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週末だけ冒険者のおっさん達  作者: 小雅 たかみ
第三章
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第68話 特訓ークロード&エマⅡー

 詠唱破棄に成功し、ギリギリでエマを守り抜いたクロード。


 いつもはまるで親犬に甘える子犬のようにノリスへ尻尾をブンブン振っているような雰囲気だったが、今だけは真逆で相当怒ってノリスに食ってかかった。


「アンタ!俺の魔法が間に合わなかったら、エマは……エマは!

もし、取り返しのつかない事になってたら、絶対に許さないからな!?」


 そんなクロードをまったく意にも介さず、いつも通りの対応をするノリス。


「間に合ったじゃないか。詠唱破棄の成功、おめでとう。

というか、もうそろそろ出来てもおかしくなかったんだ。出来るならさっさと使え!

それに、取り返しのつかない事だぁ?馬鹿野郎。後ろを振り返ってよく見ろ!」


 ノリスの言い方に疑問を持ち、少しだけ落ち着きを取り戻して、クロードは後ろに居たエマを見る。

 当たると思い込んだエマはしゃがみ込んで震えていた。その手前に自分が張った【魔法の盾】(マジックシールド)が今も存在し、鉄壁の守りを表現していた。

 大岩が【魔法の盾】(マジックシールド)にぶち当たり、欠片や土煙で辺りは見えにくくなっていたが、落ち着いて目を凝らすと、クロードが展開した【魔法の盾】(マジックシールド)としゃがみ込むエマの間に、更に【魔法の盾】(マジックシールド)が存在していた。


「えっ?」


「あのな。手本を見せてただろ?俺の発動速度は今のお前よりも断然早いんだぞ?

もう一度言うが、取り返しのつかない事?起こる訳ねぇだろ!」


「あっ……。」


 ようやくクロードは理解した。


 エマの反応が悪かったのは自分でも気づいていた。理由はよく分からなかったが、ノリスさん達がやった企みは、エマへの注意というか警告だと思っていた。

 やり過ぎだったので怒ったのだが、多少は反応の悪いエマに対してイラっとした感情が無かったとは言いきれなかった。


 だけど、それすらも利用して自分の成長を促しているとは思いもしなかった。


 詠唱破棄はもしかしたら出来るかもしれないと、最近は思うようになった。ノリスさんから言われれば、すぐにでも挑戦していたはずだ。

 でもそれではダメだった。そう思うからダメだった。


 自分で選んだ道だ。自分で変わっていかないといけない。変わらなきゃと言ったのは自分だった。


「すみません。俺は……今まで甘えていたんですね。」


「気にすんな。お前は十分過ぎる程頑張っている。

それに大きな一歩を自分の足で踏み出したばかりじゃないか!まずはそれに喜べ。」


「はい!」


「だがな。ここからが大変だぞ?

詠唱破棄が出来るようになって、ある程度使い物になるだろう。お前も当然これから組み込んでいく予定だろ?

最初に言ったはずだ。これは使い所が難しい。

全ての攻撃を【魔法の盾】(マジックシールド)で受けると魔力がもたない。だが、持ってる盾で受けるにもお前自身の耐久力も足りない。要は攻撃に対してどちらが正しいのか常に正確に判断して受けなければならないんだ。」


「……そうですね。

ちなみに、ノリスさんは以前、どうやって対処していたのですか?」


「俺か?俺はお前と正反対だな。大体、身体的に違うだろ?

ほぼほぼ実際の盾で受けきって、【魔法の盾】(マジックシールド)は緊急時以外ほとんど使っていなかったな。」


「それも……そうですね。」


「ま、とにかく詠唱が要らなくなったんだ。数回使って慣れれば『シールド』と言うだけでも、すぐに発動するようになるはずだ。

あとは他の仲間と相談して運用方法を決めていけばいい。イド達が色々やってるんだろ?多少は聞いているぞ。

どうだ?ようやく道が出来た感だな。良く頑張った。おめでとう。」


「はい!ありがとうございます!」


 ノリスは笑顔でクロードの肩を叩きながら、クロードの成長を祝った。

 クロードもいつもなら恥ずかしそうにするが、自分でも成長したのを感じたのだろう。胸を張って自信をもって、ノリスの祝福を受け入れた。




 そして、もう一組のコンビはというと……


「さて、エマ君。

もう一度……いえ、今まで以上に厳しくするお勉強か、先程の失態の理由をクロード君やケイト君、メリル君全員に聞いてもらうのか、どちらがいいですか?」


 満面の笑みで、地獄の選択を迫るサウルと、


「うぅ……どちらも嫌です……本当にごめんなさい。もう……いいえ、絶対にしませんから!……許してください。お願いします!」


 まるで神を前に懺悔するかの如く、泣きながら慈悲を乞うエマ。



 ノリス&クロードとは面白い程違っていた。


 せっかく色々と、更には本当に一肌脱いで手伝ったというのに、エマは醜態を晒した。

 結果、サウルは一ミリも譲歩しなかった。地獄の選択肢はエマが土下座しても何も変わらなかった。


 今までのお勉強は、本当にキツかった。それがもっと厳しくなる。まさか自分が切り刻まれるのではないか?と恐怖でエマは震えた。もしそうなら、初日だけで自殺する自信まであった。


 それなら一時の恥で済むと考え、エマは後者を選んでいた。



 その後、クロードやケイト達にも特訓の途中だが中断させて全員に集まってもらい、エマが醜態を晒した理由をサウルが打ち明けた。


 クロードはため息混じりに苦笑するだけで、特にツッコまれることはなかったが、ケイトとメリルからは盛大に羨ましがられ、盛大にイジられた。

 暫くフルボッコになっていると、ようやく落ち着いたかと思ったエマへ追撃で、


「もしまた何かやらかしたら、ずっと言い続けるからね!」


 とまでケイトから言われ、一時の恥では無くなっていた。

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