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週末だけ冒険者のおっさん達  作者: 小雅 たかみ
第三章
65/104

第65話 特訓ーケイト&メリルⅡー

「意識の違いだけ?そんな事だけなの?」


「嘘よ!とてもじゃないけど、出来そうな感じがしなかったわ。彼が凄いのでしょ?」


 イドの説明にメリルは唖然とし、ケイトはエストのお陰だと息巻いた。


「……ケイト。ありがと。でも違う。

事前に動きの確認は必要だけど、僕らなら誰でも出来るはず。」


「エスト程、上手く出来る気はしないがな。

ならば、ケイト。何故出来ないと思う?」


「何故って……そんなの……分からないから聞いているんじゃない!」


「……正解。キミ達は知らない。」


 ケイトの嘆きは本人の意思とは関係なく正確に正解を言い当てていた。


「「え?」」


「エスト。そこまで酷くはないだろ?

お前らはクロードとの男女の仲で纏まっている。だから、色々話もしただろうし、あれから女同士でも話すようになって仲は良いだろ?」


「ええ。その通りよ。まさか、それがダメなの?」


「違う。それは良い事だ。だから、ある程度は連携も出来てるし今後もそれはお前らに必要だろう。

だが、まだ足りない。『冒険者として』の会話が全然足りてないのだ。」


「冒険者として……?」


「そうだな。例えば……」


 イドは最初の模擬戦で思った事を言おうとしたが、今さっき終えたばかりのエストの方が早かった。


「……イド。まずは僕から一つある。

ケイトに質問。メリルが【クイックショット】を射る動作は分かる?」


 【クイックショット】はその名の通り、素早く矢を射弓使いの技の一つでもあった。


「ど、動作?【クイックショット】よね?普段と変わらないんじゃないの?大体、後ろに居るから見た事も無いわよ。」


「……違う。メリルは戦闘中ずっと構えてない。だから、【クイックショット】の時は弓を持ち上げる時間を短縮する為に、体も少し沈み込んでる。」


「え?そうなの?」


「う、うん。見られてたのは恥ずかしいけど、あってる。

私が一番遠いから、皆とタイミングを合わせる為に、少しでも素早く射ようと思って。」


「……でも体が沈む分、視線や色々なところが少しブレるみたい。その為、なるべく外さないように頭ではなく当たりやすい胴体を狙ってる。だから、メリルが【クイックショット】を射る時は胴体への射線を通してあげれば、メリルの助けになる。」


「確かに!ホント、凄い楽だった!!」


 先程の模擬戦でも数度やっていた連携で、メリルは興奮気味にエストのサポートを喜んでいた。


「逆に俺からメリルへ聞こう。ケイトが唯一しない攻撃方法があるが、気づいているか?」


「攻撃方法?う~ん。聞いたこともない。」


「それはだな。『突き』だ。」


「え?何故?」


 あまりにも普通の攻撃をしていなかったケイトを不思議がったメリル。その理由は当人の口から至極真っ当な答えが零れた。


「何故って、アンジェは槍だし、アナタは弓じゃない。私まで直線攻撃ばかりじゃ、一辺倒でしょ?

……そういえば、言って無かった?」


「知らないとは、こういうところだ。

確かにお前らは仲が良いから、ある程度の連携は取れている。だが、冒険者としての連携はまだまだだ。

だから、サポートが出来ないのだ。他の仲間の動きをしっかり理解して意識しないと無理だからな。

仲間が攻撃しやすいようにとは、まず仲間の事を知らないとダメだ。当然だろ。お前らはそこがまだ甘い。」


「……でも、それぞれが色々考えて行動してるのは分かった。だから、そんなに難しくないと思うよ。」


「そうだな。ケイトの『突き』なんて、他の者達を見て考えている証拠だ。だが、もっとだ。そして、そういう話をお互いにしろ。

だがエストの言う通り、既に仲が良いのだから、難しくないだろうな。」


 実際に例を出して言われたら流石にケイトもメリルも理解せざるを得なかった。


「……そうね。思い返してみても、今まで他愛もない話ばかりだったわね。」


「料理、服、あとは……クロード?」


「……クフッ。別にそれはそれで楽しそうだから続けて良いんだよ。」


「フッ。話題にクロードがあがるのなら、丁度良いのではないか?

お前らはこれからクロードのサポートをやろうとしていくのだろう?ならば、クロードの動きをもっと知る為に会話すれば良いだけだ。」


「なるほど!それは盲点だった。」


「ちょっと、メリル?抜け駆けは無しよ!」


 今回はケイトとメリルのそれぞれの代わりとしてエストがサポートにまわったが、本来ならば壁役のクロードのサポートを二人にさせる予定だ。二人にとってはある意味でご褒美だと捉えたようだった。


「……エマも入れてあげてね?それにクロードにも、もっと知ってもらうと良いよ。」


「ああ。今後のお前らは、模擬戦が主体だ。

俺がオーク役で、エストがクロード役をやる予定だな。

そこで、どうやってクロードをサポート出来るのか?またはクロードにどう動いて欲しいのか?更にはアンジェにどう攻撃して欲しいのか?それぞれ考えながら、相談し合って、やってもらう。」


「うん。これから、よろしくお願いします。」


「分かったわ。貴方達に相談しても良いのよね?」


「ああ。ある程度はな。」


「……でもクロードの動きは未知だから、違ったらごめんね。」


「大丈夫よ!先程の模擬戦で貴方の動きは本当に凄かったわ。

これからも是非、よろしくお願いします。」


 ケイトとメリルの警戒心が綺麗さっぱり無くなり、今までとはうってかわってイドとエストへ素直に頭を下げた。

 最初こそ、出会いは最悪だったが、これが本来の彼女達なのだろうと、イドとエストは暖かく受け入れた。

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