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週末だけ冒険者のおっさん達  作者: 小雅 たかみ
第一章
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第19話 週末の真実

 ノリス達と別れたアレク達はその後、ドバンの発言により揉みくちゃに祝福された。やっと解放されたかと思えばアレクは組合へ、エッジとゲインは兵士達が集まる詰所へと連行されて、事情を報告したり、質問責めにあったりされて、三人共いつの間にかベッドではないそれぞれの場所で寝てしまっていた。


 翌朝、事務所の自分の机で寝てしまっていたアレクは、差し込む朝日の眩しさでようやく起きる。


 少し寝ぼけていたせいか、別れ際のエストのセリフを思い出し、急に覚醒する。


「『またね。』じゃなかった……まさか!?」


 寝癖など気にせず、急いで彼らの家に走った。



 着いたノリス達の家は、もぬけの殻だった。


「いや、まだ朝だ。まだ間に合うかもしれない!」


 兵士達の詰所に走り、エッジとゲインを叩き起す。ノリス達の説明をしたら、彼らも飛び起きて、一緒に走った。



 結局、彼らには会えなかった。


 エッジ達の同僚が、昨日の夜に街を発ったのを確認していたそうだ。

 その同僚がエッジとゲインにボコられるのを見ながら、アレクはせめて挨拶ぐらいはさせて欲しかったと悔やんだ。


「エッジ、ゲイン。それぐらいで止めておけ。今から組合長の所へ行こうと思う。」


「ああ。俺達も行くぜ。」


「何も知らないままじゃ、抑えきれそうにないからな。」


「だな。」


 アレクはエッジとゲインを連れて組合まで戻り、組合長の部屋をノックする。


 組合長も昨日は散々な目に合っていたはずだが、奇跡的に起きていた。老人だから朝は早いのかもしれない。


「なんじゃ。お前達か。」


「ドバン組合長。彼らは昨晩、街を出ていきました。」


「……そうか。なんとなく予想はしておったが、悲しい事……いや、ワシが頼んだのじゃ。ワシのせいだと言っても過言ではないかもしれぬ。じゃが、どうしようもなかった。彼らの力を借りなければ、この街は今こうしておらぬか。やはり悲しい事じゃな。」


 言葉通りにドバンは悲愴な面持ちで嘆いた。


「組合長。教えてください。彼らは一体?」


「ふむ。お前達は許されておったな。いいじゃろう。

その前に一つ質問じゃが、お前達にとって有名な『英雄』は誰になるのじゃ?」


 ドバンは言葉を選び、アレク達に質問した。

 ドバンの質問は冒険者の事だ。昨日、イド達も言っていた『英雄』とはSランクの別称でもある。要するに【有名なSランクの冒険者は誰だ?】と聞いたのだ。


 それだけでアレクは察しがついていた。昨日、報告書を書く片手間で気になった事を少し調べていたのだった。


 その隣でエッジとゲインは会話する。


「有名な『英雄』か……組合長、それは俺達の世代で良いのか?それとも今のか?」


「そうじゃの。同じかもしれぬが、世代の方じゃな。それ以前でも構わぬよ。」


「そうなると、ほぼ確定じゃね?」


「ああ。俺達はその話を聞いて育ち、憧れ、会話に花を咲かせていたんだ。当然『四神獣』だな。」


「その中でも特に『龍』と『亀』だろ!!」


「だな。どれも居なくなっちまったが、未だに有名だもんな。」


 エッジとゲインは昔のように盛り上がり、少しだけ懐かしむように喋っていた。


「おっと、話がそれたな。組合長、その質問がどうしたんだ?」


「そうじゃろうと思っておった。ワシら世代ですら知らぬ者は居らぬからのぅ。

……だから、彼らが『それ』なのじゃよ。」


「「は?」」


 エッジとゲインの思考は停止した。


「彼らが『四神獣』なのじゃ。

アレク。その顔は知っておったな?」


「いえ。確証はありませんでした。

ですが昨日、ドバン組合長の彼らの使う技名を言っていて、何処かで聞いた事があったので調べました。」


「なるほどのぅ。

ワシも見るのは初めてじゃったから、つい興奮して口が滑ってしまったわい。」


「そうですね。あの時俺も事前に彼らを知っていたら興奮したと思います。」


 ドバンとアレクは彼らの戦闘をしみじみと思い出し、やはり彼らは凄かったと思い直していると、ようやくエッジとゲインが復活した。


「本当に?ノリスさん達が?」


「組合長。どれだ!?

『青龍』、『玄武』、『朱雀』、『白虎』?どのパーティなんだ?」


「待て待て!落ち着け!近い近い!顔が近すぎる!」


「ドバン組合長。ゲインの問いの答えは、『全部』ですね?当たっていますか?」


 慌てる二人を落ち着かせようとするドバンをよそに、アレクはするりと答えを言う。


「そうじゃ。それぞれがそれぞれの『四神獣』なのじゃ。」


「うん?一体どういう事だ?」


「エッジ。すまないが、その前にドバン組合長に聞きたい。

どうやってそれが分かったのですか?」


「ワシは一度ここではない場所でイドさんとは会った事があるんじゃよ。イドさんは覚えておらなんだがな。まぁ仕方が無い。当時のイドさんはそれこそ有名だったからの。」


「東の英雄パーティ『青龍』のリーダー。『清流』のブルース様。」


「そうじゃ。それが昔のイドさんだ。」


「ですが、他の方は……」


「そして、サウルさんの顔も知っておる。

彼が以前ちょっと問題を起こした時に人相書きが組合に回ってきたからのう。」


「南の英雄パーティ『朱雀』。

まさにそれを象徴する『不死鳥』のシルベスト様。」


「その通りじゃ。

後はお前も分かるじゃろ?あの中で二人さえ分かれば、答えも見えてくるようなもんじゃ。」


「そうですね。俺も【盾の壁】(シールドウォール)と【聖陣(ホーリーフィールド)】の二つを調べて全て理解しました。」


「アレク。どういう事だ?」


「エッジ。彼らは全員偽名なんだ。

東がイドさん、南がサウルさん。なら北と西は?」


「そうか!ノリスさんとエストさんか。」


「ああ。ゲイン。

ノリスさんは、北の英雄パーティ『玄武』。

あの時のように何者をも通さぬ『巨壁』のアーロン様。

そして、エストさんが、西の英雄パーティ『白虎』。

全てを惑わす『蜃気楼』のジャック様。

それが『週末』の皆さんの本当の名前なんだ!」


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