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Brave and Partners Online  作者: 岩越透香
第二章 サービス開始
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解体

解体の描写があります。ご注意ください。

 寝過ごした。慌ててログインすると五時前。町でログアウトするとスタート地点は町の中央にある噴水の前になる。俺はギルドへ走った。


 ギルドの講習会には俺の他に二人参加していた。一人は大柄な男性で、もう一人は弓を持った女性だ。


 講習が始まった。教官はホーンラビットを取り出すと手際よく捌いていく。五分もしないうちに兎は肉と毛皮と角に変わった。


「さあ、やってみましょう」

解体を終えた教官がそれぞれにホーンラビットを手渡した。説明はゼロ。やって覚えろというタイプらしい。



 やり方を思い出しながら解体する。皮を剥ぐところからスタートだ。教官は簡単なことのように剥いでいたが、見ているよりも難しい。皮と肉がうまく離れない。ナイフで切り込みを入れて離しやすくしようとしたら、皮を切り裂いてしまって、ボロボロになってしまった。なんとか皮を分離できたので、肉を捌き始める。どこをどう切れば良いんだ……?


「まずはここを切ると良いですよ」

講習に参加していた女性が教えてくれた。


「ありがとうございます。すごいですね。慣れているんですか?」

「はい。知り合いに猟師の方が居て、良くお裾分けをもらうんです」

彼女もプレイヤーだったらしい。俺は彼女に教えてもらいながら解体を進めた。先に解体を終えた彼女によると、解体が終わると同時にスキルを取得したアナウンスが出るらしい。……が、俺にはアナウンスが来なかった。ステータスにも表示されていない。


「そこのお前は解体がまだできてないな。もう一度だ」

もう一度やるのか……。俺は肩を落とした。


 女性は既に取得しているのにも関わらず、やり方を教えてくれた。そのおかげもあって二度目で取得することができた。解体スキルには素材は少なくなるが、簡単なオートモードと、大変だが全ての素材を入手できるマニュアルモードがあるらしい。もう絶対にマニュアルではやらない。



「ありがとうございました。お礼ができると良いんですけど……」

「気にしないで。お節介だから。でもお礼をしてくれるっていうなら、何か良い情報をくれないかしら?」

「情報……。瞑想ってスキルはご存じですか?」

「ごめんなさい。それは知ってるわ」

誰も知らないスキルがあれば良いんだけどな……。ポイントで取得できないスキルなら良い情報になりそうだが。


「精密動作は?」

「モンスターが進化するときに覚えることがあるスキルと聞いているわ」

「進化以外でも覚えましたよ」

肩をガシッと掴まれた。STRが高いのか、かなり痛い。


「あっ、ごめんなさい。レベルでスキルを覚えるなんて聞いたことがなかったから……。βテストの時、何か変わったことをしていたなら教えてもらえますか?」

「すみません。思いつかないです。一緒に戦ったり、可愛がったりしていただけなので」

「好感度が条件? 隠しパラメータがいくつかあるのかしら……。ありがとう。良い情報だったわ。検証してみようと思います」

「お役に立てて良かったです」

「もしよければ、フレンド登録しませんか? あなたからは良い情報が得られそうです」

差し出された手を握る。


『Strings さんからのフレンド申請を承認しますか?』

Yesを選ぶ。フレンド登録が完了した。

「リックさん。何か良い情報を手に入れたら、教えてください。私の仲間が情報屋をしているので、買い取ります」

「リックで良いです。Stringsさん。はい、ぜひお願いします」


 初めてのフレンドとギルドで別れた。ギルドから出ると外はすっかり暗くなっていた。現実の時間はまだ早いけど、解体をしていたせいで疲れたな。


 俺は朝ごはんに肉が出ないことを祈りつつ、ログアウトした。



 宿題を少し片付けてからログイン。ゲーム内では朝六時くらいか。


 早速、草原に出てモンスターを狩ってみる。小さいため、少し攻撃しにくいが、兎も蛇も無傷で倒す事ができた。ゲームの操作に慣れてきたかも。


ホーンラビットの角×2

ホーンラビットの肉×1

ポイズンスネークの舌×3

ポイズンスネークの革×1


 ホーンラビット二匹、ポイズンスネーク三匹を倒した結果だ。確定ドロップの角と舌は一つずつだが、解体によって新たにドロップした素材はドロップ率が低いらしい。モンスターを倒していけば解体は自然とレベルが上がるだろう。楽しみだ。



