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Brave and Partners Online  作者: 岩越透香
第二章 サービス開始
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異常事態?4

 ゲームにログインして、掲示板を眺めながら南の森の攻略について考える。


 今まで通りの環境なら、ゴブリンが固まっているところは避けるようにして進むだけでよかったのだが、これからは奇襲や魔法も考えなければいけない。


 ゴブリンの変化は掲示板でも少し話題になっていた。ゴブリンメイジは前からいたらしいが、増えているということだった。もう一匹は、新たに出現するようになったモンスターらしく、掲示板ではゴブリンアサシンと仮に呼ばれていた。


 奇襲してくるからアサシン。それは納得だが少し引っかかる。


 モンスターはプレイヤーを見つけたら襲いかかってくる。そして、たとえ不利になっても逃げることは決してない。


 が、ゴブリンアサシンと呼ばれたモンスターは襲いかかってはきたものの逃げた。俺を倒すことが目的ではなかったということか?


 わざわざ逃げるモンスターにしているのには何か訳があるはずだ。逃げたゴブリンを追ってみよう。時間に余裕はあるし、今の俺たちではここのエリアボスに勝つことは難しい。レベル上げも兼ねて、ゴブリンの尾行だ!



「物欲センサーめ……」

ゴブリンを尾行してみようと、森に入ってから三度接敵したが、どれも普通のゴブリンだけだった。普段なら強敵に遭遇しなくてラッキーだと喜べるのに。


 もう少しだけ奥に行ってみよう。奥に行けば行くほど同時に戦わなければならない敵の数は増えるが、ここでは余裕を持って戦えているから大丈夫なはず。


 奥に進むと、だんだん視界が悪くなってきた。足元に生えている草の背丈も高くなっている。警戒しながら音を立てないように進む。ゴブリンの索敵手段が何か分からないが、警戒はどれだけしても困らない。


 木々が揺れた。思わず目を瞑る。


「っ正面だ! ハヤテ!」

索敵に反応あり。敵の数は五匹。強化魔法をかけ、突撃させる。


 ハヤテの先制攻撃で一匹、上手く行けば二匹は倒せる。そうしたら、一気に攻める。俺たちも、敵の方へ駆け出した。


 ――! ふくらはぎに鈍い痛みを感じる。アサシンだ。咄嗟に後ろのゴブリンを石突きで殴る。衝撃でゴブリンの手から突き刺されたナイフが離れる。


 体制を立て直す前に槍で一突き。アサシンは耐久力があまりないようで、その一撃で力尽きた。足のナイフを引き抜いて捨て、ハヤテの元へ駆ける。ナイフを抜くと、痛みは消えた。HPは減っているものの、走るのには支障がない。


 ハヤテは三匹のゴブリンから逃げていた。固まっているならちょうど良い。使い所がなかった、槍術の新アーツのお披露目だ。


貫通突き(パーフォレイト)!」

俺の槍が三匹のゴブリンをまとめて串刺しにした。でも、ダメージはいまいちかな。倒し切れていない。


 槍を大きく振って、串刺しになったゴブリンを周辺の木に叩きつける。一番衝撃の少なそうだった個体はハヤテが貫き、後の二体は俺が倒した。


「ちょっと休憩したら、また敵を探そう」

MPの減りはほとんどないから、索敵しつつ休憩しよう。


「後ろ!? またアサシンか!?」

振り返るとナイフで体を貫かれたハヤテがいた。ハヤテのHPはゼロになり、すうっと消えてゆく。


 ハヤテの仇を取ろうと慌ててアーツを繰り出すが、軽く避けられてしまった。そしてそのまま森の奥へと消えてゆく。


「追いかけるぞ!」

イブキに声をかけ、走り出した。


 前を走るゴブリンがちらりとこちらを見る。それはその程度か? と挑発をしているようにも思えた。イブキの風の加護もあるのに追いつけないという焦りもあってか、前を走るゴブリン以外が目に入らなくなった。


「っぐぅ!」

俺の体に矢のようなものが当たった。鏃があまり尖っていなかったからか、服のおかげか、刺さることはなかったが、バランスを崩し地面に倒れ込んだ。


 仲間のいる場所に誘導してきたのか……! やばいと思いつつも、敵のAIって優秀だなとどこか冷静な自分もいた。ハヤテがやられて俺は焦っていた。本来なら必要ない犠牲だったのに、と。


「ありがとな、ゴブリンの野郎共。頭が冷えたぜ」

弓を撃ってきたのが一匹、棍棒を持っているのが二匹か。これぐらいならどうってことはないな。


「イブキ!」

放たれた矢を風魔法で吹き飛ばす。その勢いは矢を一本切るだけにとどまらず、弓を持つゴブリンに傷を作った。


 風魔法に反応して、二匹のゴブリンが距離を詰めてくる。二匹の間に連携というものは感じられない。それぞれが俺を倒そうと向かってくる。


 強突きで一匹に重傷を負わせる。突き出した槍は速突きを使って、瞬時に手元に戻し、もう一匹を切り払う。


 二匹目のゴブリンが怯んでいる隙に一匹目を倒す。一対一になればもう怖くない。大ぶりな攻撃を余裕を持って避け、カウンターでトドメだ。


 イブキの方を見ると、そちらも倒し終えていた。


 敵は退けられたが、ゴブリンを追うのに夢中になっていて、現在地が森のどこなのかもわかっていない。俺たちは決して万全ではない。一度町に戻った方が良いな。ハヤテを外に出す時、安全な方がいいし。


 今度は索敵で怪しい反応があったら避けるようにして、慎重に町へ向かった。



 あの時、逃げていたゴブリンはいつの間にか姿を消していた。俺たちを倒したいなら、他のゴブリンと一緒に襲いかかってきても良いはず。他の目的――例えば偵察とか――があるのかもしれない。


 一旦ログアウトして休憩してからもう一度、尾行にチャレンジしてみよう。

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