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Brave and Partners Online  作者: 岩越透香
第二章 サービス開始
31/94

VSゴブリン1

 何度追いかけても敵が待ち伏せしているところに連れて行かれてしまう。これはそういう罠だったのか……? 俺が追いかけているのが敵にバレているから罠に嵌められているのだとしたら、バレないようにすれば良いな。


 お金も十分にあるし、ギルドの講習会に参加しよう。目当てのスキルの日は……今日だ! 早速参加しよう。


 講習会では、参加者全員で森の中でドロケイをした。集まったのは二十人ほど。小学生の時のクラスメートとやったレクリエーションを思い出した。



「残り一分です」

何度か味方を救出しつつ、鬼から逃げ回っているうちに、制限時間の十分が迫ってきた。


 鬼は牢屋の周りを厳重に守っていて、一人で助け出すのは難しそうだ。


 近くで木に寄りかかって立っていた人と目で合図をする。牢屋の向こう側にいる人からOKのサインが送られた。


 わざと音を立てて牢屋に近い所を走る。――つまり、俺は脱獄のための囮役だ。もう一人の囮役とは反対側へ走る。


 森で活動することも多かったからか、鬼に追いつかれそうな気配はない。ゲームなのでスタミナ切れの心配もない。転倒のようなアクシデントさえ無ければ逃げ切れそうだ。


「いてっ」

出っ張っていた木の根に足を引っ掛けて転んだ。背後から聞こえる足跡は段々と大きくなってきた。


 ――負けるか。急いで立ち上がり、森の奥へと走る。牢屋を守っていた鬼は四人中三人。鬼と鉢合わせるなんてことはないはずだ。このまま走ったら勝てる!


「人? 鬼が来てる、どいて!」

鬼を連れてきてしまったという罪悪感が胸に広がる。が、それはすぐになくなった。


「挟み打ちにされた!?」

絶対絶命か……。そう思った時、笛の音が鳴った。


「制限時間となりました。これにて講習は終了です」

ほっと息をついた。最後まで捕まらなくて良かった。


「危なかったな、君。あと数秒あったら捕まっていたぞ」

「そうですね。命拾いしました」

「だが、隠密の訓練なのに目立とうとするのは良くないぞ。うまく隠れることで、訓練になるからな」

鬼役の人と少し話をしてから会場を出る。


 ステータスに隠密の二文字が増えていた。一発でゲットできて良かった。今日はずっと森で戦っていたし、尾行するのは明日にしよう。



 よし、今日こそはこの戦いに終止符を打つ!


 運が良い方ではないことを自覚しているから、ゴブリンを見つけられないのではないかと思っていたのは杞憂だった。森に入ってから三十分も経たないうちに一体目を見つけることができた。


 隠密を発動し、音を立てないようにそっと、それでいて見失わない程度の速度で走る。


 ゴブリンは周りを確認しつつ走る。俺は周りを確認するタイミングで木の陰に隠れてやり過ごす。気分は凄腕のスパイだ。楽しくなってきたな。


 ゴブリンは高さ一メートルくらいの穴に入った。ここがゴブリンの巣穴なのか? 中に入るべきか、諦めるべきか。槍は洞窟内では振り回しにくい。洞窟に入って行ったのを見ただけ良いとするか……?