 本命のワイルドウルフを倒すために森へやってきた。索敵してくれるパートナーがいないので、ゆっくり進みながら探す。


 森の深いところに入らないようにしながら探していると、運よく一匹で歩いている狼を見つけた。


「強化STR、強化VIT、強化AGI」

できる限りの強化をかけて狼の前に飛び出す。狼は怯む事なく俺に向かってくる。俺は狼に突きを喰らわせる。――外した。攻撃は足に掠った程度。狼の勢いを殺す事はできず、そのまま攻撃をくらってしまう。


 転がりながら距離を取る。起き上がりながら回復をかける。一筋縄じゃいかないな。狼は距離を詰めてくる。こうなると、突きで攻撃しようとするのは悪手だ。


 槍を先ほどより短く持つ。狼の攻撃を躱し、隙だらけになった胴体を叩き切り、もう一度攻撃態勢を整える前に追撃する。何度か攻撃するとピクリとも動かなくなった。ドロップアイテムは牙と毛皮。――良かった。俺は槍を支えにして座り込んだ。


リック

種族:人間ヒューマン Lv.4

HP:20/20

MP:10/40

STR:10(+3)

VIT:5

INT:25

AGI:10

【スキル】

使役 槍術Lv.3 回復魔法Lv.1  強化魔法Lv.2 毒術Lv.3  麻痺術Lv.3 鑑定Lv.3

【装備】

初心者の槍 STR:+3  耐久:∞

残りポイント:8


 一度の戦闘にMPを20使ったため、MPを二十増やし、二回フルで戦えるようにした。


 俺は今日のログイン制限に達する前に、戦って、戻って、回復を繰り返しながら毛皮を十個集め終えることができた。


 さっさとギルドに行き、渡しておく。これで借金? はなくなったな。


 興味本位で返さないとどうなるのかと聞いたところ、ギルドカードに犯罪歴が載り、他の町を利用できなくなるそうだ。



 次の日、ログインするとNPCらしき女性が俺に話しかけた。


「あなたが薬草を下さったマスターですね。ありがとうございます」

昨日薬草を渡した女の子の母親らしい。怪我をしたところだろうか。手に包帯が巻かれている。


「この包帯ですか? 実はモンスターにやられてしまったんです。これは森に材料を取りに行った時にワイルドウルフにやられた傷です。普段ならこんなミスをしないのですが、復魂祭が近づいていて、モンスターが強くなっているんです」

「復魂祭?」

「一年に一度、この町の南にある神殿で行われる祭りで、異なる世界との繋がりが深くなる時期に開催されるそうです。異なる世界の邪気も呼び寄せてしまい、モンスターが増えるんです」

異なる世界ってもしかしたらβ版の世界だったりしないか? もしかしたら、ユキと小夜に会えるかもしれない。


 ただ、南に行くにはゴブリンがいる森を抜けなければならない。


「その祭りってあとどのくらいで開催されるんですか?」

「あと三ヶ月後かしら。でも、今年は開催できないと思います。神殿は魔物に占拠されているので」

三ヶ月後までに神殿を解放するクエストがありそうだな。それにはなんとしてでも出なくては。


「しんみりさせてごめんなさい。このクッキー、良かったら食べて。モンスターでも食べられると思うわ。簡易的なものだけど、この地図を渡すわ。この町に慣れてなさそうだったから。赤い丸が私の店よ」

女性はクッキーを握らせ、自分の店の宣伝をすると去っていった。


【チュートリアル クエストをクリアしよう】…clear

【お母さんを救え!】…clear

【雑貨屋の悩み1】


 クエスト一覧を開くとクエストが完了していた。クエストの完了は報酬を受け取ったタイミングみたいだ。次に表示されているのはあの女性のクエストだろう。彼女の代わりに森で材料を取ってくれば良いのかな? 数字が書かれているからチェーンクエストだろうか。


 握らされた地図を見ながら、彼女の店に行くことにした。

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