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週末だけ冒険者のおっさん達  作者: 小雅 たかみ
第三章
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第47話 不安

「しかし、お前らの先程のアレはなんだ?

自分達のパーティ構成で絡まれやすい事ぐらいは気づいているだろ?

何故、慣れていないのだ?」


 イドはおっさん臭い説教をはじめてしまったので、唯一の経験者であるノリスが止める。


「イド。恐らく違う。彼らは本当に慣れていないんだ。だから、ココに居ると言ってもいい。」


 この街は初心者の街ではない。いっぱしの冒険者が来るような街だ。

 だから、こういった揉め事に慣れていないとおかしいと、イドも絡んでいた肉屋の彼らも考えて、クロード達の行動を驚いていた。


 ただ一人、真相を知るノリスはだからこそだと言う。経験の無いイドにはそれが理解出来なかった。


「どういう事だ?ノリス。そいつは少し変じゃないか?」


「イド。それはまた後で教えるさ。

とにかく、お前達は絡まれやすいのは流石に理解しているよな?


 イドの疑問をノリスは後回しにして、まずは若い冒険者達に聞く。

 流石にハーレムパーティだとは認識しているようで、全員が頷いていた。


「なぁ、どうしてだと思う?」


「それは……」


 一人だけ男のクロードは答えに詰まる。しかし、周りの女性達は気にしないのかスラスラと言い難い事を応えた。


「私達が居るからでしょ。」


「クロードをどうにか出来れば、いかがわしい事でもさせるつもりなのよ。」


「ホント男ってどうしようも無いわね。」


「絶対に嫌です……!」


「……。」


 女性達のそれぞれの答えに、ノリスは無反応だった。


「アハハッ。この距離でもダメですか。

ノリス。彼女達はこう言っていますよ?良いですか?……」


 その意味に気づいたサウルが笑いながら、通訳をした。


「……ある意味凄い。ちょっと尊敬してきたかも?」


「やめとけ。エスト。見習う部分が少しも無いぞ?」


 サウルの通訳をノリスが聞きながら、エストとイドは呆れ果てていた。若い冒険者達もここまで酷いのかと驚愕していた。


 ようやくサウルの通訳を聞き終えたノリスはまず否定した。


「……やはりそう思っているのか。確かに極稀にそういう奴も居るかもしれんが、大半は違う。今回の彼らもそうだ。

お前達が絡まれやすいのはな。お前達の事が『不安』なんだ。」


「『不安』……ですか?」


 女性達が喋るとまた通訳が必要になるかと思い、代表してクロードが聞き返した。


「そうだ。

お前達が冒険者として本当にやっていけるのか?不安になるから、おせっかいとして絡むんだ。ココで、この先でも活躍出来るかどうか?冒険者としての力、知識、頭脳を持っているのか?それを知る為にな。」


「お前らは特に構成が歪だからな。今後も色んな面倒に出くわすだろう。だから慣れなきゃいけない。寧ろ慣れていないとおかしいのだ。」


「そう何度も言うな。イド。

今回の件は絡んできた彼らに試されていたんだ。だからこそ、お前達の力だけで対処しなければならなかったんだ。」


「そうですね。

他に助けを求めるなんて、自分達の力が無いと言っているようなものですよ?彼らは余計に不安になったんじゃないですかね。」


 サウルの一言で、気絶から復活していたエマと呼ばれた女性は、「えっ?」という困惑した表情をした後、自分の失敗に気づき、焦る。更には中年達に刃向かっていた女性二人から睨まれて、顔を青くして俯いてしまった。

 しかし、


「……彼女に安心して見ていられるようになってないキミ達にも問題があった。

キミ達はそこのクロードとは信頼関係がありそうだけど、女同士ではまだまだってこと。」


 エストは気絶したエマを庇う。それに女性二人はバツが悪そうに顔を背ける。


「ま、一番悪いのはクロード。お前なんだがな。

どういうつもりで、このメンバーなのか知らんが、お前が纏めないとバラバラだぞ。」


「……はい。」


 しょんぼりとしたクロードを筆頭に女性達も多少反省したのか、暗い空気が漂う。

 というか、イドを抑えたつもりなのに、結局ノリス達は全員がおっさん臭い説教になってしまっていた。


 それに反発してなのか?説教にうんざりしたからなのか?気の強そうな戦士風の女性二人がボヤく。


「なによそれ。おせっかいにも程があるじゃない。」


「だな。私達は強くなってドンドン先に行けばいいだけだ。こんな場所に留まることもない。」


 勿論、彼女達は強がりが半分以上を占めているのかもしれないが、多少の本音も含まれていた。


「フッ。(まだ分からんのか……。)

そういえば、お前の持っている槍だが、柄にあるマークはひょっとして、アレか?」


 イドは鼻で笑いつつ前半部分は独り言のように呟いた後、強がった女性一人が持つ槍に注目した。


「分かるのか!?そうだ!!

元【英雄】パーティの『青龍』。『竜爪』のセガル様から頂いた物だ!」


「アンジェはね。セガル流槍術の師範でもあったのよ!」


 知られていた事に嬉しそうに反応する女性と、それを自慢げに話すもう一人。


「(師範か。アイツ……道場でも開いているのか?)

なるほどな。それは知らんが、ここへ来る前にお前と同じマークが入った槍使いが、婦女暴行を働いてな。牢屋に捕まっていたぞ。馬鹿な奴だったな。」


「何っ!何処の街で、どんな名前の奴だ!?」


「いや、名前までは知らんな。お前に必要な事なのか?」


「当たり前だ!私達の流派の恥だ。すぐに行って、こらしめてやらねばっ!」


 ダンッ!とソファー前のテーブルを叩いて凄むアンジェ。それに釣られて笑うサウルとエスト。


「アハハッ!」


「……クフフッ!」


「何がおかしい!」


 二人が笑った為、激昂するアンジェに二人は素直に謝った。


「……ごめんね。でも……」


「すみません。しかし、イドの話は嘘ですよ?」


「何だと!」


「ただの冗談ですよ。でも結局、貴方も一緒じゃないですか?」


「……キミ達はココから別の街に行って、また問題が起きた時、その街の人達はこう思うんだ。

『前の街で一体何を学んだ?』とね。」


「そうだな。

お前が自分の流派を誇りに思い、同門に不甲斐ない者が居たら許せないように、この街の者達もこの街を誇りに思っている。この街に住んでいるのだからな。

もう分かるだろ?同じ事なのだ。

この街の者達は、この街を卒業していく者がヘマして、別の街でこき下ろされるのが許せない。

だから、お前らが別の街に行った先でやらかす前におせっかいを焼くのだ。

エストが言った事を言われないようにな。そういう『不安』なのだ。」

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