表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
週末だけ冒険者のおっさん達  作者: 小雅 たかみ
第二章
25/104

第25話 旅路

「くぅ~。物凄く感動的じゃないですか!?」


「……涙無しには無理。」


 サウルとエストは目を擦りながら、ノリスの話を聞いていた。

 前回の『初心者の街』から、別の『初心者の街』まで、帆馬車で移動中のノリス達。あまりに暇だったので、ノリス達が『週末のひととき』として活動する以前の話を、良い機会だからと一人ずつ話してみよう!という流れになり、まずはノリスが話した。


「お前ら。何処に感動ポイントがあったんだ?俺にはさっぱり分からん。

寧ろ後半は『生ゴミ』が連続して出てきて、理解するのが面倒になる程だったのだが?」


「えー!?イドには人の心が無いのですか?」


「……可哀想。」


 イドには理解できないようで、逆にノリスの話にクレームをつけていた。そんなイドに対してサウルは人として残念だと反論し、エストからは同情されて、イドもタジタジになっていた。


「そんなに非難される事なのか!?

なあ、ノリス。それで『生ゴミ』はあれから少しでも治ったのか?」


「んー?全然だな。接する機会がそもそも無くなったし、逆に酷くなったかもしれん。」


「ダメじゃねぇか!」


 結局イドはノリスにダメ出ししていたが、サウルはワクワクしながら続きを期待した。


「それで、その後はどうなったのですか?私は一番最後の合流だったので、その辺りの経緯が分からないのですよね。」


「……僕の時も、もう二人で居た。」


「おっ?そうだったか?なら続きを……」


 ノリスが続きを話そうとしたら、イドが慌てて止める。


「待て待て!それは俺の時にとっておけ!大体ノリスの話に相当俺も登場してるじゃねぇか!?」


「そりゃ仕方が無いだろ?かなり交流があったのだから、話さざるを得ないだろ!」


「『青龍』の由来まで話しやがって……俺らの始まりみたいなものだろう?簡単にバラすなよ!」


 彼らは『四神獣』のそれぞれのメンバーである。『青龍』、『玄武』、『朱雀』、『白虎』、それぞれが『英雄』と呼ばれたSランク冒険者パーティのメンバーだった。

 その中でも最初に現れたのが『青龍』であるイドのパーティであり、その由来をノリスが話の中でポロッと口にするので、イドは自分の番の時に話すネタが減ってしまい、ノリスを怒ろうとしたのだが……


「……問題無い。知ってる。」


「アハハッ。有名ですよ?もしかして当人だから気づきませんでした?」


「何っ!?本当か?」


 実は結構有名な逸話でもあり、その事実を知らないのは当人だけであった。


「ええ。当時の私達ですら、イド達が変えて、ノリス達が台頭し、その流れに乗ったのですからね。」


「……実は『白虎』、いっぱい居た。」


「そうそう。『朱雀』もあの頃付けるパーティが多かったですよ。暫くはその名の生存競争があったぐらいですからね。」


「へぇ。そんな事があったんだな。『玄武』は全然居なかったはずだぞ?」


「それは、ノリス達が有名になった後だったからですよ。

東に『青龍』、そして北からも『玄武』が出てきた。なら、南や西からも!って当時 私達の周りの冒険者達は皆、息巻いていましたよ?」


「……被り過ぎて、組合が大変そうだった。」


「それ、どうやって勝ち取ったんだ?」


「簡単ですよ?Sランクになれば良かっただけですね。」


「……僕らもそう。」


「なるほどな。だが、ノリスの話はそこまでだ。これ以上話されると、俺の話が短くなる。」


「そうなると私達も少し考えた方が良いかな?エスト?」


「……大丈夫。サウルが話していいよ。長々と話すの疲れる。」


「なら要相談ですね。」


 イドはドンドン話すネタが減りそうなのを戦々恐々とし、サウルとエストも話す内容が被りそうなので、お互いに相談し始めた。



 ノリス達の道中は至って平和な日々であった。そもそも危険がほとんど無かった。


 ノリス達はある程度整備された道を選んで、のんびりとした空気感で移動していた。整備されていない道を帆馬車で進めば、ずっとガタガタと揺れることになり、流石に歴戦の頑丈さを持つノリス達であっても、中年の体には堪える。特に行くべき場所もなく、急いでいる訳でも無いので、まったりゆっくりのんびりと男四人の旅を楽しんでいた。のんびりし過ぎて暇になり、その時間を潰す為に話をする事になったのは誰も突っ込まなかった。

 そして整備された道の為、魔物もあまり出てこない。出てきたとしてもノリス達は元Sランクの冒険者であり全員が壁役なのだ。例えドラゴンが強襲してこようとも、誰一人死ぬことは無いだろう。

 唯一心配なのは、帆馬車とそれを牽く二頭の馬ぐらいだ。しかし、それさえも彼らは壁役として傷一つ付けられることなく護りぬくだろう。その空気を悟ったのか、二頭の馬はすこぶる安心した様子で帆馬車を牽いていた。



 更に、もう一つの危険も全く問題無かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