第52話 再会
「お疲れ様でした。」
「……お疲れ。」
「ああ。待たせたようで、すまんな。」
「いえ、そんなに待っていませんから。」
【カーシーの串屋】でクロード達と合流するノリス達。
ガンダルが気を利かせてくれたのか、奥まった良さげなテーブル席を用意してくれていて、少し先に来ていたクロード達が迎えてくれた。
クロード達は、『肉屋』であるガンダルからの教育中だったので、ダンジョンを出てからも色々仕事もあった為、ノリス達は一緒に戻らず、ある程度ダンジョン探索を楽しんでから、串屋に向かった。
ガンダルが更に気を利かせたのか?予想以上に早い終わりだったようで、クロード達の様子を見れば、完全に食後だった。
「あれから色々あったようだな。」
「……一目で分かる。」
「でも、酷く落ち込んでるようでもないですし、ちゃんと話し合いは出来たのでしょうね。」
クロード達を見て、イド、エスト、サウルは口にする。
テーブル席を囲む七人。
そもそも人数がおかしかった。
ちなみに、ノリス達側もノリスが居ない。
クロード達のようなハーレムパーティと一緒に食事は流石に無理だと悟り、一人で輪を外れカウンター席に座ってチビチビと酒を楽しんでいた。
対するクロード達もクロードと女性三人しか居なかった。
「すまんな。俺らはお前らを解散させたくて説教した訳じゃないのだが、結果的にこうなってしまったか。」
「いえ、今こうして学び、あれは必要な事だったと思います。
だけど、脱退した訳じゃないので。ぼ……俺は戻って来てくれると信じてます。」
「そうよ!アンジェはただ修行し直すと言ってただけ。必ず戻ってくるわ。」
以前、ノリス達が説教した時に居た、槍使いのアンジェの姿が無かった。アンジェと仲の良さそうだったケイトもクロードに同意した。
魔法使いのクロード、剣士のケイト、弓使いのメリル、僧侶のエマ。そして、一時離脱中の槍使いのアンジェ。
合流してから、この前出来なかった自己紹介も済ませていた。
メリルとエマも、ケイトの発言に頷いていたので、パーティの雰囲気は暗くないのだろう。
しかし、イドは抜けた一人よりもクロードの言葉が気になった。
「ほぅ。『俺』か。どうやら、そこから矯正されているのだな。」
「元々そういう性格ではないですから、中々に難しくて困っています。
だけど、皆から言われて少しずつですが、変えていかないと……。」
「フフッ。無理してるのも可愛い。」
「まだちょっと違和感がありますもんね。」
クロードの愚痴をメリルとエマが笑う。
「……でも、見栄も大事。」
「そうですね。その構成ですと「俺の女に手を出すんじゃねぇ!」ぐらいが丁度良いのかもしれませんね。」
クロードの変化にエストとサウルも応援した。
「なるほど。やはり街を代表する組織は素晴らしいな。
お前らも実感しただろ?どうだった?」
イドはクロードを変えさせた『肉屋』を絶賛し、今までの道のりを聞きたくなったので質問した。
「最初の一ヶ月は本当に大変でした……。
喋り方もそうですが、仕草もダメ出しされましたし。」
「剣を握る日なんて、数える程しかなかったわ。」
「色んな所に連れまわされて、何度も挫けそうだった。」
「美味しくないご飯や何度も野宿させられたりもしましたねぇ。」
クロード達は苦笑いと共に遠い目をしながら達観した。しかし、すぐに復活し、逆に勇敢な目でイドを見据えて、言葉を紡ぐ。
「だけど、本来ならこれが普通なんですね。アレは俺達がすっ飛ばしてきた過程だったんだ。」
「そうだな。だが、別に早い遅いは無いから安心しろよ?学ぶ機会があったなら、それはお前らにとって今後の糧になるだろう。」
「そうね。本当に色々経験させてもらったわ。
それに一ヶ月経ってからは世界が変わったわね。」
「聞いて下さい!他の女性の冒険者を紹介してもらって、親しくなったんです!」
「女性だけのパーティと合同でダンジョンにも行けた。」
「ジャンさんが頑張っていた俺達への報酬として、なるべく女性の多いパーティを度々紹介してくれて、繋がりが一気に増えましたね。」
「ほほぅ。それはお前らにとっては良かったじゃないか!」
「当然よ!同性の先輩方の話はとても貴重だったわ。」
年頃の女性が冒険者として、ダンジョンへ潜ったり、組合の依頼を受けたりする。絶対に男性とは違う問題が色々出てくる。
そんな問題を今まで経験してきた先輩から聞けるのだ。女性特有の問題を解決する方法や、あの問題はあの店のこの道具で解決するなどの知識……彼女達からすれば、大金より何よりも貴重な褒美だっただろう。
代表してクロードはイド達へ感謝を述べた。
「本当に『週末』の皆様、ありがとうございました。」
「おいおい。全ては『肉屋』のお陰だろ?俺らは何もしていない。
寧ろ横から無駄にしゃしゃり出てしまっただけだ。俺らが居なくても、彼らはお前らを助けただろう。」
「それは分かりません。ジャンさんはあの時、俺達を街から追い払おうと思ったそうです。
その後で対峙した時も、何も無ければ良い顔はされなかったでしょう。全てはノリスさんが……」
クロードはノリスが渡したお金のお礼を言おうとしたので、サウルが止めた。
「クロード君。それは内緒ですよ?」
「……もう一人、おせっかいなおっさんが居ただけ。」
「フッ。バレバレだったがな。
だが、ノリスのアレがあったとしても、今こうしているのはお前らが決めたのだ。やはり俺らのお陰じゃない。
クロードはもう少し自分に自信を持った方が良いぞ?」
「あっ!それは私も思ってた!」
「それも可愛かったから、良かったけどね。」
「ウフフッ。メリル。あまりクロードをからかっちゃダメですよ。」
イドがまたおっさん臭を出しながらクロードを窘めると、その内容にケイトやメリルが乗ってきた。
「皆、ここで言わないでくれよ。勘弁してくれ……。」
ガックリと肩を落とすクロード。それを見てケラケラと笑うケイト達。
元々そうだったのか?それとも変わってこうなったのか?付き合いが長い訳じゃないので分からないが、今のクロード達は良い関係を築いているようで何よりだとイド達も思い、ケイト達と同じように笑った。




