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週末だけ冒険者のおっさん達  作者: 小雅 たかみ
第三章
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第51話 その後Ⅱ

 ガンダルがああ言っていたので、翌週の週末にはクロード達と会えるかもと、サウルとエストは期待して週末を待ちわびていた。


 しかし、翌週も更に次も、その次も、クロード達とは会うことは無かった。

 ガンダルとはその間、すれ違っていたので、この前のようにちょっとだけ話をしてみると、まだまだ教える事が山積みで、なかなか受け持つまではいかないらしいのと、彼らにも色々あったようだ。


「あまり期待しすぎるのも良くないぞ?」


「そうだな。特にアイツらは一から鍛え直しだろ?なら時間がかかるのも仕方がないだろ。」


 イドとノリスは、若干落ち込むサウルとエストに言葉をかける。


「それもそうですね。」


「……そうだった。」


「それにな。すぐに会ってしまったら、俺らのグダグダを見られるのだぞ?」


「アハハッ。確かに不味いですね。あそこまで説教ぶっておいて、私達がコレですからね。」


「……幻滅される?」


「『生ゴミ』達にはされるかもな。……ヤバいな。殺してしまいそうだ。」


「おいおい。ノリス。勘弁してくれよ?」


「かといって、すぐに連携が良くなる感じもないですし……今まで通りですかね。」


「……うん。馬鹿にされない程度には頑張ろ!」


「だな。」



 そうして、いつか遠い未来にクロード達と会える日まで、なんとか連携を形にしようと決意を固めるノリス達。しかし、その翌週にクロード達と鉢合わせした。


「……あるある。」


「戦闘中じゃなくて、良かったですね!」


 ノリス達はいつもの週末にダンジョンへ潜り、ブラブラしながらオークを探している時だった。


「『週末』の皆さん!お久しぶりです。」


 ガンダルのパーティと一緒に現れたクロード達。すでにオークを狩り終えた後のようで、若干の疲れ具合と仕事が終わった達成感を顔色に乗せて、だけどようやくノリス達に会えたのが嬉しかったのか、クロードは元気一杯に声をかけて来た。

 あの時、ノリス達は特に言った記憶が無いが、クロードは『週末』と呼んだ。『週末のひととき』ではなく『週末』なので、ガンダルかジャンか『肉屋』の誰かからノリス達の事を聞いたのだろう。そして、あの時自己紹介をしていない事にノリス達は気づいた。


「そう言えば、俺らの名すら言っていなかったな。」


「……確かに。よくソレで話を聞く気になったね。」


「名前も知らないおっさん達の説教ですからね。クロード君達が素直で良い子だという証明ですね。」


「い、いえ……正直に言えば、あの後帰ってから話し合いで揉めましたよ。」


「そりゃ悪かったな。だが、ココで駄弁ってるのもあまり良くないだろ?

ガンダル!悪いな。」


「構わねぇぜ!積もる話もあるだろ?……とは言え、鮮度もあるから長々とは勘弁して欲しいな。

なんなら『週末』は今日早めに切り上げられねぇか?こっちもコイツらを早めに開放してやるからよ。

確か、アンタらは毎回【カーシーの串屋】だろ?ならソコにコイツらを案内しておくからよ。」


 ガンダルは勝手にドンドン決めて話を進める。ガンダルが教育しているクロード達を会話で引き留めている手前、ノリス達は特に嫌とは言えなかったが、ノリス達がダンジョン終わりにいつも行っている酒場をピンポイントで言われて吹き出した。


「ブフッ!俺達が普段、飲む場所まで知っているのか!?」


「おいおい。俺らを何の集まりだと思ってんだ?」


「そうでしたね。伊達に『肉屋』とは呼ばれていないですね。」


「ゲハハッ。俺らは特に鉢合わせしやすい冒険者達の事を覚えるようにしてるのさ。その方が何かと恩が売れたりするだろ?」


 ガンダルはニヤリと笑いながらノリス達を見る。


「フッ。なら時間帯も知ってそうだな。俺らが居る時に来てくれれば存分に奢るさ。」


 『肉屋』はオーク肉を色んな所へ卸して、この街の食を支えている。だから当然、食堂や酒場は卸し先であり密接な繋がりを持っている。

 だから、関係のある冒険者達の利用店を把握し、そこへ上質な肉を届けるだけで、敵になることは無くなるだろう。お店の人から『今日はガンダルさんが良い肉を届けてくれました。』なんて一言を添えられたら、次に会った時お礼を言ったり、お返ししたり、簡単に良好な関係になる。

 『肉屋』は体制が盤石な組織だった。それほど街から信頼されていた。


「ゲハハッ。お前ら、今の内に顔覚えてもらっておけよ?行けばタダでたらふく食えるからな。

だが、今日はダメだ。無粋な真似しちゃ悪いからな。来週からにしておけ!

すまんな。結局俺が大分喋っちまった。そろそろ俺らは戻るぞ!コイツらはまた後で、じゃあな!」


 ガンダルはパーティメンバーに斡旋しつつも、空気を読んで「来週から集りに行け」と笑いながら言って、休憩を終わらせ、そそくさと去って行った。

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