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Brave and Partners Online  作者: 岩越透香
第三章 時の神殿
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神官を目指して1

 復魂祭が終わった神殿に降り立つ。閑散としていると思っていたが、想像以上にプレイヤーは多い。そして、異常なのが、それらのプレイヤーがほぼ全員瓦礫撤去等で働いているということ。補助魔法士ギルドの仕事だろうか?


 外に人がいたからギルド内も人が多いと思っていたら、そんなことはなく、まばらにいるだけだった。


「こんにちは」

「こんにちは。神官を希望の方ですか? 皆様が神官へ転職するためにはまず、ギルドに所属し、ギルド貢献度を貯めてもらう必要があります。ギルド貢献度が三百になると、訓練が受けられるようになります」

プレイヤーの対応をしすぎたせいか、受付の人が定型文を言う機械に成り果てていた。現在の貢献度は目標の三百の大体半分。ゲーム内時間で丸一日仕事をすれば貢献度の条件はクリアできるみたいだ。


「外で行われている作業は半日で百、町のゴミ拾いは袋を満タンにしたら五十、冒険者ギルドで回復を使うと一回あたり十、あとは孤児院の手伝いが半日で百ですね」

半日で百のものと、細々したものを一つやるのが良さそうだ。


「でも、ゴミ拾いはおすすめしませんよ。既に多くの方がやっているので、ゴミ自体がほぼないでしょうから」

ゴミは全プレイヤーで固定なのか。プレイヤーがゴミを捨ててプレイヤーが拾うっていうマッチポンプができる可能性が……?


 外の作業は一度したからなし。ゴミ拾いも当然なし。となると孤児院の手伝いと冒険者ギルドで回復か。


「孤児院の手伝いって具体的にどんなことをするんですか?」

「行く孤児院によって変わると思いますが、基本は家事と子供の遊び相手ですね。難しいことはしませんよ」

俺のパートナーたちは小型で可愛らしいから、子供の相手も出来そうだ。家事も苦手って訳でもないから問題はないだろう。


「孤児院の手伝いとギルドでの回復をしたいです」

「はい。孤児院は地図をお渡しするので、そこに向かってください。今からですと、午後からですね。冒険者ギルドの依頼は、冒険者ギルドの受付の方に補助魔法士ギルドのカードを見せますと、受注できます。ギルドの依頼は一日十件分までの貢献度――百までしか得られません。ご了承ください」

午後にはまだ時間があるな。先に冒険者ギルドに行こう。



 貢献度上限まで依頼をこなすと、ちょうど良い時間になった。地図を頼りに孤児院に向かう。孤児院に行くためには薄暗い道も通らなければならない。不良にでも絡まれそうだと思いつつ歩く。


 町にはいくつか孤児院があるみたいだが、俺が行くところは町の端に追いやられるように作られていた。廃墟を再利用しているのか、古そうな建物だ。ボールで割られたような窓がそのまま放置されている。直してもすぐに割られるのか人手が足りないのか分からないが、良い環境とは言い難い。


「補助魔法士ギルドから依頼で来ました」

「最近多いねえ。助かるよ」

五十代後半くらいの女性が出迎えてくれた。前と後ろに一人ずつ抱いていて、とても忙しそうだ。


「ねーねー。誰か来たよ!」

「本当だ! しかも槍持ってるぜ!」

「冒険者? お話聞かせて!」

「ウサギさんいるよ! 可愛い!」

「俺はあの鳥の方が好きだな! なんて名前なんだ?」

建物の中にいた子供たちが俺たちの声を聞いたからか、集まってきた。そして俺を取り囲み、質問攻めをする。


 ちらりと女性の顔を伺う。彼女は「子供たちの相手をしてあげてください」と言った。他の仕事は大丈夫かと聞いたところ、他にも依頼で来ている人がいると教えてもらった。


 子供たちとただ遊ぶだけで貢献度が稼げてしまって少し申し訳ないが、任されたことだし、全力で遊ぼう。


「まず、自己紹介をさせてもらうね――」

聞かれた質問に答えつつ、自己紹介をすると、子供たちも続けて自己紹介をしてくれた。ここにいる子たちは冒険に興味があるのか、戦いの話をせがんできた。面白おかしく脚色しながら今までのことを話す。


「ねえ、私もユキを撫でても良い?」

「なあ、なんか魔法を使ってくれよ!」

「その子たちにピッタリの花冠を作ったの! 乗っけても良い?」

魔物は珍しいようで、みんな引っ張りだこになっている。特に人気なのはユキとハヤテだ。う、俺が一番人気がなくて悲しい……。



 太陽が西に傾き、空は茜色に染まっていた。孤児院では夕食の時間となり、俺の依頼を終わる時間となった。


 最初は嫌がっていたユキやイブキも時間が来たことを名残惜しく思っているようだ。最終的にこの依頼を楽しんでくれたのなら、この依頼を選んでよかった。


「良ければまたいらっしゃってください」

「またねー」

「みんなも連れてきてね!」

手を振って「また来ます」と返す。


 今日の活動でギルドの貢献度は三百を超えることができた。少し休んで、ゲーム内時間が朝に変わったら、神官へ転職(というか就職?)しよう



「神官への転職を希望します」

「戦闘職としての神官でお間違いないですか?」

本当の神官になるつもりはないので頷く。


「ではギルドカードをお預かりします。条件はクリアしているようですね。では、礼拝所に向かってください」

指示通り礼拝所へ向かうと数人のプレイヤーと神官――ルカさんがいた。それもただ立っている訳ではない。プレイヤーは地面に横たわるかそれを回復している。かろうじて立っている人も息は絶え絶えで辛そうだ。そして、ルカさんは彼らを涼しげな顔で見下ろしていた。


「新たな転職希望者……」

彼は俺の方をちらりと見て、呟いた。


「よそ見したな! もらった!」

「甘い」

先ほどまで地面に這いつくばっていたプレイヤーが背後からルカさんに攻撃する。が、振り向くこともなく軽く躱されてしまう。


「さて、あなたは何を鍛えますか?」

「何を、とは?」

「聞いていないんですか? 回復魔法、強化魔法、棒術、体術から習得したいスキルを選び、それを習得した時点で転職の資格ありとするんです。全て取得済みの場合は私の持つスキルで欲しいものがあれば教えられますが……」

回復魔法と強化魔法は既に覚えているから論外。俺は槍をメインにすると決めているから、槍でも使えそうな棒術にしよう。


「棒術にします」

宣言をすると、ルカさんは木の棒を俺に投げ渡した。


「あなたが一本取るまでそれを使って模擬戦を行います。かかってきなさい」

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