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週末だけ冒険者のおっさん達  作者: 小雅 たかみ
第三章
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第69話 特訓ークロード達ー

 迫り来る棍棒をクロードは「シールド」と呟き、【魔法の盾】(マジックシールド)で跳ね返す。

 弾かれてぐらついたところにメリルの矢が当たり更に体勢を崩す、追撃で薙ぎ払おうと踏み込んだ足をケイトが斬る。

 メリルとケイトの攻撃により、威力が弱まった横薙ぎをクロードは右腕に装備した盾で受けつつ、上方向に薙ぎ払いを流す。


「今だ!」


 薙ぎ払いが上に流されて胴体がガラ空きになったところに、クロードの脇から長い棒を持った者から強烈な突きが放たれて、深々と胴体に突き刺さり、吹っ飛んでいった。




 特訓もかなりの月日が経ち、今ではクロード達パーティ全員が合流し、本格的な戦闘風景になっていた。



「はい。そこまでです!随分良くなりましたね。」


「……うんうん。もう実践も行けるはず。」


 見学していたサウルとエストから、太鼓判を押されるクロード達。

 エマから回復を受けていたクロード達は嬉しそうに二人からの賛辞を喜んだ。


 吹っ飛んだオーク役のノリスがムクリと起き上がり、


「だな。クロード達は問題無いな。

……だが、顔のイカついアンジェは、力と殺気を込めすぎだろ!!

てめぇ、さっきサウルがオーク役の時とは攻撃威力が段違いじゃねぇか!?」


 長い棒を持つアンジェ役に不満をぶつける。


「あぁ。すまんな。

つい、日頃の恨みが篭ってしまったようだ。」


 アンジェ役のイドはスッキリした顔つきで、飄々とぶっちゃけた。


「ふざけんな!

次は俺がアンジェ役をやる。そしてイドがオーク役をやれよ!」


「おいおい。この役を押し付けたのはお前だろ?

大体、ノリスにこの役は務まらん。諦めろ。」


 ノリスとイドは、いつも通りだった。

 クロード達も二人のじゃれ合いにはもう慣れたようで、誰も止めず、落ち着いていた。


「はいはい。イド、ノリス。言い合いは向こうでやっててくださいね。

さて、クロード君達。先程の戦いの反省会をしましょうか。」


 サウルはイドとノリスのじゃれ合いを放置し、クロード達を別の場所へと移動、そこで話し合いをさせた。

 クロード達は一人一人意見を言い合い、時には笑い、時には対立しながらも、互いの理解を深めて、パーティの完成度を高めていた。


「……でも、イドさんってホント何者なの?

オーク役はまだしも、まさかアンジェの代わりが出来るなんて思わなかったわ。」


「ですね。たまにアンジェかと勘違いしそうに何度かなりましたもん。」


「……ケイト、エマ。イドさん達にそういうのは無しだと言っただろ?

とにかく俺達の事を優先しよう。エストさんも言ってたから、多分本番はすぐそこだ。」


「うん。というか、もう大丈夫そうな気がする。」


「アハハッ。ケイト君、エマ君。クロード君の言う通りですよ。」


「……ボロは出まくってるけどね。」


 会話の中で、アンジェ役を担ったイドについての話題になっていて、ケイトを始め皆が、まさにアンジェかと思う程のイドの動きに驚きを隠せず、サウルに笑われた。更にエストが、二人のじゃれ合いを見て呆れていた。



「……だろ!要するにセガルのように動けば良いんだろ?楽勝じゃねぇか!」


「馬鹿か?お前が知ってる頃のセガルなら論外だ。

もしそれを体現してみろ。オーク役など放り投げてボコボコにするからな。」


「なら、なんでセガルをボコボコにしねぇんだ!

最後の方は、あの『生ゴミ』達ですらも散々言っていたんだぞ?」


「あの頃はどうしようも無かったのだ。仕方が無いだろ。

大体、今も何が悲しくてセガルの真似なんてしなきゃならんのだ。

金輪際、絶対にしないからな?」


「その文句を俺に言うな!

戻ってこない『生ゴミ』にでも言っておけ。」


 続いていた二人のじゃれ合いは、確かにエストの言う通り、ボロがボロボロと零れ落ちていた。


 ケイト達は前からも思っていたが、元【英雄】であり、『青龍』としてかなり有名でもあり、アンジェの師匠でもある、『竜爪』のセガルを有り得ない程ないがしろにした発言内容に驚愕しており、クロードだけは苦笑していた。

 流石に続けさせるとボロどころじゃ収まらないなとサウルは思い、二人のじゃれ合いを止める。


「イド、ノリス。もうその辺りでやめませんか?

クロード君達の今後もありますし、そちらの話をしましょう。」


 イドとノリスは渋々じゃれ合いを止めて、サウル達と合流する。


「さて、クロード君。

確かにメリル君の言うように、もうダンジョンに行けそうですが、アンジェ君が居ない場合も少し練習しておきましょう。

アンジェ君から、まだ何も連絡はないのでしょ?勿論、戻ってくる前提で君達は待つ選択をした。それについては何も言いません。君達パーティの事ですからね。

ですが、これではいつまで経ってもダンジョンへ潜れません。イドがずっと付きっきりは無理ですからね。

もしくは、イドを加入させますか?」


「サウル。冗談が過ぎるぞ?」


「ハッ。面白そうじゃねぇか。

クロード。安く貸し出そうか?」


「い、いえ。流石に申し訳ないですから、大丈夫です。」


「……イド、フラれた。」


「違っ……」


「クロード。多分、エストさんの冗談よ。

でも、これは私達の問題です。私達が待つと決めたのよ。待ってる間に誰かを入れるなんて、アンジェにも……イドさんにとっても失礼だわ。」


 焦るクロードにケイトは笑いながらも真面目に、そして丁寧に、イドを尊重しつつ、提案を断った。


「フッ。お前らがそう決めたのだ。当然、話し合っているのだろ?

良いだろう。オーク役は俺がやろう。それを見せてみろ!」


「「はい!お願いします!」」


 クロード達は四人で、オーク役になったイドへ立ち向かう。


 それを見つめながら本当に特訓がもうすぐ終わるのだとノリス達は感じていた。

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