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Brave and Partners Online  作者: 岩越透香
第二章 サービス開始
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つなぐもの4

 ログインして、ニックの家に向かった。彼らは俺を待っていたようで、扉をノックするとすぐに扉を開けた。


「良かった。これを受け取ってくれ」

そう言って俺に銅貨を手渡した。銅貨は触れると小銀貨と同じように消えた。


「千オルも貰っていいんですか?」

「ああ。ニックの命と俺の足の恩人だ」

「ありがとうございます」

多すぎると言って返すと言うことは、ニックの命はもっと安いと言うようなものだ。感謝して受け取った。


「俺も……」

ニックがキラキラ光る石のペンダントを取り出した。


「お守りなんだって。やるよ、俺使ってねえから。要らねえもんだから……」

有無を言わさず押し付けて、家の奥へ消えていった。


「あー。ニックがすまねえな。他にできることはないか?」

「特にありません」

「嘘だな? 遠慮することはねえよ」

見破られてしまった。なら正直に言ってしまおうか。


「今、新しい武器を探していて……」

「ふむ……。すまないが、それだと力になれそうもない。もう一人の息子は町で鍛冶屋見習いをしているが、まだ槍を打てる腕前じゃないだろうからな」


 雑貨屋さんの錬金術の師匠がこの村にいると聞いたのを思い出し、ついでにどこに行けば会えるのか聞いた。


「錬金術師? ああ、あの婆さんか。それなら街で復魂祭で使う道具を作っているらしい。錬金ギルドは猫の手も借りたいらしくて」

「復魂祭ってどんな道具を使うんですか?」

「ちっちゃな石みたいな道具だよ。異なる世界とこの世界をつなぐ橋みたいな役割だと聞いたぞ。また力になれなくてすまないな」

「気にしないでください。ありがとうございました」



 俺はバースに戻ってきた。バースの西側のエリアに行くためだ。村から少し離れると熊のように強いモンスターが出るらしい。熊レベルに強いモンスターとはしばらく戦いたくないし、倒すのに時間がかかるため、レベル上げの効率が良くない。


 そのため、まずは西のエリアに向かおうと思ったのだ。ついでにバースで武器が買えると嬉しい。


 ギルドで集まった素材をオルに変え、町の西側にある店を覗きつつ、門へ向かおう。



「お前、そのペンダントをどこで手に入れた!」

声のした方を見ると、武器屋の位置を教えてくれた少年がいた。


「これは貰ったものだよ」

「そんなわけない! それは弟に去年の復魂祭であげたペンダントだ! あいつはそれを大事にして……」

ジョンの言う弟はニックのことだろうか。あいつはそんなに大事にしていたものをくれたんだな……。


「返せ!」

「おい待て、紐が切れるから!」

ジョンは俺からペンダントを奪うと走り去って行った。


「村まで行くつもりか?」

日は高いが、森にはモンスターが沢山いる。周りが見えていない彼では無事に辿り着くのは難しいだろう。


 俺は追いかけることにした。



 バレたら嫌がられると思って通り道の敵を倒しながら追いかける。彼の目的地は予想通り湿地の村だった。


「ニック!」

「え? なんでここに!? 町に逃げたんじゃねえのかよ!」

「そんなことより、これ! 取られたんだろ?」

「は? 俺があげたんだよ。……助けて貰ったし、お前から貰ったものなんて要らないからな。せっかく、もう見ないと思ったのに」

ジョンは唇を噛み締めた。弟に拒絶されたことがショックだったのだろう。


「だって、お前は『ありがとう、大切にするね』って!」

「父ちゃんのことを裏切って、町に行ったやつなんて兄でもなんでもねえ!」

「小さい頃は可愛かったのに! お前なんて……」

「そこまでだ」

二人の言い争いを俺は中断させる。このままでは絶交だとか言い出しかねない。


「なんでお前が……!」

「やっぱりな。お前、お人好しだもんなー」

俺が後ろから現れたことに対して、ジョンは驚き、ニックは少し呆れていた。


「ジョン、お前はなんで町に行ったんだ?」

「はあ? 鍛冶屋になりたかったからに決まってるだろ!」

「なんで鍛冶屋になりたいんだ?」

「……父ちゃんの使う道具を作りたかったから」

ジョンは思い出しながら話すように、ぽつぽつと話した。


「父ちゃん、壊れかけの道具を使ったせいで怪我をしそうになったことがあったんだ。だから、俺がちゃんとした道具を作りたいと思ったんだ」

「でも、父ちゃんはお前が同じ狩人になることを期待してた! 期待を裏切ったんだ!」

「そんなことは……」

会話は平行線を辿っている。ニックが優勢なようだが、このまま話が終わると二人はもう仲良くなれないと思った。


 俺は彼らの家にいる人物に助けを求めに行った。


「……本人に聞いてみたらどうだ?」

「「父ちゃん!?」」

「お前ら、俺の話をしてたのか」

彼は顎の髭を触りながら二人を順番に見た。


「ニック、親を甘く見るなよ? 確かに、ジョンに狩人になって欲しい気持ちはあった。だが、俺はそれを強制するつもりはねえよ」

「でも……! 父ちゃんは俺の憧れで、それを失うのが嫌なんだ!」

「ならよ、ニック。お前が俺を超えてみせろ。憧れなんて言うなよ、お前ならやれる」

ニックは俯いた。彼は父親に対して憧れを抱いていた。その背中を手の届かないものだと思っていたのだろう。


「俺も、手伝う。自分勝手かもしれないけど……お前には諦めてほしくない」

「兄ちゃん……。俺にできるかな……」

「ニックなら大丈夫だ」

「お前は生意気なくらいがちょうどいいよ」

「失礼だな……。でも、確かにな。俺は父ちゃんを超える!」

その意気だ、とニックの頭を撫でる。彼は少しくすぐったそうにしただけだった。


「ニックはこれから本格的に鍛えないとな。リックさんもありがとう」

「……ありがとう」

「その……勘違いして悪かった。ありがとう、ございます」

「えっ、なんで俺に!?」

三人は顔を見合わせた。


「お前がいなかったら、仲直り、出来なかった。これ、お前が貰ったものだろ? 返すよ」

ジョンがペンダントを渡してきた。


「いや、良いよ。……俺、それがあってもVIT低すぎて倒されるから」

「なんだよ、それ! ……ありがとう。じゃあこれはニックが持ってくれ」

ジョンがニックにペンダントを渡した。


 大切なものだったら俺が持つのもなんか変だし。あるべき場所に戻って良かったな。

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