「えっプレイヤー? 避けて!」

背後から迫ってくる斬撃を避ける。飛んできた方向を見ると、太陽のような髪色の男がいた。剣術には斬撃を飛ばす技があるのか。楽しそうだな。


 あ、洞窟の入り口にあたって入りやすくなっている。中は意外と広そうだな。これなら槍でも戦えそうだ。


「ごめんなさい! ここに人がいるとは思わなくて!」

斬撃を放った男はゴブリンにとどめを刺した後、俺の元へ走ってきた。


「よそ見してたこっちも悪いので。それに、ここの洞窟の入り口が広がって入りやすくなって助かりました」

「ここの洞窟にソロ? 見かけによらず強いんだ……」

「心の声が漏れてますよー。……この洞窟の敵って強いのか?」

彼はパッと口を押さえた。その仕草は本当に悪いと思って口を塞いだというよりも、戯けてやったように見える。この人ならまあ、タメ口でも良いかな。


「あー。掲示板とか見ない系の人かあ」

彼は独り言のように言った。掲示板ってことは、他にもどこに行くのか気になって調べようとした人がいるのか。ここに来たのは無駄だったってことか。


「言うと、ネタバレになるかもしれないけど良い?」

「掲示板遡るのは辛いし助かる」

「簡単に言うと、ゴブリンが大量に居て、しかも上位種がゴロゴロ居て、手こずるとすぐに仲間を呼ばれて全滅」

「俺には無理だな……」


「それが普通だよな……。ここを二人でクリアはおかしいよな」

「え、俺等でパーティー組むって話?」

「いやいや、ちょっと無理があるって。戦闘のトッププレイヤー二人が最深部まで行ったって話だよ」

始まって一ヶ月も経たないうちにもうトッププレイヤーなんて概念が生まれているんだ。トッププレイヤーかあ。前に共闘した剣士とどっちが強いんだろう。


「でも良いな。パーティー組もうぜ。今、ボスを倒すためにレベル上げをしていたところだったんだ。えっと名前は……」

「リック。そっちは?」

「俺は悠久の夜明け(エターナルサンライズ)だ」

「……長いから短い呼び方で良い?」

凄い単語が聞こえた気がする。気のせい……じゃないよなあ。どう反応するのが正解だ?


 流石にフルで呼ぶと笑ってしまいそうなので、あだ名をつけることを提案する。すると、彼は「分かってないな」とでも言いたげに眉をひそめた。


「フルネームの方が良いだろ?」

「……寿限無って知ってる?」

「あの名前が長いやつな。……確かに、名前が長いと危険だな」

良かった。分かってくれて。「背中は頼んだ、エターナルサンライズ!」とか言いたくないし。


「じゃあ、ナルって呼んでくれ。フレンドにそう呼ばれてるから」

「分かった。ナル」

パーティー申請の名前を見て込み上げた笑いをグッと堪える。目の前に居るんだ。本人は格好良いと思ってるんだ、本心は出さないようにしとかないと。


「なあリック、俺の名前ってダサいか?」

「……!?」

口に水分を含んでいたら盛大に噴き出すところだった。


「ナルが格好良いと思っているなら良いんじゃないか?」

「そうだよな! アイツの美的センスがおかしいだけだよな」

俺は曖昧に笑って誤魔化した。



 ボスのいる場所を既に知っているというナルについて行く。接敵していないうちは戦闘スタイルや作戦を話す。


「俺は魔法でサポートしつつ戦う槍使いだな。攻撃はパートナーに任せてる。そっちは? パートナーの姿が見えないけど」

「俺は見ての通り剣士で、パートナーはいないものと思ってくれ」

「いないもの?」

不思議に思っていると、彼はふわふわのマフラーを指差した。するとマフラーが動き、耳が生えた。


「ホーンラビット?」

「一回進化して、今は大食いウサギだな。可愛いモンスターがいればモテると思って使役しただけで、進化したのもパワーレベリングのせいだから弱い」

「進化先って変わるんだな」

俺は大食いウサギをじっと見つめた。そのつぶらな瞳には俺が写り込んでいる。可愛い。吸い寄せられるような魅力がある。


「ちょ、触りすぎだって。ほら、コイツだって嫌がって……ない」

この触り心地、癖になりそう。ああ、一生モフモフしたい。


「……駄目だ。この子は返す。俺には俺のパートナーが居るから」

「口では言っているが、お前の体が返すことを拒んでるぞ」

「あ、索敵に反応が」

「そうか。じゃあとりあえず返せ。戦うぞ」

「強化魔法はかけるから頑張って」

「おい!」

ゴブリンとの戦闘をナルに押し付けて、俺はモフモフを堪能した。戦闘後、ウサギは没収された。呆れられたような気がする。



 奥に向かうにつれ、敵の数が増え、戦闘する数も増えてきた。ホブゴブリンやゴブリンメイジが多くなっているとはいえ、戦力はいつものおよそ二倍。特に苦戦することはなく、順調に進んだ。


 ボスエリア手前のセーフティーエリアでもう一度作戦を練る。ゴブリンは掲示板の情報通りだと遠距離攻撃系の手下と襲いかかってくるらしい。


「イブキに一掃してもらうのが楽か?」

「MP足りるか? メイジ系の魔物には魔法は効きにくいだろ」

「弓使いを倒してもらって、メイジは俺らが避けたりボスを盾にして防げば良いか……」

「簡単に言うな……。やってみるしかないが」

「MPも回復したし、行こうか。ナル」

俺たちはボスエリアに足を踏み入れた。


『ボスエリアに入りました。エリアボスとの戦闘が始まります』

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― 新着の感想 ―
[良い点] ユキちゃんはもういいのか浮気者ー! と思わず思ってしまいました…
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