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週末だけ冒険者のおっさん達  作者: 小雅 たかみ
第三章
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第59話 特訓準備Ⅲ

 ケイトが落ち着いたら、イド達は全員で作業場へ向かった。そして、ノリスの作業を見ていたクロードやエマと合流させた。


 最後に、代表してイドが合流したクロード達全員に伝える。


「改めて、これからお前らの特訓を見ることになった。

回りくどい言い方なのは、教育も指導も極力しないつもりだからだ。肉屋の時とは違うのだ。

これは、お前らの戦い方だ。

考えたり、相談したり、意識したり、経験したり、研鑽を積んで、自身で掴んでいくものだ。

お前らの戦い方を俺らが命令しても、嫌々になるだろ?それでは意味が無い。大体、楽しくもないしな。

そして、最後になるが、俺らの事については何も言うな、聞くな、考えるな。すでに疑問に思っているヤツも居そうだが、俺らはそれに答えるつもりも無いから無駄だ。

もう一度言うが、お前らの戦い方だ。余所見している余裕はないだろ?だから俺らの事よりも、まずは自分達の事を第一に考えろ!

いいな?よし!なら、今日はここまでだな。」


 その後、話し合いをさせる為にクロード達を解散させた。

 初日ではあったが、クロード達への訓練は一時間もかからずに終わりとなった。


 つい先日決まったので、教える側のノリス達にもやる事が山積みだった。

 クロードの盾を作成、庭を畑から訓練用に整地、今までの仕事だった矢や回復薬の卸し先へ暫く休止する連絡……更にはエマの盾や、メリルの訓練用の矢など、準備期間がまるで無かったのだからノリス達にとって時間が全然足りていなかった。

 そして、クロード達も先程ケイトに話した事を、どれだけ時間がかかっても良いのでしっかり相談して決めてほしかったので、早めに終れて丁度良かった。

 作業場で合流した際に、ケイトがクロードへ「大事な話がしたいの。」とお願いしていた。帰ってから皆でゆっくり話し合うだろう。



 ちなみに、クロード達との特訓日程は『肉屋』と調整した結果、ほぼほぼノリス達へ丸投げになっていた。


 週末だけはノリス達のみで、今まで通りダンジョンに潜りたいとノリス達の希望があり、それはすんなり通った。

 それどころか、その週末だけはクロード達を『肉屋』へ送り出し、後の平日全てをノリス達の好きにしていいとまで『肉屋』から言われてしまった。

 それ程、まずは戦力を整えて欲しいとの『肉屋』の願いでもあった。


 クロード達も休日が必要なので、週に二、三日は休日を取るとしても、半分以上はノリス達との特訓になってしまった。

 流石のノリス達も、平日の仕事をこなしながら特訓とはいかなくなったが、やると言った手前、決まった事なら仕方が無いと割り切った。

 日々の慎ましい稼ぎすらも無くなったが、元々ノリス達は金に困っていない。こんな場合もたまにはあるかも?と割とのほほんとノリス達は笑い合った。


 しかし、教わる側のクロード達も稼ぎは無くなってしまう。週末だけ『肉屋』の仕事をしたとしても、とてもじゃないが生きていけないはずだ。

 ノリスは物凄く嫌々な顔をしながら、更にはイド達でさえちょっと躊躇してしまっていたが、本当に最悪の場合、ノリス達の家に滞在させる案も浮上した。クロード達はハーレムパーティだ。自分達の家の中でイチャイチャを見せられたら、たまったものじゃない。

 「もう俺が全部金を出すから、適当な家を借りて、そこにぶち込もうぜ!」と投げやりなノリスの意見を採用しようかどうか迷っていたが、幸いなことにその選択を取る必要がなかった。

 なんと、その辺りはすでに『肉屋』が教育済みで、『肉屋』紹介の格安物件を借りて、すでに住んでいたのだった。

 ノリスは神を拝むように跪き『肉屋』へ感謝した。


 ついでに、ハーレムパーティとして夜の決め事もしっかり教育されており、休日をいつ取るかちゃんと決めておけばクロード達は何も問題ないそうだった。


 だが、クロード達の稼ぎが無いことに変わりない。


「本当に大丈夫なのか?特訓中の生活費程度なら支援するぞ?」


 とノリスが問いただせば、クロードは恥ずかしそうに顔を赤くして、


「だ、大丈夫です。」


 とだけ、返事をする。


「いや、全然大丈夫そうな気がしねぇぞ?」


「あ、いえ。違います。実はですね……」


 どうやらノリスがあの時渡したお金が『肉屋』との交渉後もまだ結構残っており、その金で家を借り、更には生活費も当分は問題なかった。

 結局のところ、元はノリスの金であり、クロードにとっては支援されてる感満々で恥ずかしそうな顔をしていただけだった。

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