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週末だけ冒険者のおっさん達  作者: 小雅 たかみ
第四章
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第97話 対立

 こうしてノリス達はいつも通り平和に駄弁りながら、次の目的地である『初心者の街』を目指す。

 途中にある街で少し休憩を挟んだり、前回は特にクロード達の特訓に付き合ったので、かなりまったりと気ままにブラブラと適当に進んだ。


街中もそうであるが、魔物蔓延る外の世界でさえ、相変わらず何かに巻き込まれる事も無く、まったく華の無いおっさん四人が会話に花を咲かせて平和にのんびりと荷馬車に揺られていた。



 ノリス達の目の前に広がる街を超え、その先の次の街が目星を付けていた目的地。

 中年の体で何日も移動は堪える……やっと移動も終わる……そんな少しだけ気分が良い雰囲気のノリス達は、目の前の街で、少しだけ変わった光景に出会った。



 その街は前回クロード達と出会った街と同じような規模ではあるが、あの街には『肉屋』が居た。だからこそ、規模に対してかなり活気があった。この街は、あの街と比べると若干劣るかもしれない。寧ろ、あの街が異常だったと言った方が正しい認識なのかもしれない。

 とは言え、魔物対策でしっかりとした外壁が街全体をすっぽり包むように築かれており、街の中へ入る門もしっかりした作りで、その門から色んな職の人々が外へ向かい、更に門番達が声を掛け整理し、街へ入る順番待ちの人々が列を成していた。


 その光景自体は他の街とそう変わらない。


 しかし、街へ入る順番待ちの列が、何故か二列で綺麗に別れていた。


 一つは貴族用でもう一つが平民用。もしくはどちらかが冒険者専用なのか?とノリス達は予想したが、並んでいる人の雰囲気を見ると、どちらの列も様々な人であふれていた。

 強いて言えば、あまり人が並んでいない列の方が、身なりの良い人が多かった。貴族風の良さげな馬車が並んでいたりもしていたが、その後ろには農家っぽい人達も一緒に並び、冒険者や商人も居た。

 勿論、長い方の列にも同じように様々な職種の人が居た。


 活気も無くはないが、あの街とは少し意味合いが違っていた。どちらかというと何故か若干ピリピリしていた。


 いまいち別れた二列の意味が分からなかったノリス達は、とりあえず並ばなければ街へ入れないので、並んでいる人が少ない方に、合流してみた。

 すると、ノリス達が並ぶ一つ前の、商人を護衛していた冒険者パーティの一人から声を掛けられた。


「よお!アンタ達は誰からの紹介だ?」


「んあ?紹介?」


 いきなり紹介と言われて、訳も分からず御者台のノリスが聞き返すと、相手は鼻で笑った。


「フンッ。なんだ。ココへは初めてか?

なら、並ぶ場所が違うぞ。

この列はこの街の次期領主であらせられる、領主様の長男マッシュ様を支える者達だけのものだ。

だから全員がこのエンブレムを付けているか、エンブレムを付けた者からの紹介じゃない限り、並んでも街へ入れんぞ。」


 そう言って冒険者は、胸についたエンブレム……葉の生い茂る山のような木が一本立ちそびえる模様の入ったエンブレムをノリスに自慢げに見せてきた。

 ノリスもそうだが、荷台に居たイド達も身を乗り出して、その冒険者が掲げるエンブレムを見つめて不思議そうな顔をし、お互いに顔を見合わせた。


 ノリス達は目の前に広がるこの街について、ただの通り道であり、その先の街こそが目的地でもあった為あまり下調べをしてこなかった。そのせいでエンブレムが何なのかまったくの無知であったが、そんな街もあるあるだと思いそういうものかと受け入れた。


「なるほど。では、もう一つの列に並べば良いのか?」


 親切に教えてくれた冒険者へ聞き返すと、相手はノリス達を舐めまわすように見て、またしても鼻で笑い、ニヤけながら同意した。冒険者と同じパーティメンバーも似たような視線をノリス達に贈って笑っていた。


「……フッ。そうだな。アンタ達なら、向こうがお似合いだ。

あっちの列は数だけは多いからな。数だけは!」


 応える冒険者やその返答に頷くパーティメンバー達。

 視線と言い、返答と言い、完全にノリス達を馬鹿にした発言ではあったが、それについてノリス達は慣れているので、特に気にならなかった。ノリス達を何処からどう見ても、旬を通り越したおっさん四人のEランク冒険者パーティ。どこへ行っても大体初めは似たような態度をとられることがあったからだ。

 しかし、どちらかというとノリス達よりも、もう一つの列に対して上から目線が酷く強調されているようにノリス達は思った。


 その感想は正しかった。

 丁度ノリス達付近に並んでいたもう一つの列の中に、同じような護衛中の冒険者達が、ノリス達との会話を聞いていたらしく猛反発しだした。


「ふざけんな!お高くとまりやがって!

俺達の方が質だって良い。数は当然……あぁ、そうか。もうお前達に残ってるのは、ありもしない品格ぐらいか。せいぜいソレにしがみついておけば良いさ。」


「なんだと!?この野郎!」


「大体、何を勝手に次期領主って決めつけているんだ?

次期領主は、領主様の次男ヴァンフ様になるってのによ!」


「「そうだ!そうだ!」」


「これだから馬鹿の相手は面倒なんだ。

普通に考えれば次期領主は長男のマッシュ様で決まっていることだ。」


「「その通りだ!」」


 別れた列の冒険者同士、火がついたように激しい口喧嘩が始まった。

 他の者達も止めるでもなく、次から次へと、逆に油をばら撒くように同意したり喧嘩へ参戦しだした。



 ノリス達はようやく理解した。


 ここへ着いた時に感じたピリピリとした雰囲気……そして二つの列。


 この街は、次の領主が誰になるかで揉めている最中であり、領主の長男マッシュと次男ヴァンフ……それぞれを支持する者達で綺麗に二つへ別れ、いがみ合っているようだった。

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