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週末だけ冒険者のおっさん達  作者: 小雅 たかみ
第三章
74/104

第74話 合同Ⅱ

「ふふぅん!今度は私が特訓してあげましょうか?」


 ノリス達の戦闘風景を見て、戦闘が終わった後にケイトが胸を張って言い放った。


「嘘?何故?意味不明過ぎ。

模擬戦の時は私達よりも断然凄かったのに、さっきのはどう見てもグダグダだった。」


 その横でメリルも混乱していた。エマも続こうとしたが、二人の言い分を聞いていたサウルの顔色を一目見て、言葉を飲み込み無言を貫いた。

 渋い顔をするイド達の空気を察して、ノリスは強引にクロードの肩を組む。


「なぁ?クロード。あの『生ゴミ』達は何て言ったんだ?」


 額に血管を浮き上がらせたノリスにクロードは苦笑しつつ、かなり言葉を選んでいた。


「ハハハッ。二人とも……少し驚いているだけですよ?ケイト、メリル!そうだよな?」


 声をかけて、ケイトとメリルに現状を認識してもらおうとするクロード。振り返った二人は、かなりキレ気味な様子のノリスにしっかりホールドされたクロードを発見して、まだ言い足りなかったみたいだが口撃を急ブレーキさせていた。

 それでも納得できなかったようで、ノリスに聞こえないように、ケイトとメリルは一緒に特訓して気さくに話せるイドとエストへこっそり聞く。


「ねぇ、イドさん。貴方達は本当に私と同じ剣士なの?」


「別におかしなところなど無いだろ?……そんなことを思う程、変なのか?」


「一人一人を個別に見たら普通なのだけど、四人揃ってると流石に誰でも分かるわ。」


「うん。物凄くギクシャクしてる。なんだろ?

私は剣士じゃないから具体的には言えないけれど……歯車がかみ合ってない?そんな感じがした。」


「……ケイトなら分かるの?」


「メリルの表現を補足するなら、貴方達の歯車は別にあるでしょ?だから、メリルはかみ合っていないと感じたのよ。」


 ケイトは的確にイド達を言い表した。イドとエストは一瞬ドキッとしたが、顔には出さず落ち着いた雰囲気を崩さずにケイトへ聞き返す。


「俺らは剣を振って普通に戦っているつもりなんだがな。」


「……うん。剣士でしょ?」


「違うの。いいえ、それであってるから違うのよ。

貴方達は、貴方達が言うように、本当にただ剣を振っているだけなのよ。

さっきも言ったけど、個別に見たら変じゃないの。私だって似たような場面はあるわ。でも四人全員が一緒だと異常なの。だって……誰も、一度も、剣士スキルを使っていなかったじゃない!」


「ああ、ケイト!何かおかしいと思った原因はソレなのね!」


「「……。」」


 イドとエストは無言を貫く。しかし、内心は酷く焦っていた。

 まさか、剣士スキルを使わないだけで、バレるとは思ってもいなかった。当然、イド達全員が元々剣士ではないので、剣士スキルは習得すらしておらず使えない。だけども、オーク程度なら通常攻撃で倒せる為、剣士スキルを使わずともバレはしないと思っていた。

 しかし、その思考すらもケイトに先回りされた。


「通常の攻撃で倒せるから、必要無いと思ってる?

外から見ると、幼い子供達のチャンバラごっこのようだったわ。そのチャンバラごっこでオークを倒してしまっていたのよ?ゴブなら変じゃないけど、オークでソレをやられたら、Eランクなんて詐欺ね。しかも全員が無傷で終わるのよ?もう異常だわ。」


「わかる!言われてみれば、遊び……そうね。その通りだった。何故か真剣味が足りないと私も思った。それがスキルなのね。」


「ええ。メリルだってそうでしょ?私だって、ここぞと言う時はスキルを使うわ。

決めるべき時に決める。それがイドさん達には全く無かった。だから、本当に同じ剣士なのか疑問に思ったわ。」


「なるほどな。

だが、ケイト。その疑問に俺らは答えないと言ったはずだ。」


「……でも、イド。良い事教えてもらった。」


「そうだな。このまま連携強化もありだが、今のままでは他の者からも言われそうだな。」


「……うん。スキル覚えよう。」


「フッ。この歳で覚えられるか微妙だがな。」


「なら、私が教えましょうか?今まで本当にお世話になったし。」


「私も手伝うよ?」


「……クフッ。ありがとう。でも、ごめんね。」


「俺らにはノリスが居るから、ケイト達では無理だな。

ともあれ、それは帰ってからの相談だな。今はまだダンジョンだ。まだまだ時間もある。もう少しダンジョンを楽しまないとな。」


「そうだった。ケイト、この話はまた後にしよう。私達のも、まだしっかり見てもらってないよ。」


「え?ええ。そうね。」



 そうして、一先ずノリス達の異常さは置いておいて、ケイトとメリル、イドとエストは他の者達と合流し、合同のパーティでダンジョン探索を楽しんだ。

 その後は交流をしつつ、交代でオークを倒しつつ、探索後の夕食もノリスだけは一人カウンターに行ったが、全員で和気あいあいと話しながら、週末を遊んだ。


 クロード達と別れ、ノリス達は家に帰ってからケイトが言っていたことを少しだけ話し合った。スキルの話はノリスやサウルも想定していなかった為、前向きに検討することとなった。すぐに始めないのは、スキルの練習など何処でも出来るからで、現状オークのダンジョンに居る時に練習しているのがもったいないと思ったからだった。なので、この街に居る間は連携訓練をして、何処か違う街へ行った際にスキル練習をしようと決めていた。



 ノリス達の平凡な日々がまた続く。


 クロード達は今回で満足したようだし、当分は問題無さそうだ。たまに会えば会話ぐらいで十分だろう。そして、いつか卒業していくだろうと思いながら、ノリス達はいつもの仕事をする。

 クロード達のことで、この街に来てから今まで色々あり過ぎた。これからは何の起伏も無い、素晴らしい時間が続くだろう。

 良い事も無いが、悪い事も無い。更には面倒事も無い。それが何より実に良い。



 気分爽快のノリス達は一つ忘れていた。


 それに気づいたのは、ある日の午後。ノリス達の家に『肉屋』のガンダルが駆け込んだ時だった。

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