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Brave and Partners Online  作者: 岩越透香
第四章 第二の町
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霧の中へ2

 少し走ると視界が開けてきた。惑いの霧は鏡の神殿の外周に沿うようにあるらしい。


 事前情報の通り、霧の中にいる魔物は周辺にいる魔物と同じ種類だ。希望的観測かもしれないが、強さもあまり変わらないだろう。彼らはまだ俺の存在に気がついていないらしく、辺りは静まり返っている。それがより一層この神殿の不気味さを強調する。


 草はぼうぼうと生え、手入れが全くされていないことを視覚的にも伝えている。初期配布されていた短剣で雑草を刈ってみる。魔物が飛び出してくる……なんてこともなく普通に切れた。


 初期装備の靴はくるぶしの上辺りまでを覆う靴だ。そのため、長ズボンを履いていればくすぐったくはなさそうだ。


 足元はあんまり気にしていなかったけど、町に戻ったら靴を買うか。せっかく装備を作ってもらったんだから、靴のせいで見栄えが悪くなるのは良くないだろう。


 一人で立ち止まって考えていても仕方がない。まずはパートナーたちを外に出して、神殿の周りを歩いてみるか。


「みんな、出ておいで」

みんな、特に変わりはなさそうだ。……キララは動いてくれるだろうか。



 まず霧の外に出ようとしてみた。霧の外に行こうとするといつの間にか神殿の近くに戻された。クリアするまで出られませんということだろうか。ちなみにログアウトは問題なさそうだ。


 次に神殿の側を通ってぐるりと一周回ってみた。何度か魔物と戦闘になったが難なく倒すことが出来た。むしろ惑いの霧の外より弱くなっている気がする。確かに、強い魔物ではない。謎解きメインっぽかったから邪魔にならないように調整をされているということだろうか。


 そして、外周にはぽつりぽつりと例の欠片が落ちていた。魔物がリポップすると嫌だったから全て回収した。


 秘密の抜け道や神殿攻略のヒントになりそうなものは残念ながらなかった。俺は扉を静かに開け、神殿内へと向かった。


 ハープを持った天使のレリーフが俺を出迎えた。右と左には階段がある。ここからでは奥は見えないが、左右どちらもカーブしているため、同じ場所に行けそうだからどっちにしてもいいとは思う。


「迷路をクリアする時の右手の法則みたいなのがあった気がする」

何かの記憶を元に右に進む。俺とパートナーたちが階段を降りる音が微かに反響する。


 半周くらいしたところで広い場所に着いた。目の前にも階段が見える。入り口にあった左側の階段だろうと思いつつ、奥を覗いてみる。


 次の瞬間、俺は右を選んだことが正解だったと分かった。


「うわっ」

全長二メートルくらいのあれがいた。大きな巣を張っていた。顔? は入り口側を向いていたようで俺には気がついていないようだ。


 サッと広場に戻る。この間、わずか一秒だった。よし、あれのことは忘れよう。


 改めて地下一階を見る。階段を降りて両側には通路があっていくつか扉が並んでいる。奥にちらりと下へ降りる階段が見えたが後にして、この階の探索を先にしよう。


 最初に下った階段から右に進んで一番奥の扉に手をかけるが、ノブが回らない。鍵がかかっているようだ。この扉だけ金属製で明らかに重要そうだから、後で鍵を手に入れて戻ってくる仕組みなのかもしれないな。


 気を取り直してその隣の部屋を……開かねえ。その隣まで行くと開いた。が、見なかったことにした。小夜が「入りなよ」と呆れたような目で見てきたような気がした。重要アイテムが隠されている可能性もある。俺は息をふうっと吐いて、緊張しながらもそっと扉を開けた。


 やはり見間違いではなかったことを確認して、俺は魔法を発動した。


「早く倒してくれ……!」

たった一匹の魔物に強化魔法がかけられたウチのパートナー達は過剰戦力だった。一瞬のうちにそれは消し飛んだ。


「イブキ、蜘蛛の巣を取り除いてくれ。あまりものを傷つけないようにな」

小夜に索敵してもらい、身の安全を確保しつつアイテムを探していく。ここは倉庫になっているようだ。といっても高価そうなものが置かれているわけでもなく、使わないものを乱雑に置いているという印象だ。魔物が入り込んだせいで荒らされてしまっているのもその印象をより強くしているのかもしれない。


 攻略のヒントになるような本は無さそうだが、この荒れようなら誰かが落とした鍵なんかも落ちていそうだな。


「よし、ビンゴ!」

植物のキーホルダーが付いた鍵を発見した。キーホルダーの色が鮮やかだったから割と見つけやすかった。


 他にもアイテムがあると後で困るから念入りに調査すると、欠片を見つけた。これがあの蜘蛛を作っていたのか。……もう魔物が出てこないように拾おう。その後他にないことを確認し、次の部屋に行くことにした。


 隣の部屋のものではなかったらしく鍵を挿せなかった。仕方がないのでこの部屋は後にして階段の反対側も調べる。



 初めに開けた二部屋は寝室のようだった。二段ベッドがいくつか並んでいて、ここで神官達が寝泊まりしていたようだ。まあ片方には今は別の住人が住んでいたのだが。こいつらは入る前に小夜が気がついてくれたため、慌てることなく倒せた。


 魔物がいなかった部屋には「開けてください」と言わんばかりの宝箱が置いてあった。人のものだったかもしれないし、実は魔物というパターンもある。開かないのが安全だったが、ここで開きたくなるのが人間の心というもの。距離をかなりとって開けてみると、ポンっと消えた。


 何が起きたのか分からず慌てたが、ふとメッセージウィンドウを表示してない設定にしていることを思い出した。メッセージログを確認すると『宝箱から1500オルを入手しました』と書かれていた。このゲームの宝箱は開けると消え、自動的にアイテムを手に入れられるようだ。


 二つの寝室の隣の部屋には鍵がかかっていたが、持っている鍵で開けることが出来た。中に入ると消毒液や薬の匂いが微かに漂ってきた。


 ここには薬品が置かれているようだ。薬の原料になる薬草も多く置かれていた。色々な種類があり、鑑定したところ、上質な薬草が何種類もあった。こういう薬草は時の神殿にもあったのだろうか。


 奥の方には鏡の神殿だからか、大きな鏡が置かれていた。ぱっと見、二メートルくらいはありそうだ。


 鍵に付いていたキーホルダーと同じ植物を見つけた。この植物は一心草という名前で、精神異常の状態異常――例えば魅了や激昂――を治す薬になるらしい。


 ここには神殿攻略に必要そうなアイテムはなさそうだ。最後の扉に行ってみよう。


 この階にある残りの扉には鍵がかかっておらず、入ることができた。中に入るとそこには両手で持てるくらいの大きさの鏡がぽつりと置かれていた。


 いや、これは鏡ではないか。それには俺の姿や背景こそきちんと映っているが、ここにはないものも映っているのだから。


 といっても、幽霊ではなく一心草だ。鏡のすぐ前に置かれているように映し出されている。シールでも貼ってあるのかと確認するが、そういうことではないらしい。


 この部屋には他に何も置かれていない。この鏡をどうにかして正しい状態にしろ、ということだろうか。

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