も十分に得られていないため、最善かどうかは分からないがこれでやるしかない。俺が考えながら小夜を見守っていると、海面が揺れた。


「ハヤテ!」

投稿遅れてすみません。

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