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週末だけ冒険者のおっさん達  作者: 小雅 たかみ
第三章
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第88話 師弟

 セガルとの戦いから二日後の昼前。


 クロードはようやく本来の調子を取り戻してきたと実感していた。いや、昨日の夜には取り戻していたのかもしれないが、久しぶりに戻ってきたアンジェと……そのお陰で、若干の気だるさは残っていた。

 そんなまったりとしたクロード達の家に、肉屋の代表、ジャン、そしてセガルの三人が訪ねてきた。


「よぅ。クロ坊。もう調子は大丈夫そうだな?」


 慌てて招き入れるクロードに、笑いながらジャンは気楽に声をかける。


「はい。色々とご迷惑をおかけしました。それで……そのぅ……セ、セガル様……」


 クロードは代表やジャンには慣れた様子だったが、最後の一人のセガルには、どうしてもよそよそしくなっていた。


 何故ココに来たのか?それはアンジェが居るから当然だ。

 イドさん達が終わらせてくれたが、俺達はセガル様にボコボコにやられた。まだ俺達を認めてくれていない可能性も十分にある。

 そんな事をクロードは思って緊張した。


 クロードの隣に居るアンジェも、普段より緊張した面持ちで、セガルと向き合っていた。


「し、師匠……。」


 更にケイト達も同様だった。しかし、そんなクロード達とは裏腹に、セガルは至って普通だった。


「気にするな。アンジェ。それに……クロードだったか?他の者達も。

今の俺はもうそんな気分では無い。普段通りで構わぬ。

だが、アンジェよ。本当に良いのか?」


「……はい。例え、師匠と呼べなくなったとしても……私の居場所はココに……ココに居たいと心から想っています。」


「阿呆が。破門になどするか。気にするなと言った。」


「で、ですがっ!」


「ブルースにも言われただろう。こやつらの戦いでお前もお前自身を見たはずだ。」


「はい!私は、あの時見た私になりたい。

クロードだけではありません。ケイト、メリル、エマも……皆が私を待ってくれていた。その期待に応えたいです!」


「……そうか。ならばもう何も言わん。アンジェ。お前の好きなようにすればいい。

だが、困ったら今までのように頼れ。俺はいつまでもお前の師匠で、お前はいつまでも俺の可愛い弟子だ。」


「し、師匠……ありがとうございます!」


 アンジェは嬉しさのあまりセガルの元まで駆け寄った。そんなアンジェを受け入れるように、セガルはアンジェの頭を撫でる。


 師匠と弟子……いや、まるで父親と娘だった。


 セガルを誰よりも尊敬するアンジェと、何よりもアンジェを可愛がるセガル。だからこそアンジェの鎖は中々切れず、だからこそセガルはあれ程怒ったのだ。しかし、それも過去の話。

 嬉しさで溢れ出るものを拭うアンジェをセガルは慰め、励まし続けた。その光景をクロード達や代表は暖かく見守った。


 アンジェが落ち着くと、セガルは急にクロード達へ頭を下げた。


「すまんな。此度は俺の暴走で、お前らに多大な迷惑をかけた。」


 あの誰もが知っている超有名な『竜爪』のセガルが誠心誠意をもって謝罪した。クロード達にとっては恐縮しない方がおかしい。


「い、いえ……セ、セガル様。頭を……上げてください。俺達を認めてくれたのなら、それだけで十分です。」


 クロードはなんとかセガルの謝罪を辞めさせようと取り繕うが、頭を上げたセガルはニヤリと笑った。


「ああ。それは今でも認めておらんがな。フハハッ。まともに取るな。半分は冗談だ。

認めてもらえるよう頑張ったお前を俺は殺した。お前が壁役として生き残ることこそ、俺が認めたと言われかねなかったからな。だから、俺はやりすぎた。

それにアレを使ったのだ。ブルースならどうにかすると半ば確信していたからかもしれんが、俺は実際に撃ったのだ。あの場でお前達を……更にはアンジェまでをも巻き込む規模の【破龍穿槍】をな。

弟子だからとか、認めないとか、俺が言えた義理ではもうないのだ。」


「「……。」」


 自身でやらかした失態に、失望の色を含んだ瞳でセガルはやさぐれた。確かにセガルはやらかした……が、誰もがそうなる可能性はあった。セガルの気持ちを誰もが理解できたからこそ、誰も何も言えなかった。

 しかし、暗い雰囲気を払拭したのは、一番最初に醸し出したセガルだった。


「心配無用だ。アイツらから耳にタコが出来る程、ボッコボコに言い負かされてきた。今では逆にスッキリしておるよ。」


 セガルは少し恥ずかしそうに笑う。


 あの説教は正座だけでは終わらなかったのだった。あの後、事務的な話を終えて、ようやく解散かと思いきや、そこからまた説教が始まった。

 今度はエストだけじゃなく、イドやノリス、サウルも加わって……彼ら全員の正体も知った後だったので、何故か説教度合いも強くなった。知った仲だからこそ、エスト達の遠慮がなくなったのだろう。


 セガルは『青龍』の一人。年齢もイドと同じ。お陰で、説教を受けるなんて事はもう記憶にすら残って無い程だった。どちらかと言えば説教する側だ。

 そのせいで、説教途中にセガルが笑ってしまったのも仕方が無いのかもしれない。更に説教が苛烈になったのは言うまでもないが。

 セガルが言うように、本当にフルボッコになり、色んなものから解放されて、身軽になっていた。


 その現場を実際に見ていた代表やジャンは苦笑し、クロード達も笑う大人達を見て多少明るくなった。

 そんなセガルの発言を聞いて、クロードは肝心な事を思い出す。


「あの。ノリスさん達は……。」


 この大人メンバーなら、彼らが居てもおかしくないとは思っていたが、ノリスさん達は、あまり活発とは言い難いので、居ないのも普通ではあった。だけど、何か良くない予感がした。


「ノリス?あぁ。アー……あー、アイツらか。」


 セガルはおかしな感じでごまかしていた。

 クロードは知っているが、ケイト達は知らないので不思議な顔をし、アンジェは師匠の変な言い方にクスッと笑った。セガルは若干不貞腐れていると、代表がセガルの代わりに悲報を伝えた。


「彼らは……この街から去りました。」

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