第96話 道中
「……と、まぁこんな感じだな。」
前回のノリスと同様、次の目的地まで荷馬車でのんびり移動しながら、改めてイドは自分の過去を話した。
「イド!あの時にも言ったが、俺達のせいにし過ぎじゃね?」
イドが話す内容に不満を持って、ノリスは文句をブー垂れた。
「……なら、僕らもノリスのせいだね。」
「アハハッ。そう考えれば私達もそうかもしれませんね。」
しかし、何故かエストとサウルがイドに追従した。
「ちょっ!?エスト?サウルまでもか!
ていうか、厳密に言えば俺じゃねぇだろ!この前言ったが、王『生ゴミ』のせいだ。」
「フッ。『四神獣』の崩壊は全て『玄武』から始まった。だが、結成は俺らの『青龍』からだからな。差程恨んでなどいないさ。」
「当たり前だ!
セガル達が勝手に俺をアテにして崩壊しただけじゃねぇか。それを好き勝手に俺のせいだと恨まれたら、たまったものじゃねぇ!」
「そうだな。ノリス達じゃなくとも、いつか別の『玄武』が出てきただろう。そうなれば一緒だったかもしれん。
エストとサウルも俺らの流れだったとはいえ、後悔しておらんのだろう?」
「こうしてエストと一緒になれるなんて思っていませんでしたから、逆に私は良かったかもしれませんね。」
「……僕もそう。」
意味ありげにイドは二人へ振ると、サウルとエストはやはり意味ありげに同意した。
『四神獣』は、【英雄】になるまではバラバラなのだが、解散はほぼ同時期であった。
イドの言う通り、『玄武』が始まりで、直ぐに『青龍』が、そして次に『白虎』が、最後に『朱雀』が……トントン拍子で解散に至った。
『玄武』と『青龍』の理由はそれぞれが話した通りである。勿論、『白虎』と『朱雀』にもある種の問題を抱えていた事もあったが、そうして出来た解散の流れに『白虎』と『朱雀』は巻き込まれていたのだった。
「そういえば、二人になってから、すぐにエストのところへ向かったのですか?」
「……それにしては少し時間がかかってたような。僕らを探すの大変だった?」
サウルとエストは、イドとノリスが『週末のひととき』を結成してから、それぞれ自分のところへ合流するまでが気になった。
「ああ。それか……お前らと合流する前に俺らは既にイドとノリスだっただろ?だから登録とEランクまでのランク上げを適当な街でしてから、向かったのでな。」
「アーロンとブルースのまま移動していては、色々面倒だからな。割とすぐに再登録したんだ。」
「……確かにそうかも。」
「それでは前に言っていた、ノリスが大丈夫だった受付嬢もその時に?」
サウルはある事を思い出して、イド達に聞く。
以前、ゴブリンのダンジョンでアレクが居た組合で『豪雨』達と話し合った、ノリスが唯一生ゴミと認識しなかった受付嬢の話だ。エストやサウルが知らなかったので、イド達二人の時期に出会っているのは確定していた為、その頃だろうとサウルは予想し、イドも肯定するように頷いた。
「その通り。再登録の際だな、サウル。
フッ。懐かしいな。アレは本当に酷かった。」
「そんなに酷かったか?普通だっただろ!」
「アレのどこが普通なものか!
俺もそこまで欲がある方では無いがな。確か【ジェシカ】と言う、まさに組合の受付嬢らしく、俺が見ても美人で出来る女だったな。だから、再登録の時も一目で俺の正体がバレたし、俺らの会話の内容でノリスのことも気づいたようだった。まぁ、賢い女かと問われると微妙だな。その後が大惨事だったからな。
やたらとノリスへ手取り足取り、ほぼゼロ距離で再登録の手順を説明しだしたのだ。直後、盛大にノリスのゲロを頭から被って、取り乱すわ、泣き出すわで、更にその後の説得やら事情説明が本当に大変だった。」
「アハハッ。その光景が目に浮かびますね。」
「……でも、そのお陰で再登録も出来たし、Eランクまでは上げれたんだね。」
「ま、そうだな。翌日からは普通になったから、Eランクまでは毎日通うことも出来たんだ。」
「だから、お前が普通って言うな!まるで鋼鉄の仮面を被った女を普通と言える方がどうかしてるぞ。
彼女は最初の数日間、ノリスへの対応と他の冒険者への対応を都度変えていたらしいが、次第にずっとノリスの時で固定されるようになったのだ。俺らがEランクに上がる頃には『氷のジェシカ』と他の冒険者達からも呼ばれていた程だな。可哀想に……アレじゃ組合内で出会いもへったくれもないだろうに。」
「……本当に可哀想。」
「よくソレで責任問題に発展しませんでしたね?」
「ああ。なったぞ?だが、結婚という形では責任とれんだろ?相手はノリスだぞ。
だから、Eランクに上がって俺らがその街から出て行く時に、彼女が一生働かなくても良い分の金を渡したのだ。」
「痛い出費だったが、俺達の素性を知っても黙って偽名で再登録してくれたし、Eランクまでなるべく早く上げれるように手配もしてくれたからな。かなり助かったんだ。」
「……それって……早く出て行って欲しかったんじゃ?」
「その通りだな。だが、残念ながら彼女の期待に応えられなかったのだ。
俺らが出て行く時、「泣いて喜びたいのですが、どうやって泣いたら良いのか分からなくなりました。」と言われたな。」
「アハハッ。すでに遅かったのですね。」
「まぁかなりの額を渡したから今頃は組合も辞めて、悠々暮らしているだろう。なので、感情も取り戻しているのではないかとは思っているがな。」
「……僕も心から願うよ。でも、何処かで鉢合わせたらヤバそう。」
「それは確かにあり得そうですね。」
「待て待て。俺も嫌だからな?」
「だから、お前が言うな!」
すみません。のんびりしすぎて、まったく書けてません。
なので、まったりと宜しくお願いします。




