神殿探索1
投稿が遅れてすみません。
ギリギリの時間にログインしたため、既に集まっているかと思ったが、ログアウトした地点には誰も居なかった。
フレンドのナルはログインしているのが分かったが、そうではないアオイはログインしているかどうかも分からない。フレンド登録しておけば良かったな……。
「お待たせしました!」
ログインするなり、アオイは頭を下げた。頭を上げた彼女はきょろきょろと辺りを見回した。
「ナルは?」
「ここには……」
「ログインはしてるみたいですけどね……」
「森の奥で待っているとか?」
「ただの遅刻なような気もしますが……」
アオイがフレンドコールで呼ぼうとした時、町の広場の方からナルが走ってきた。
「すまん、遅れた!」
彼は顔の前で手を合わせて謝った。少しハプニングはあったけど、これで全員揃ったな。
門番の騎士に挨拶をして、再び神殿の敷地内に入る。今度は正面から強行突破するのではなく、崩れた壁の隙間から中に入る。
「上手く入れましたね」
「抜け道みたいなのがあったんだな。情報収集ありがとな、ナル」
「むしろ正面突破したのは正規ルートではなかった可能性もあるよな……」
雑談しつつも、スキル発動は忘れない。周りに敵は居なさそうだな。
「周りに敵の反応はないけど、どこに行く?」
地図とにらめっこをするアオイに聞く。彼女は顔を上げ、指差しながら言った。
「右手側に行くと前に探索したところに行けそうです。左には何もなさそうです」
「あれ、ここには行けないの?」
地図を覗き込んだナルが聞いた。
「ここに水路が通っているみたいなので……」
「泳げば良くね?」
「僕は泳げません」
「俺が泳ごうって言っといてなんだけど、そんなに深くはないと思うぜ」
「水に濡れると重くなりそうなので嫌です」
ふわりとローブをはためかせて言った。
アオイには悪いけど、今まで通りの道だとダメな気がするんだよな。ナルの反対側から地図を覗き込む。水路は森から伸びている。
「足元程度の深さかもしれないし、瓦礫で道ができてるかも?」
「無理そうなら引き返しても良いんだから、気楽に行こうぜ」
「そうですね。では向かいましょうか」
水路は破壊されることなく残っていたが、近くにある瓦礫を水路に落としてその上を歩けば行けそうだ。
「これを落とせば良いかな?」
「奪還作戦なのに、自分たちで壊して良いの……?」
「……確かに?」
俺たちがあれこれ話しているうちに、ナルは向こう岸までジャンプした。彼は向こう岸から、こちらに手を伸ばしてきた。
「ほら、ここに捕まれ。落ちそうになっても引っ張り上げるから」
「そんなに飛べません……」
「現実よりも身体能力は高くなってるから、心配するなって」
ナルの説得によりアオイが向こう岸まで飛んだ。俺も続けて向こう岸に渡る。
「飛べたな!」
「そうですね。やってみるものです。もう少し進むと裏門があるようですが……」
壁沿いに進んで行くと、強いモンスターの気配が現れた。その気配はどんどん近づいてくる。
「この角を曲がれば見えると思います」
「思ったより時間がかかったな。まあいい、行こうぜ!」
「待って!」
ナルの襟を持って引き留める。抗議するような目で見つめるナルにモンスターの気配がすることを言った。
「門番なんですかね?」
「門番がいるなら何か良いものがありそうだな!」
「行くのは待ってください。ボスっぽいモンスター以外に敵が居たら困ります」
アオイはそう言ってこちらを見た。近くに大きな気配は感じないけど、神殿の内部の敵が索敵できていない可能性もある。
そのまま告げると、ナルが「よし、分かった!」と言って壁を軽く登っていった。
「良いニュースと悪いニュースどっちが聞きたい?」
「……良いニュースからで」
「中にモンスターらしき影は見えなかった」
「では、悪いニュースは……?」
「ボスっぽい奴に見つかった」
ナルが転がり落ちるようにこちら側へ戻ってきた。その直後、何かが裏門のあるあたりから飛んできた。
「遠距離攻撃してきましたよ!」
「あれは瓦礫を投げているだけだ! おそらく、敵本体に遠距離攻撃はない!」
「瓦礫の投擲も立派な攻撃ですよ! 私なら今ので死に戻ってます!」
「とりあえず、距離を詰めよう。瓦礫は数え切れない程あるし、どこまで追ってくるか分からない。逃げるのは少しリスクがある」
壁にピッタリと張り付き、軽く作戦会議をする。と言っても、敵の行動がプレイヤーを発見すると瓦礫を投げてくるということしか分からないため、すぐに終わった。
「一斉に飛び出すぞ」
「せーのっ!」
壁裏から飛び出して駆け出す。門番は一度は瓦礫を投げてきたものの、近づいてくると分かったためか、それ以上投げてくることはなかった。代わりに、大剣をしっかり構えた。
武器を使っているため、敵はゴブリンだろうと思っていたが、全身鎧に身を包んでおり、中に入っているモンスターは見えない。鎧を着て大剣を構えて立っている様子は、本当に門番のようだ。
いや違う。鎧そのものがモンスターなんだ。その証拠に、顔があるはずの場所が空洞になっている。
「リビングアーマーだな」
「生き物じゃないよな。鎧を完全に破壊したら倒せるのか?」
音も立てず、大剣を振り上げる。生き物ではないからか、今まで通りの感覚で戦うと足元を掬われそうだ。
「作戦通り行くぞ」
「作戦って言うほどのものはないけどな! 強化魔法はかけたぞ!」
イベント最初の本格的な戦闘が今、始まった。
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