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週末だけ冒険者のおっさん達  作者: 小雅 たかみ
第三章
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第66話 特訓中

 それからも順調にそれぞれの特訓は経過していった。


 クロードは、盾の重さに何とか慣れて、少しずつノリスのしごきに耐えられるようになっていった。

 魔法使いで範囲攻撃魔法も使えるらしく、空間把握能力は備わっており、狭い庭でイド達の模擬戦を意識しながら立ち回るのも、クロードはすぐにコツを掴んだ。

 最近では休憩を挟まなくても、ボロボロにはなるが、ある程度の時間はこなせるようになった。終わりまでじゃないのは、逆にノリスの休憩が必要になっていたからだった。



 エマも必死に勉強しているようで、毎回終わる頃には頭がパンクしそうなのか、フラフラになっていた。毎度、顔も青ざめていたので、サウルは予定通りの授業を行っているようだ。

 人体の構造を学ぶのならば、実際に触れた方が手っ取り早い。しかし、エマを切り刻む訳にもいかないので、サウルは当初から文字通り自分を切り開いて、強制的に見せて勉強させていた。

 エマが途中で逃げ出さなかったり、吐かなかったのは、クロードの為なのか?教会の僧侶として多少の耐性があったからなのか?どちらか不明だが必死に頑張っていた。



 ケイトとメリルは、この中で一番、楽かもしれない。模擬戦を繰り返してはいるのだが、気づいた事があれば、中断して話し合う……休憩が多かった。無論、本人達は真剣そのもの。

 終わって家に帰ってからもクロードや少しでも楽しい時間が欲しいエマも加わり、色々話しているようで、次の特訓には少し変化していたり、クロードはこうだったとエストにお願いしたりと、至って真面目に特訓を楽しんでいた。


 以前、ケイトとイドのやり取りで、話し合いが足りないのは、バランスの問題だ。

 より良い人間関係を築くうえで、バランスはとても重要である。


 何処の誰もが、いつ何処でも、日頃の何気ない日常で、そのバランスをとるのに四苦八苦している。

 自分の話しかしない奴。逆に仕事の話しかしない奴。他人の話ばかりの奴。……そんな人は何処にでも居るし、そんなので人間関係が上手く行くのは稀だろう。何事にも……会話内容ですらバランスは必要だ。その感覚も。


 ただの男女の仲だけなら、クロード達は何も問題無いが、彼らは冒険者なので冒険者として話し合う時間も無くてはならなかった。

 しかし、クロード達は最初からハーレムパーティだった。本来なら例え誰も気づかず、誰かが言いださなくても、代わりに組合の受付嬢が助言したりするが、それすらもクロード達だからこそ無かった。だから、クロード達の今まで知らずに、会話内容のバランスが悪くなってしまっていた。

 それでもココまで来れたのは個々の力が強かったのだろう。多少の連携でどうにかなってしまった。今後少しずつ良くなっていく可能性もあったが、クロードが急に体制を変え、アンジェが抜け、この問題が一気に露呈した。


 急に変えさせた原因はノリス達なのかもしれないが、元に戻り、より関係が深くなったのもノリス達のお陰であった為、クロード達から非難されることは無かった。



 そして、ノリス達も平日はほぼクロード達の特訓に付き合い、クロード達の休みの日は、のんびり休んだり、メリルの訓練用の矢の補充や、クロードを休憩中に回復させる薬の補充など、次の特訓日に備えての準備をしていた。

 週末だけは変わらずにノリス達だけでダンジョンに潜り、クロード達のことなど綺麗さっぱり忘れて、自分達の連携を楽しんで練習していた。



 特訓開始から1ヶ月程経ったある日。


「サウル!まだ勉強は終わらないのか?もう合流しても良いんじゃないか?」


 クロード達では無く、一番最初にノリスが根を上げていた。

 それも仕方が無い。現在の特訓の内容だとクロード達も含めて、どうしても石をひたすら投げるノリスが一番激しい重労働だった。クロードも日に日に慣れていき、少しずつ威力も増やしていたので、余計疲れていた。


「アハハッ。では次からエマ君も一緒にさせましょう。

まだ足りないですが、そろそろちゃんとクロード君を回復させる練習もしないとダメですからね。」


「すまんな。マジで助かる!」


 サウルが了承した事により、クロードの特訓が一段階上がった。

 ノリスとサウルの二人がかりで石ころを投げつけ、クロードが盾で防ぎ、その後ろでエマがクロードを癒す。


 最終的には全員合流するのだが、それも時間の問題だろうとノリス達は思った。

 その為には、クロードがもう一皮剥けて成長しなければならなかったので、エマと合流させるのが丁度良かった。もしかしたら、目論見が上手くいくかもしれないと、ノリスはほくそ笑んだ。

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