異常事態?1
【称号を集めし者】
称号を誰よりも集めた証。2041年 7月の称号獲得数1位の記念称号。
条件:BPOランキングで称号獲得数の1位になる
ボーナス:10ポイント
間違いはない。どうやら俺がこのゲームで一番多く称号を持っているらしい。
あ、称号を表示させてみるか? 一位称号を表示させるのは少し恥ずかしいから、別の称号に……。
それにしても十ポイントか。何に使おうかな?
レベルもいくつか上がっているだろうから、久しぶりにしっかりステータスを確認しよう。ポイントの使い道も考えたいな。
リック
種族:人間 Lv.24
称号:【大樹の解放者】
HP:20/20
MP:40/40
STR:10(+3)
VIT:5(+1)
INT:26(+3)
AGI:10(+5)
【スキル】
使役 槍術Lv.10 索敵Lv.5 回復魔法Lv.1 強化魔法Lv.6 妨害魔法Lv.2 付与魔法Lv.1 毒術Lv.8 麻痺術Lv.8 料理Lv.1 鑑定Lv.3
【装備】
初心者の槍 STR:+3 耐久:∞
火のジャケット VIT:+1 INT:+3 火属性耐性 耐久:192
残りポイント:33
息吹
種族:風の妖精 Lv.21
HP:-/-
MP:68/68
STR:1
VIT:1
INT:29
AGI:11(+5)
特性:魔力生命体 飛行
【スキル】
魔力吸収 風の加護 風魔法
ポイントは……今すぐに使わなくても良いか。欲しいスキルが後から出てくるかもしれないし、ステータスもそこまで困っていないからな。そういうことにしておこう。
村の人からモンスターが強くなっているよと忠告をされたが、村から近いところなら大丈夫だろう。俺は村の近くにある丘に向かった。
「鑑定」
グリーンキャタピラー Lv.1
HP:???/300
丘にいるモンスターは大きな芋虫だった。モンスター名はグリーンキャタピラー。他の色もあるのだろうか? 体を伸ばせば俺の腰くらいまでは届きそうだ。攻撃を当てやすいから大きな方が良いのか、気持ち悪いから小さい方が良いのか……。
鑑定はレベルが上がって、HPが分かるようになった。鑑定スキルのレベルが低いせいか、相手のINTが高いのか、現在のHPは分からない。イブキに魔力吸収を試してもらったところ、効果があったため後者かもしれない。
芋虫の吐く糸はネバネバしていて当たると捕まえられてしまいそうだが、幸い動きは遅く、狙いも雑だ。余裕を持って避けながら攻撃を加え、撃破していく。
イブキが攻撃に参加できるようになったこともあって、戦闘はサクサク進んだ。これくらいなら楽に勝てる――その油断が悪かったのかもしれない。
音にならない、叫び声のような何かが響いた。思わず耳を塞ぐ。
見上げると、人ほどの大きさの蝶が居た。蝶は俺のことをロックオンしているようだ。俺を見下ろしている。
蝶が羽ばたくと同時に風が吹いた。イブキの魔法がそよ風に思えるほどの強風。俺の貧弱な体は耐えきれず、丘を転がりながら下っていく。
槍を支えにしてなんとか起き上がる。どうせ死ぬなら、と思って鑑定を発動する。しかし、INTに差がありすぎるのか、失敗してしまった。
絶対絶命だと思ったその時、丘から男が降ってきた。
「これ、獲物の横取りになりますか?」
「いえ……。倒されそうになっていたので助かりました」
「そう、よかった」
男は剣士だった。剣を構え、蝶を睨みつけている。
「元々のターゲットは俺です。手伝います」
「……共闘は苦手」
なぜMMOジャンルのゲームをしているんですか、という疑問は心の中に閉まっておく。
「俺はサポートに徹します。強化、妨害、付与、回復が使えます」
「サポート系? じゃあ、強化魔法中心にかけて欲しい。STRだけで良いから。windだ。パーティー申請を送っておく」
『woodwindさんからパーティー申請が送られました』
送られてきたパーティー申請を承認し、パーティーを組む。これでイブキのスキルがwindさんにも適応されるな。
「強化STR」
強化魔法をかけると同時に男は蝶に斬りかかった。
彼は魔法で作った足場に乗って蝶との空中戦を繰り広げた。彼の剣の使い方、回避のタイミング、スキルの使い所は全てが一流と言えるだろう。相手の攻撃さえも利用し、攻撃する。が、突然空を舞うように戦っていた彼の体が傾き、俺の方に落ちてきた。
「イブキ、あの人の体を守ってくれ!」
イブキが風魔法を使い、windさんをふわりと着地させる。
「どうしたんですか!?」
「鱗粉を吸った。鱗粉に眠くさせる効果があったみたいだ。風魔法で鱗粉を吸わないようにしていたら良かったが……」
「では俺のイブキにやってもらいます。イブキ、彼に鱗粉を吸わせないようにしてくれ。MPが足りなくなったら魔力吸収で回復しろ。できるな?」
イブキはかすかに光って答えた。
「助かる」
「こちらこそ。ではかけ直しますね、強化STR」
彼はすぐに空へと戻って行った。
イブキの体は淡く光っている。魔法を使うと淡く光るようだ。そんなイブキを横目に見ながら俺は強化魔法をかけ直していく。
windさんは羽を中心に攻撃しているらしく、気がつくと羽がボロボロになっていた。彼がスキルを発動して剣を輝かせ、そのまま羽を切り離す。
蝶は体勢を整えようと羽を必死に動かしている。バランスは取れないものの、なんとか上空に留まっているようだ。
「強化INT、拘束!」
蝶に拘束魔法をかける。羽を封じ、上空に留まれないように。蝶の脚が点滅し、それが刃となって拘束を解いた。が、バランスを完全に失い、俺の前に落下してきた。
強化魔法で少しでも拘束の威力を上げていなかったら、破られていたかもしれない。それくらいギリギリだった。
「とどめ」
空から戻ってきたwindさんがそのまま剣を突き刺す。蝶は他のモンスターと同じように煙となって消えていった。
「ありがとうございます。一人だったらやられていました」
「こちらこそ。ソロが多かったけど、パーティーを組むのも良いな」
彼は拳を突き出しながら言った。俺もそれに合わせるように、拳を突き出す。
二つの拳がぶつかった。彼はパーティーを解除すると早々に去っていった。ちょっぴり不思議な人だったな。ソロが好きそうだったけどまた会えるだろうか?




