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週末だけ冒険者のおっさん達  作者: 小雅 たかみ
第一章
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第21話 旅立ち

 ドバンとアレク達は一通り会話が終わったとエッジとゲインは思ったので、部屋から退出しようとした。しかし、そんな二人をアレクは止めた。


「すまないが、少しだけ外で待ってくれ。

アンタ達も今日は休みじゃないか?どうせその後も彼らについて話をするつもりだろ?俺も混ぜてくれ。ガッツリ付き合うさ。

だが、その前に個人的にドバン組合長と話があるんだ。」


 エッジとゲインは確かに休みで、これから飯屋にでも行って話し込もうとしていたのでアレクの提案に乗り、部屋を出た後その場で暫く待っていた。アレクも言った通り、数分も掛からずに部屋から出てきた。


「アレク。なんだったんだ?」


「本当にちょっとした事さ。どの道、後で話すから今は気にしないでくれ。」


 三人で適当な飯屋に入り、休みを良い事に酒も頼んで、乾杯した。


「ぷふぁっ!しっかし、一日経ったとはいえ、今でも信じられんな。あの人達が……」


「馬鹿!ゲイン。こんな場所でそれ以上言うな!でもその気持ちは良く分かるぜ。

アレクは知ってたみたいだし、俺とゲインだけが驚き疲れたな。」


「そうでもないさ。さっき言っただろ?昨日のアレを見るまでは俺も分からなかったんだ。

更新の度に来ていた頃、会話の内容が随分と経験者じみていたから怪しいとは思ったが、まさかあんな人達だとは考えもして無かったな。」


「あっ!ソレは俺も感じていたぜ?

あの人達は他と比べて落ち着き過ぎだったからな。」


「確かにな。ダンジョンに潜る冒険者達はこの街とはいえ多少の緊張感を持って潜る。

駆け出しは論外だが、趣味で来る冒険者ですら少しは張り詰めていた。

あの人達は、まるで近所の行きつけのお店にでも入るかのように普通だったからな。

良く居る馬鹿か無謀な冒険者と二人で噂した事があったな。」


「だな。しかし、それは当然だったな。

なんたって……くぅ~!周りに自慢したくてしょうがねぇ!」


「よせ!」


「分かってるさ!だけどどうしようもなく、もどかしいんだ!」


「まぁな。気持ちは痛い程分かるぜ。もう一度会えるとも限らないからな。」


「あの人達の噂を聞く事も無さそうだもんな。それに名前変えられたら、どうしようもないし。」


「ゲイン。それは大丈夫なはずだ。」


「アレク。何故そう言いきれる?

本名に戻す事は無いと俺も思うが、今の偽名を更に変える可能性は捨てきれんだろ?」


「いや。無いな。そうなると、また新規登録からなんだ。

Fランクはそれこそ毎日組合に出向いて、コツコツと依頼をこなさなければならないんだぞ?

依頼は問題なさそうだが、組合に行くのは無理だろうな。

なんたってノリスさんが居るんだぞ。あの人、どうやってEランクまで上げれたのか不思議なくらいだ。」


「ああ。そういえば女性嫌いだったな。」


「それに、彼らにもプライドが……いや、違うな。

今までの自分達を否定しきれないんだと俺は思う。

名前を変えるとは、言わば新しい人生と言ってもそう違わないだろう。それだと今までの人生が失敗だった……とは言い過ぎかもしれんが、そう受け取りたくないんだと思う。」


「そうだな。あの時のイドさんも言っていた。彼らのようになれなくて死んでいった人達も沢山居たと。あの人達は今もそれを背負っているのかもしれんな。」


「だな。」


「……だから、俺は彼らを背負おうと思ってる。」


「アレク?」


「先程、ドバン組合長と少し話してきた。暫く組合員は休職するつもりだ。

ドバン組合長も予想してたみたいで、許可も簡単に出た。」


「お、おぃ!?一体どうしたんだ?」


「鍛え直しだよ。今のままでは、いずれ破綻してしまう。

ドバン組合長が居たとはいえ、俺達でキングを倒した事になっているからな。

それを本物にしなければ、彼らの代役は務まらんだろ?

……あの時、俺は何もできなかった。だから、せめてもの恩返しぐらいにはなるかと思ってな。」


「アレク。お前、そんな事を考えていたのか。」


「ああ。それで、エッジ、ゲイン。お前達も一緒にどうだ?」


「「……。」」


「無理にとは言わん。だが昨日、同僚から質問責めにあった時、心苦しくなかったか?

彼らを笑っていた奴が俺を称賛するんだ。俺は申し訳ない気持ちでいっぱいだったし、気持ち悪くて吐きそうにもなった。

今のままでは、俺自身がどうにかなってしまいそうなんだ。だから強くならなければと思った。」


「……ああ。俺達も同じだったさ。でも……」


「彼らのようになるとか、そんな馬鹿げた目標でも無い。

彼らじゃなくて、俺達でもキングを倒せる強さまでで良い。そのぐらいなら出来そうだろ?」


「……そうだな。よし!やろうぜ?エッジ。」


「ゲイン。アレク。

……仕方が無いな。やってやろうじゃないか!」


「エッジ、ゲイン。これから宜しくな!」


 アレク、エッジ、ゲインは三人で固い握手を交わし、野望に燃えた。居なくなってしまった彼らと、その彼らを背負った自分達の為に。そして、自分達が強くなった時の噂が、何処かに居る彼らに届けば良いと夢見ながら……。

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