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Brave and Partners Online  作者: 岩越透香
第四章 第二の町
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戦力増強1

「あ、リック!」

待ち合わせ場所にはすでにリンがいて、大きく手を振ってくれていた。手には白と黒の何かを抱えている。白はしらたまだろうから、黒は新しいパートナーだろう。


 昨日のあの蜘蛛、あれくらいのサイズだったよな……? いやいや、生産メインのリンがあの森で使役できるとは思えない。うん。大丈夫だ。


「あれ? リック、変な顔してるけど何かあったの?」

「いやあ……。なんでもない。思い出し笑い的なアレだから」

「人の顔を見て変顔しないでよ……。まあ良いや。先に紹介するね。この子が新しい子、シルクスパイダーのおはぎだよ」

「じゃ、じゃあ俺からも……。順番にユキ、小夜、ハヤテだ。ハヤテは昨日進化して、ブレイドファルコンになったんだ」

妹の前だ。平然を装わなければ。蜘蛛から目線を逸らし、話題も変える。これで大丈夫なはずだ。


「言っておくけど、バレバレだからね」

「な、何がだ?」

「私も分かってたのに目の前に連れてきちゃってごめんね。……リックにもらった神捧珠で来てくれた子だから、紹介したかったんだ」

リンは俺の視界に入らないようにおはぎを地面に置いた。手渡すには少し遠い位置にいるリンに「受け取って」と言われ、何を投げ渡す気なのかと身構える。しかし、渡されたのはワンセットの服だった。


 渡された、というより降ってきたと言った方が正確か。ちらりとリンを見るとイタズラが成功したかのように笑っていた。他プレイヤーに直接アイテムを渡すとふわりと降ってくるらしい。


 デザインはいつも通りだが、触り心地が良い。新しい素材がこの町で手に入ったのだろうか。


「えっと、それは絹で作ったの。性能も今までよりも良いし、何よりも肌触りが良いんだ」

「ありがとう。早速着てみるよ」

着心地も良くて動きやすい。性能面も良い。VITの上昇率が一・五倍だ。元々が二だから一増えただけとも言う。


「それはあげるよ。……新しい素材を使った試作品だし。そ、れ、と……」

リンが「ジャーン」と効果音を付けながら取り出したのは黒いコートだった。凝った装飾が施されていて、実用品というよりはコスプレ衣装に近い。


「他のゲームの神官服を参考に作ってみたの! 本当は白にしたかったんだけど、冒険をするなら絶対に白なんか着ないなと思って黒に染めました!」

「性能はどんな感じなんだ?」

「INTも少しは上がるけど布製だからVITは控えめだよ。あと、長めだから動きにくいかも?」

「これぐらいなら大丈夫だと思うな」

「そっか! なら良かった! それでこれぐらいなんだけど……」

リンは指をいくつか立ててコートの値段を表した。今までのものとは桁違いに高いが、それだけ手間と素材がかかっているんだろう。


「分かった。はい」

「まいどー。これ一気に払えるとは、儲かってますなー」

「装備整える以外には大した金額使わないからな」

「ふむ。……もっと値段を上げても良かったか」

「着てみても良いか?」

「もちろん!」


リック

種族:人間ヒューマン Lv.41

職業:神官Lv.13 【加護】

HP:20/20

MP:50/50〈+8〉

STR:20(+6)〈−2〉

VIT:12(+22)

INT:50(+15)〈+8〉

AGI:10(+4)

【スキル】

使役 槍術Lv.13 棒術Lv.1 索敵Lv.5 回復魔法Lv.2  強化魔法Lv.7 妨害魔法Lv.2 付与魔法Lv.1 毒術Lv.10  麻痺術Lv.10 料理Lv.1 解体Lv.5 鑑定Lv.4

【装備】

普通の槍 STR:+6 耐久:295

神官のコート INT:+2 VIT:+3 AGI:−1 耐久:100

シルクのシャツ VIT:+3 耐久:100

シルクのズボン VIT:+3 耐久:100

残りポイント:37


 元のVITより装備と職業スキルの補正の方が高い件について。神官のコートは着心地も悪くないし、性能も――AGIが下がるが――悪くない。


「やっと冒険者らしくなった気がする。ありがとう」

「どういたしまして。リックのことは置いておいて、パートナー達の装備の話をするね。ユキちゃんはポーンラビットって言ってたし、兵隊っぽい感じが良いのかな? 空を飛ぶ二匹にはスカーフが良いかと思ったけど、小夜ちゃんだと可動域を狭めそうだから……」

「小夜は、何か希望はあるか?」

小夜はリンの足元の辺りを示した。何があるのか察した俺はリンに視線を向けた。


「ペンダントだね。小夜ちゃん自身が望むなら邪魔にもならないはずだよね。一つ問題があるけど」

「問題?」

「そう。対応するスキルがないし、良さそうな素材もないこと。……スキルはギルドに所属すれば良いけど、素材集めがめんど……私には当てがないから、良い素材が手に入ったら教えてね。というかペンダントは他のプレイヤーに頼んでみても良いかも」

ペンダントを作るには細工スキルが必要らしい。細工師ギルドがバースやここにもあるらしいから、すぐに必要なら行ってみると良いと勧められた。


「とりあえずユキちゃんとハヤテちゃんの装備を作るね。それじゃあ、私はこれで!」

「ありがとう!」

リンと別れてから森に向かう。もちろん昨日とは別の方向だ。



「新しい装備だと気分も上がるな!」

ハヤテが進化した影響もあって、楽々とはいかないまでも、順調に進むことが出来た。


 体感では昨日と同じくらい深いところまで来た。その時、小夜が俺に異変を教えてくれた。注意しながら進むと霧が濃くなってきた。今はまだ周りが見えるが、もう少し進むと全く見えなくなりそうだ。


 進む道順があるのか、何かのイベントで霧が晴れるようになるのか、どちらにせよ今日はこれ以上進めなさそうだった。



 霧がない場所でレベル上げをしてから町に戻る。俺が出てきた門の近くには細工師ギルドがあったから、ログアウト前に寄ろうと思っていたのだが。


「……見覚えがない」

俺は牧場のような場所に迷い込んでいた。


 俺は確かに真っ直ぐ引き返したはずだ。俺は方向音痴ということもない。……もしかして霧のせいか?


 思い返せば昨日も変だった。行きでは全く見なかった魔物が帰りでは山ほど出てきたのだ。あの蜘蛛が町へ向かう人を襲う魔物と考えるより、俺が違う道を進んでいたと思う方がしっくりくる。


 霧の強行突破は難しそうだ。変な方向に進むと良くないから、霧の先に行けそうになるまではこの町で時間を潰すことにしよう。うん。それが良い。


 にしても、まだ散策出来ていない場所があるとは思わなかったな。牧場を見に行ってみよう。手前には数えると寝てしまいそうなほど多くの羊が見えていた。

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